NEW

2022/07/01 臨床(GCP)

今回は治験依頼者を対象とした個々の治験の監査について話を進めよう。

GCP監査入門【第7回】

 前回はシステム監査について、監査計画、監査の実施、監査報告等を紹介した。続いて今回は治験依頼者を対象とした個々の治験の監査について話を進めよう。 チェックリストの利用  監査で用いる様式を一般に監査様式と呼んでおり、これには記録に関する様式と手続きに関する様式の2つに分けられることをGCP監査入門【第5回】で述べた。記録に関する様式とは、監査を実施した際の記録でありチェックリストが含まれる。チェックリストを利用するメリットとして例えば、確認忘れがない、担当者間の力量の差が比較的少ない、必要時間が予測できる、さらに経験の積み重ねを整理していくことで充実した内容に改良できることが挙げられる。逆にチェックリストのデメリットとしては、多様な変化に対応できずチェック項目に頼り過ぎると大きな問題を見落としてしまうことがある、必要としない項目までチェックすると場合によっては時間がかかり過ぎることなどが挙げられる。  かつて必須文書一覧と呼んでいた「治験に係る文書又は記録」一覧が、「治験に係る文書又は記録について」という事務連絡に出てくる。この一覧では、Ⅰ)治験開始前、Ⅱ)治験実施中、Ⅲ)治験の終了又は中断・中止後という治験の段階に応じて、それぞれの文書等に含まれる内容とその説明及び保存場所が示されている。したがって、これを基にして治験の段階ごとにどのような文書等が作成されるべきかという、いわゆる「あるべきリスト」として利用できる。文書等の存在有無の確認だけではなく、その文書等の内容の妥当性を確認するために利用すれば、それが監査のチェックリストとなる。  PMDAはGCP適合性調査に用いるチェックリストを、「自己点検等にご活用ください」として公開している。このPMDAチェックリストは修正を加えずにそのまま監査のチェックリストとして使用することが可能であり、また内容によっては自社の手順書等に沿った形で修正して利用しても良い。 監査計画書の作成  GCP省令第23条で、監査計画書を作成し当該計画書に従って監査を実施しなければならないことが定められている。監査計画書に記載すべき内容についてGCP監査入門【第5回】で説明したので繰り返してここで記載することはしないが、監査計画の立案にあたっては治験のリスクになり得る因子を考慮すべきである。例えば、試験デザインの複雑さ、あるいは評価項目の種類や特殊性(通常診療と異なる手順による評価、等)、オンコロジー試験の方が生物学的同等性試験よりも安全性情報の重要性が高いなど、さらにモニター等の開発担当スタッフの力量(経験、能力)や治験責任医師の臨床試験の経験値等々を考慮して立案する必要がある。 監査の実施  個々の治験の監査では、治験に係る文書又は記録を主な監査対象資料とし、治験の実施過程において適切なタイミングと回数で監査を行う。例えば「治験に係る文書又は記録」一覧では治験の段階に応じて文書等が分類されていると上述したが、この分類に応じて治験開始前、治験実施中、治験の終了後の3期に分けて監査を実施しても良いだろう。  治験開始前の監査は、治験薬が医療機関に交付される前までに行う。治験実施中の監査は、症例報告書を入手し集計・解析が終了するまでに監査を行い、多施設共同治験の場合は複数回にわたって監査を実施することも可能である。終了後の監査は、総括報告書作成のタイミングでデータマネジメントや統計解析などを主対象に監査を行う。もちろん第Ⅰ相試験や生物学的同等性試験などの短期間の治験の場合は複数回に分けずに、総括報告書が固定される前のタイミングで1回のみ実施することでも良い。  ここで述べた監査時期と回数はあくまでも一例であって、治験依頼者によっていろいろなやり方や考え方がある。システム監査をやっていれば、個々の治験の監査は総括報告書を対象にするだけという治験依頼者もある。  

記事を読む

2022/06/03 臨床(GCP)

