2021/01/22 食品

食品業界のサプライヤーオーデット【第3回】

はじめに  食品業界のサプライヤーオーデットを担う食品安全認証スキームFSSC22000誕生の背景について、FSSC22000の主要素であるCODEX委員会が定める食品衛生の一般原則の附属書であるHACCPガイドラインが、国際貿易のルールの中で重要な役割を担っていること(第1回)、国際標準化機構(ISO)がCODEXのHACCPガイドラインを含む食品安全マネジメントシステム規格ISO22000を発出したが、衛生管理の要件が具体的に規定されていないことなどを理由に、商取引上の権威ある団体The Consumer Goods Forum(CGF)のイニシアチブのひとつであるGlobal Food Safety Initiative(GFSI)がISO22000を否定したことから、欧州の食品産業界が主導してGFSIの要求事項に合せるべくISO22000に肉付けしたFSSC22000が誕生したこと、そして食品産業界に多大な影響を及ぼすCGFとGFSIの立場についてお話しした(第2回)。  今回は、FSSC22000の要求事項の概要と、これに影響を与えるGFSI Benchmarking Requirements(GFSI BR要求事項)の概要とその改訂についてお話ししたい。 GFSI BR要求事項とその改訂  2020年12月現在、GFSIに承認されている(GFSI BR要求事項を満たしている)食品安全認証スキームは世界に12スキーム存在し、FSSC22000はその中の1つである。いずれの認証スキームも、GFSI BR要求事項が改訂される都度、各スキームとの間に生じるギャップを埋めるよう改訂される。対象はスキーム全体であり、第三者認証を受ける(審査登録される)組織(工場など)に対する要求事項以外に、組織を要求事項に基づいて評価(監査/審査)する認証機関(審査登録機関)、認証機関の能力を評価し認定する認定機関、そして監査員のトレーニングを担うトレーニング機関に対する要求事項などが含まれる。これらの評価制度はPIC/S加盟の際にGMPだけでなく、査察を担う規制当局のQMSを評価することとよく似ている。  以下は、GFSI BR要求事項の最新版、Ver.2020.1の概要である。スキームの全体像や審査登録機関、認定機関への要求事項などの事務的な部分は省き、第三者認証を受ける組織に対する要求事項に絞って列挙する。要求事項は「HACCP」、「FSM」、「GMP」の3つの要素で構成されている。 1.HACCP  CODEX委員会が規定するHACCPガイドラインに準じた要求事項である。HACCPについてはICHQ9のガイダンス文書に手法としての記載があり、また2020年6月1日に施行された改正食衛生法の主要素であるので、概要をご存じの読者も多いかもしれない。この要求事項ではCODEXが求めるHACCPの7原則12手順がほぼそのまま規定されている。  その中の原則1(手順6)ハザード分析は、製薬業界の品質リスクマネジメント/リスク評価の手法としてよく使われるFMEAに似た手法である。食品安全上のハザード(意図された使用方法で食されたにもかかわらず健康被害が生じる)をハザードの起こりやすさと起きた際の健康被害の重篤性の観点から洗い出し、ハザードを低減又は除去するための管理手段を考える作業であり、もっとも重要な要素となっている。  その他の要素は、  ①    ハザード分析のための情報収集(対象製品の特性(原材料、水分活性値、    pH、添加物、容器包装材の材質等の情報から、腐敗しやすいか否かなど    の判断材料にする)、意図した用途(加熱調理するのか、そのまま接種す    るのかなど)、対象消費者の特定(一般の消費者か、高齢者・乳幼児かな    ど)、製造工程の順序、作業動線情報)と、  ②    特定したハザードを低減又は除去するための管理手段の詳細     (ハザード管理のための工程管理基準、基準を順守していることを監視す    る方法、基準逸脱時の処置などを設定し、その通り実行できたか否かを検    証し、記録する)という内容で構成されている。

