ラボにおけるERESとCSV【第127回】
FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(97)
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■ CCCCC社 2023/10/27
施設:製剤工場
■ Observation 1
A) 品質部門がバッチ製造記録の発行を管理していない。QAが承認したマスターバッチレコードが電子的にシステムに保存されている。生産管理部門はこのシステムからバッチ製造記録を直接印刷しているが、QAの管理下でなされていない。
B) SOPによると倉庫の温度モニタリングデータは倉庫の職員がレビューすることになっている。しかし、QAは倉庫職員がこのレビューを実施しているか確認していない。また、QAは倉庫温度記録の抜き取り確認を定期的に実施していない。
★解説:Observation 1A) について
「QAが承認したマスターバッチレコードが電子的にシステムに保存されている」とのことである。システムに電子保存されたマスターバッチレコードが、QA承認されたマスターバッチレコードと同一内容であることを保証できるよう管理されていれば問題はない。生産管理部門は電子保存されたマスターバッチレコードにロット番号、生産量などの変動情報を入力し、そのプリントアウトを製造指図記録書としている。変動情報が正しくプリントアウトに反映されていることを生産管理部門が照査していれば、製造指図記録書自体に問題はない。ただし、その製造指図記録書はコピー防止策を施して発行する必要がある。さもないと、不都合な記録を記載してしまった場合、以下のような不正が可能になってしまう。
「QAが承認したマスターバッチレコードが電子的にシステムに保存されている」とのことである。システムに電子保存されたマスターバッチレコードが、QA承認されたマスターバッチレコードと同一内容であることを保証できるよう管理されていれば問題はない。生産管理部門は電子保存されたマスターバッチレコードにロット番号、生産量などの変動情報を入力し、そのプリントアウトを製造指図記録書としている。変動情報が正しくプリントアウトに反映されていることを生産管理部門が照査していれば、製造指図記録書自体に問題はない。ただし、その製造指図記録書はコピー防止策を施して発行する必要がある。さもないと、不都合な記録を記載してしまった場合、以下のような不正が可能になってしまう。
① 不都合な記載がなされた製造指図記録書を破棄し
② 未記入の製造指図記録書をコピーし
③ 都合のよい記録を記載しなおし
④ 製造指図記録書を差し替える
② 未記入の製造指図記録書をコピーし
③ 都合のよい記録を記載しなおし
④ 製造指図記録書を差し替える
「QAの管理下でなされていない」とのことであるが、製造指図記録書の発行が製造部門内で行われているため、製造部門が組織ぐるみで製造記録の差し替えができてしまうという指摘である。その対応策例を以下に紹介する。
① 製造指図記録書の全ページにページ番号と総ページ数を記載
② 製造部門から独立しているQA部門が全ページに署名する
(製造部門におけるコピー防止)
(製造部門におけるコピー防止)
製造や試験において使用するブランク記録用紙をGMP従事者がコピーできると、不都合な記録や書き損じ記録を破棄し新たなブランク記録用紙に記録しなおすことができてしまい、そのような可能性が指摘される。MHRA(英国医薬品庁)、WHO、FDA、PIC/Sのいずれのデータインテグリティガイダンスにおいても、このような不正を防ぐよう記載されている。その対策の一例を示す。
① GMP作業を行わない部門が記録用紙を用意しGMP作業部門に送付する
② 送付する記録用紙の各頁に、頁番号、総頁数、送付者のサインを記入しておく
③ GMP作業完了時に、送付した全記録用紙を送付部門が回収し、全数回収を確認する
PIC/S査察官むけデータインテグリティガイダンス(PI-041-1, 2021/7/1)は、ブランク書式の電子ファイルの管理にも言及している。
第8.4節「記録の生成、配布、管理における期待」
第8.4節「記録の生成、配布、管理における期待」
電子的なマスター文書は、無許可の変更あるいは不注意な変更から保護すること。
例えば、電子的に保存されているテンプレートの場合以下の予防措置を行うこと:
例えば、電子的に保存されているテンプレートの場合以下の予防措置を行うこと:
➣ マスターテンプレートへのアクセスを管理すること
➣ テンプレートを作成したりバージョンアップする工程は明確であること。また、その工程は実際に適用され検証されていること
➣ マスター文書は、無許可の変更を防止するような方法で保存すること
上述したブランク記録用紙発行の対策例では、各ページに発行者や送付者がサインを行うようになっている。ブランク記録用紙を多数発行する部署にとってはこのサイン記入は相当な負荷となる。そのため、色々な工夫がなされているので以下にそれらの例を紹介する。
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