今回はこのシステム監査の計画、実施、報告について紹介しよう。

GCP監査入門【第6回】

 治験依頼者及び実施医療機関並びに治験の実施に係るその他の施設における治験のシステムが適正に構築され、かつ適切に機能しているか否かを評価するために行うのがシステム監査であるとGCPで定義されている。今回はこのシステム監査の計画、実施、報告について紹介しよう。 システム監査の対象  システム監査の対象となる「システム」は、ICH E6がStep 4に進んだ時のISO9001:1994で「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」と定義し、この要素とは「組織構造、手順、プロセス、資源」であること、そしてこの4つの要素についてGCP監査入門【第4回】で紹介した。つまりシステム監査は、特定の治験のデータを対象とするのではなく、複数の治験に共通する要素を対象として監査を行う。 システム監査の実施時期  このようにシステム監査は特定の治験を対象とするのではない。例えば、GCP組織が適切に構築され維持されているか、あるいは担当者の継続研修が年間計画どおりに実施されているかどうかを監査対象とするのであれば、その監査頻度は1-2年に1回程度で良いだろう。手順書を毎年定期的に見直して改訂するのであれば、そのタイミングで監査を行うことで良いであろう。このような場合は定期的にシステム監査を実施することになり、一方で、治験薬保管施設の空調設備を変更したときや資料保管施設を移設したときに監査を行うのであれば、そのシステム監査は不定期で行うことになる。  上記で述べた監査時期は、多くの治験が常に進行しているような比較的大手といわれる製薬企業の場合に当てはまるのだが、年に1-2本程度の治験を行う製薬企業やバイオベンチャーの場合は1年に1度の定期的なシステム監査を計画しても、監査対象がないこともある。このような場合は、治験を開始するタイミングで、その治験の依頼と管理に係るシステムが適正に構築されていることを確認することでよい。例えば、個々の治験の監査における治験開始時監査(初回監査)のタイミングで、治験依頼者としての組織体制や手順書の整備状況、あるいは担当者の教育訓練の実施状況などが監査対象となる。したがって、システム監査は特定の治験を対象とするのではないと書いたが、治験の数が少ない治験依頼者の場合は、個々の治験の監査を行う際に、システム監査の視点で実施することになる。 監査計画書の作成  監査計画書を作成することを監査手順書に定めておかなければならないが、監査計画書に何を書くのかは特段の決まりはないことを前回紹介した。では、システム監査の監査計画書には何を書いたら良いのかを紹介する。  治験のシステムの監査では監査対象と項目を絞り、監査計画書を作成するのだが、治験のシステムは多岐にわたるため、監査対象や監査方法を明確にすることが必要である。例えばモニタリング手順書やメディカルライティングの手順書を監査対象とするのであれば、現行の手順書の記載内容に陳旧化がないことを確認することや、改訂案がGCPを遵守した記載内容となっていることを確認することを監査の目的としてもよい。あるいは、治験薬保管施設がGCPと手順書を遵守して管理されていることや、モニターの教育訓練がGCPと手順書を遵守して行われていることを確認することが監査の目的になるであろう。  監査の基準となる文書、すなわち何を基準として適不適を判断するのかという文書のことを基準文書といい、これも監査計画書で明記しておいた方が良い。例えば、業務手順書や教育訓練を監査対象とするのであればGCP省令第4条が、健康被害補償措置が監査対象ならばGCP省令第14条、治験薬管理が監査対象であればGCP省令第16条や第17条の他に治験薬GMP通知などが、それぞれの監査の基準文書となる。この他に施設設備が監査であれば消防法や建築基準法、さらにISO9000などを基準文書として明記することもあるかもしれない。 リスクに基づく取組  治験依頼者は治験の全ての過程において品質マネジメントのためのシステムを履行することがGCP省令第4条ガイダンスで記載されている。そして品質マネジメントの詳細については、令和元年に通知された「治験における品質マネジメントに関する基本的考え方について」を参照することとされている。すなわち、リスクに基づく取組を利用することが治験では求められていることから、これをシステム監査で考えてみると、例えば手順書逸脱が頻繁に発生するようであれば手順書の構成や担当者の教育訓練が監査対象になり、特定のモニターにモニタリング不備があるのならばモニターの教育訓練方法の妥当性やモニター認定方法の妥当性を検証することになろう。  システム監査では次の3つの「バックアップ」を念頭におくことが必要である。ヒトのバックアップ、データのバックアップ、そして電源のバックアップ。まずヒトのバックアップとは、業務を担当できる者は一人のみではなく複数人が可能とすべきである。担当者の事故や病気等に備えて万が一の場合は速やかに指名されて引継ぎができる状態でなければならない。  データのバックアップは、地震や火災等の災害によりデータが破損しても、速やかに完全なデータ復旧が可能となるようにしておくことである。バックアップデータは、これらの災害の影響が及ばないように300km以上の遠隔地で保存するように言われてきたが、近年では500km以上とも言われている。  電源のバックアップは、災害等に起因する停電により空調機やサーバー等の機器が停止しないように、あるいは停止した場合に速やかに復電できるようにすることを意味している。そのためには機器類を自家発電やUPS(無停電電源装置)等に接続することである。医療機関では検査室や手術室の重要な機器は医用コンセントに接続されていることが多い。医用コンセントはJIS規格によって赤色と緑色とがあるが、一般的には赤コンセント、すなわち商用電源ではなく非常用電源に接続することが多い。  