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2020/11/27 食品

食品業界のサプライヤーオーデット【第2回】

はじめに  食品業界のサプライヤーオーデットを担う食品安全認証スキームFSSC22000そのものの話に先立ち、前回(第1回)はFSSC22000誕生の背景となる食品の国際貿易から解説を始めた。国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同でつくった食品規格を決定する委員会;CODEX委員会が定める食品衛生の一般原則とその附属書であるHACCPガイドラインが、世界貿易機関(WTO)の前身GATTによって採択され、その結果、食品の国際貿易を背景に各国の法令と商取引のための民間認証にHACCPが登場することとなったことを述べた。その後、国際標準化機構(ISO)がCODEXのHACCPガイドラインを含む食品安全マネジメント規格ISO22000を発出したが、衛生管理の要件が具体的に規定されていないことなどを理由に、商取引上の権威ある組織がISO22000を否定したところまでお話しした。  今回は、ISO22000を認めなかった組織、Global Food Safety Initiative(GFSI)とFSSC22000誕生の背景の話をしたい。 GFSIとは  Global Food Safety Initiative(GFSI)は、The Consumer Goods Forum(TCGF又はCGF)の分科会的な組織である。従って、GFSIを説明するためにはCGFの話から始めなければならない。CGFは欧米を中心とした世界中の消費財のリテーラー(小売業者)とメーカー、および関連サービスプロバイダのCEOや上級経営層が会員となっている世界的な流通、製造のネットワーキング団体であり、「知識とベストプラクティスの共有」を理念に「環境的・社会的サスナビリティ」、「ヘルス&ウェルネス」、「エンドツーエンドのバリューチェーンにおけるロジスティックスとデータ・フロー」などのリテーラーとメーカー共通の課題、例えば、     -バリューチェーンの効率性を向上し、消費者、労働者および環境を保護する、    業界にとって重要な業務標準化、   -企業と業界全体の評判に影響を及ぼす外部ステークホルダー   (例えば、森林破壊に警鐘を鳴らす環境保護団体)との協働による課題改善 等に取り組んでいる。これら取組みを噛み砕いて言うと次のような説明になる。メーカーとリテーラーは消費者に商品を買ってほしいので、何が消費行動に影響するのかを気にしている。消費者については、例えば、環境への取組みが良くない企業の商品を積極的に購入しない(同程度の価格なら環境に配慮している企業の商品を選ぶ)という調査結果ある。国際的な環境NGOはこの消費者の消費行動を利用し、CGFに対して例えば森林破壊の主原因となっている、大豆、パーム油、牛肉、紙パルプ、木材のサプライチェーンを改善するよう勧告する。勧告を受けたCGFは消費行動に影響するこの問題に取り組まざるを得ず、改善を公式に約束する。強制労働問題についても環境問題同様にCGFの課題となっており、CGF会員の某リテーラーのサプライヤー評価基準には、食品安全についての要求事項の前に、15才未満の労働者を雇用している企業とは取引しない旨が明記されている。このようにCGFは外部ステークホールダーからの意見に耳を傾け、課題解決のために協働している。  CGF会員の企業の総数は約400社、総売上3.5兆ユーロ、雇用従業員数1千万人を超える規模の団体であり、パリに本部、ワシントンDC、東京、シンガポール、上海などに事務所を置き、リテーラーとメーカー各側から25名、計50名の理事による理事会、1500名の専門家が参画する40以上のプロジェクトとワーキンググループが活動している(因みに、現在日本のリテーラー、メーカーからは、イオン、ローソン、味の素、キリン、花王の社長、CEOが理事に選出されている。)。 CGFは自身の戦略的イニシアチブとして7つのイニシアチブを挙げているが、抜粋して列挙すると、   -消費者により良いものを提供する業界のコラボレーション   (バリューチェーンにまたがるデータやプロセス、および能力の管理のための、    グローバル標準、プロトコルまたは原則を特定し実践する)   -世界中の消費者をより健康に   (企業と他のパートナーが協働して、人々がより健康的な生活を送れるよう支援    し、ビジネスが健康にとって良い力であること実証するための支援を行う)   -すべての消費者に安全な食品を   (世界の食品安全マネジメントシステムの継続的な改善を協働で推進するため、    食品業界の主要関係者を結集する)   -持続可能なバリューチェーンとビジネスの実践を世界で実現   (気候変動と廃棄物削減の分野でリードする)   -ディーセントな労働条件を全ての人々に   (強制労働の撲滅を世界中のサプライチェーンと、世界中の会員企業の事業内で    実現する) などであり、この3番目のイニシアチブがGFSIの活動を指している。  

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2020/10/30 食品

食品業界のサプライヤーオーデット【第1回】

はじめに  FSSC22000は食品産業界で広く利用されている食品安全のためのマネジメントシステム規格である。2020年9月現在、世界で2万4千件以上、日本では2500件の第三者認証登録があり、サプライヤーオーデットの規格としても国内で最も広く利用されている。本項では複数回にわたってFSSC22000とは何か、どのような要件で構成されているのか、などについて製薬業界の読者にも伝わるように書いてみたいと思う。第1回と第2回については、法令・商取引上の背景とFSSC22000誕生の背景について述べることとしたい。 食品の国際貿易-CODEX規格  食品業界のサプライヤーオーデットの基盤はHACCPである。世界貿易機関WTOの前身であるGATT(General Agreement on Tariffs and Trade;関税及び貿易に関する一般協定)のウルグアイラウンド(1986年~1994年)において、国際貿易における食品安全の基準としてCODEX委員会(Codex Alimentarius Commission;国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同でつくった、食品規格を決定する委員会)が定める食品衛生の一般原則(Basic Texts on Food Hygiene)が採択されたことにより、この一般原則の附属書であるHACCPガイドライン(Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System and Guidelines for its Application)が国際基準となり、各国の法令と商取引のための民間認証にHACCPが登場することとなった。  世界の主要国が加盟するWTOは、貿易の国際紛争を解決する場でもあるが、食品貿易で何らかの紛争が起こったとき、その判断基準の一つとなるのがCODEX規格である。WTO加盟国が順守しなければならない「Sanitary and Phytosanitary Measures;衛生および植物検疫に係る措置に関する協定(SPS協定)」や「Agreement on Technical Barriers to Trade;貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」では、科学的に証明される特別な理由がない限り、このCODEX規格を守らねばならない。そのため、関連する各国の食品関連法規制にCODEX規格は大きな影響を与えている。

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