記事を読む

2022/05/06 臨床(GCP)

今回は、GCP監査に必要な監査手順書について見てみることにする。

GCP監査入門【第5回】

 今回は、GCP監査に必要な監査手順書について見てみることにする。監査手順書にはどのような内容を定めておくべきなのか、そしてそれにはGCP省令で必須とされている記載項目、必須とはされていないが記載したほうが良い項目もある。そのあたりを紹介しよう。 [https://fs.one-cmp.com/GMPP_art_ooba_20220427_1_2c0e9cbfba.jpg] 治験依頼者が作成する手順書  GCP省令第4条(業務手順書等)第1項は業務手順書に関する記載であり、治験依頼者は「治験の依頼及び管理に係る業務に関する手順書を作成しなければならない」と記載されている。治験の「依頼」はGCP省令第二章で、治験の「管理」は第三章だということを何度か既に述べている。つまり治験依頼者にはGCP省令の第二章と第三章に関する業務の手順書を作成することがGCP省令で義務付けられているのだ。  GCP省令第4条と同条ガイダンスには、図1に示すように具体的な例示がされており、この中には監査の実施に関する手順書を作成することが治験依頼者に義務付けられている。この手順書のことを、GCPガイダンス第23条では「監査手順書」と呼んでいる。 なお、図1に示した手順書以外に、治験依頼者としての意思決定手続き、データマネジメント、統計解析、ベンダーの選定と委託、等々の手順書も必要となってくるが、これらについての説明はまた記載があれば紹介しよう。 監査手順書の記載内容  GCP省令第23条(監査)第1項で、治験依頼者は監査手順書を作成し、これに従って監査を実施しなければならないと定めている。そして同条ガイダンスではこの監査手順書に記載すべき項目について定めている。すなわち、治験のシステム及び個々の治験に対する監査について、①監査の対象、②方法及び③頻度、並びに④監査報告書の様式と⑤内容を記述することとし、さらに⑥監査担当者の要件を当該手順書中に記載しておくこととされている。監査手順書で定めておかなければならない項目のうち、⑥監査担当者の要件については既にGCP監査入門【第2回】で紹介したのでお読みいただきたい。これ以外の5項目について簡単に触れていこう。  まずは①「監査の対象」。上述のように監査手順書には、治験のシステム及び個々の治験に対する監査について記載することになっている。これらについては既に前回のGCP監査入門【第4回】で紹介した。すなわち、システム監査ではISO9001:1994の品質システムの要素である「組織構造、手順、プロセス及び資源」が監査対象になるだろう。また、GCPが省令として公布される前の局長通知、いわゆる旧GCPの解説となるGCPマニュアルに自主監査の対象が例示されていることも前回紹介したが、これを個々の治験の監査対象として現在もほぼ踏襲している。もっとも、令和はもちろん平成後期の監査担当者は、平成初期の旧GCPを意識しているどころか存在すらご存じない方が多いだろう。  次は②「監査の方法」である。これは対象によって当然異なるが、簡単に言うとDocument ReviewとInterviewとTourの3点に要約できる。文書・記録であればこれらを閲覧(Document Review)し、その際にあらかじめ準備したチェックリストを用いて文書・記録の適切性を評価する。そしてその文書・記録について疑義を含め、関係者に面談していろいろと聴取(Interview)することが必要になる。資料保管室や治験薬保管庫、あるいはサーバールームなどの施設設備を監査対象にするのであれば、これらの施設を視察(Facility Tour)して確認することが必須になる。Facility Tourの際には室内に設置してある入退室記録や温湿度記録などをDocument Reviewし、保管責任者からInterviewすることになる。このように監査対象によって異なると書いたが、これらの方法を組み合わせて監査を実施する。  今度は③「監査の頻度」について、システム監査と個々の治験の監査に分けてみてみよう。システム監査は個々の治験に特化したものではなく、複数の治験に関わるシステムを対象とするのが一般的である。例えば上で例に挙げた治験薬保管庫の温湿度や入退室の管理システムを監査対象にするのであれば、監査の頻度は1~2年に1度の定期監査でよいだろう。あるいは、治験統括責任者や記録保存責任者のようなGCP組織を設置している治験依頼者もあるが、この場合は要件を満たした責任者が指名されていることを、やはり1~2年に1度の監査、あるいはシステムが変更や新設されたタイミング(不定期)で確認し評価することになろう。  個々の治験の監査の頻度は、治験の規模によって異なる。例えば、第1相試験や生物学的同等試験のような短期間の治験の場合は全治験期間を通して1回で良いかもしれない。しかし数年に及ぶ治験の場合は数回に分けて監査を実施する必要があるだろう。例えば、3回に分けて実施するのであれば、前回紹介した事務連絡の「治験に係る文書又は記録」一覧で、治験開始前、治験実施中、治験の終了の各段階に分けて示されている文書記録が、それぞれの段階の監査対象とすることができる。  

記事を読む

2022/04/01 臨床(GCP)

個々の治験の監査とシステム監査について説明をする。

GCP監査入門【第4回】

 個々の治験の監査とシステム監査について説明しよう。個々の治験の監査については何となくイメージできるだろうが、システム監査の対象となる「治験のシステム」というのが分かりにくい。今回は、個々の治験の監査と旧GCPマニュアル、システム監査とISO 9000、これらの関係を中心に話を進めたい。 個々の治験の監査  個々の治験に対する監査とは治験実施計画書ごとの監査をいう、とGCP監査入門【第1回】で書いた。しかしGCP省令にもGCPガイダンスにも「個々の治験」や「個々の治験の監査」について定義っぽいことはどこにも書いていない。申請上の重要性、被験者数、治験の種類、被験者に対する治験の危険性のレベル及びモニタリング等で見出されたあらゆる問題点を考慮して行う旨が書かれているのみである。  GCPに定義されていないのであれば、ここであらためて定義っぽいことを書いてみよう。上述のように、個々の治験の監査とは治験実施計画書ごとの監査をいう。すなわち、治験実施計画書を作成して、実施医療機関に治験の依頼を行い、治験が開始され、モニタリングを実施し、症例報告書を回収して、データの解析を行って総括報告書を作成するという一連の流れが監査対象となる。この監査の基準となる文書、すなわち基準文書は治験実施計画書とGCPと手順書であり、これらを遵守して行われているか否か、また治験で得られた成績の信頼性が確保されているか否かを評価するのが監査の目的である。当然のことながら、治験の依頼と管理を行っている治験依頼者と、治験を行っている実施医療機関が監査対象となる。 [https://fs.one-cmp.com/GMP_art_ooba_20220330_1_9658b300f9.jpg]  現行のGCP省令は平成9年3月27日に厚生省令第28号として公布されたが、その前身とも言える「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」、いわゆる旧GCPは平成元年10月2日に通知された。そして、現在のGCP省令の解説であるGCPガイダンスと同様に、旧GCPの解説として旧GCPマニュアルというものがあった。現行のGCP省令やガイダンスには監査の対象に関して詳細な説明はないが、旧GCPマニュアルには「自主監査の対象」が例示されている(図1)。旧GCPの時代には医療機関監査は行われていなかったので、「自主監査の対象」は治験依頼者のみであり、また現行のGCP省令には記載されていない社内IRB(治験の適否判定)や治験計画の届出、あるいは現在では補償措置と呼んでいる補償方策、症例報告書と呼んでいる症例記録など、若干の違いはあるものの、現在の監査でもこれがほぼ踏襲されているといえよう。  ICH E6、いわゆるICH-GCPの最後の項目にEssential Documentsの一覧表がある。答申GCPではこれを「必須文書一覧」と呼び、その後に発出された事務連絡では「治験に係る文書又は記録」一覧と称されようになった。旧GCPマニュアルで「通例、以下の記録等について監査する」と例示された記録等は、現在の「治験に係る文書又は記録」一覧で詳細に掲載されている文書・記録であり、これが個々の治験の監査の対象資料といえる。ここで触れたICH-GCPや答申GCPについては、前シリーズGCP入門【第3回】をお読みになればお分かりいただけるであろう。  治験依頼者と実施医療機関が監査対象であると先述したが、この「治験に係る文書又は記録」一覧では、文書・記録が治験依頼者と実施医療機関ごとに区分けされて例示されている。ここで「例示」と書いたが、この一覧に記載された文書・記録は作成されることが望ましいものの、必要な記録等が適切になされるのであれば必ずしもこの例に限定されるものではない。なお、「治験に係る文書又は記録」一覧の事務連絡は、医薬品GCPと医療機器GCPで通知されているが、再生医療等製品GCPに関しては現時点では通知されていない。しかし、基本的にはどのGCPでも同じ内容になるはずだ。 [https://fs.one-cmp.com/GMP_art_ooba_20220330_2_0515a32702.jpg]  

記事を読む

2022/03/04 臨床(GCP)

監査担当者の義務と権限について。

GCP監査入門【第3回】

 監査担当者の義務と権限について説明すると前回予告した。それを少し膨らませて、そもそも監査が義務付けられているのだろうか、すなわち治験の監査はやらなければならないのだろうか。そしてさらに治験依頼者が行う監査と規制当局の調査、この両者の関係についても私見を含めて述べることにしよう。 監査実施の義務  まずは監査を実施することそのものが、GCPで義務付けられているのだということを確認してみたい。GCP省令第23条第1項に、「治験依頼者は、監査に関する計画書及び業務に関する手順書を作成し、当該計画書及び手順書に従って監査を実施しなければならない。」と書いてある。つまり監査を実施することが治験依頼者の義務であることは明らかなのである。そして監査の目的は、治験がGCPと治験実施計画書と手順書を遵守して行われているか否かを評価することにあると、同条ガイダンスで説明されている。  一方で、GCPのグローバルスタンダードであるICH E6、いわゆるICH-GCPの5.19項に「If or when sponsors perform audits, as part of implementing quality assurance, they should consider:」と書いてある。つまり、日本のGCPでは治験の監査を実施「しなければならない」と義務付けているのだが、ICH-GCPでは「もし監査を実施するのであれば」とか「監査を実施する場合は」という書き方であって、必ずしも義務とはされていない。しかい、監査の目的は前述のGCP省令とほぼ同様であり、その目的のためには実際には海外でも治験の監査は行われている。 監査担当者の義務  まずは医薬品医療機器等法第80条の2(治験の取扱い)を見てみよう。第10項にこのように書いてある。「治験の依頼をした者若しくは自ら治験を実施した者又はその役員若しくは職員は、正当な理由なく、治験に関しその職務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。これらの者であつた者についても、同様とする」。つまり、監査担当者に限らず治験依頼者、また監査に限らず治験の全般ということになるのだが、監査を行って知り得た被験者さんの秘密を漏らしてはいけない、と明記されている。そして法第86条の3で「次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」として、この第80条の2第10項が掲げられている。同時に「前項各号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」となっており、いわゆる親告罪なのだ。    次にGCPでは監査担当者の義務についてどう書いてあるのだろうか。上述のとおりGCP省令第23条第1項で、①監査計画書と監査手順書を作成すること、そして②これらに従って監査を実施すること、この2つがまず義務として記載されている。この主語は「治験依頼者は」であるが、「監査を実施すること」ということなので、治験依頼者の監査担当者に義務付けられていることは自明である。この監査手順書には、監査の対象や方法及び頻度並びに監査報告書の様式と内容を記述する他、前回のGCP監査入門【第2回】でも述べた監査担当者の要件を当該手順書中に記載しておくことが定められており、すなわち監査手順書に記載すべき項目が義務付けられていると言えよう。  同条第3項では、監査担当者は監査報告書と監査証明書を作成して、これを治験依頼者に提出しなければならないと規定されている。ここで再びICH-GCPを見てみると、5.13.9(e)項に「When required by applicable law or regulation, the sponsor should provide an audit certificate.」と記載されている。つまりICH-GCPでは、監査証明書を作成することが必須だという書き方をしておらず、さらに提出先の特定もされていない。

記事を読む

2022/02/04 臨床(GCP)

GCPには監査担当者に求められる要件について。

GCP監査入門【第2回】

「監査」に独立性が確保されなければならないことは言うまでもない。GCPにももちろん監査の独立性に関する記載があるが、医薬品の企業主導治験のGCPと他のGCPでは表現が異なっている。さらにGCPには監査担当者に求められる要件についても記載されている。今回はこのあたりを見てみよう。 GCP監査の独立性  平成元年から10年間続いた、いわゆる旧GCPでは「自主監査」という言葉があった。従って「自主監査部門」ということになるが、「自主監査部門は、治験の依頼に関する業務に直接関与する部門に属さない者又は組織とすることが望ましい」ということが旧GCPマニュアルに記載されており、「望ましい」とは言いながらも監査の独立性について触れられていた。新GCPと呼ばれている現在のGCP省令ではどのような記載になっているのかいろいろなGCPを比較してみよう。  医薬品GCP省令の企業主導治験では、監査担当者は「監査に係る医薬品の開発に係る部門及びモニタリングを担当する部門に属してはならない」と第23条に書いてある。これが「監査部門」と呼ばれる所以である。その一方で、医薬品GCPであっても医師主導治験の場合は「監査担当者は、当該監査に係る治験を実施する医療機関において当該治験の実施(その準備及び管理を含む。)及びモニタリングに従事してはならない」というのが第26条の9の記載である。  医療機器GCP省令と再生医療等製品GCP省令では、どちらも企業主導治験では第31条で「監査担当者は、監査に係る治験機器(治験製品)の開発及びモニタリングに関連した業務を担当する者であってはならない」と記載されている。そして医師主導治験では、医薬品GCPと同様に「従事してはならない」という記載になっている。すなわち、医薬品GCPの企業主導治験のみが「部門」の独立性を求めているが、これ以外では全て「部門」ではなく「者」という概念になっている。  この違いは何かというと、医薬品の企業主導治験は製薬企業が治験の管理を行うものであり、製薬企業ならば「部門」の独立性は確保できる。しかし、同じ医薬品の治験であっても医師主導治験では企業主導治験に比べて治験の実施数が極めて少なく、また医療機関内において治験の実施とは異なる部門や組織に独立性を求めることは非常に困難であるため、監査の「部門」としての独立性を明記していない。同様に、医療機器治験や再生医療等製品治験の実施数は医薬品に比べて極めて少なく、さらに製薬企業に比べて企業規模が一般的に小さいために、監査を担当する部門の独立性を求められると治験の管理が困難になる。そのために監査の独立性については、「部門」の独立性ではなく「者」の独立性として規定されたのだ。

記事を読む

ピックアップ記事

キーワード検索

ランキング

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます