医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第62回】

高活性原薬の漏洩処理技術手順について
国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「高活性原薬の漏洩処理技術手順について」
1.製薬企業のあるべき姿
製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。製薬工場の生産現場では健康な従業員(サプライチェーン含む)の原薬曝露による健康被害リスクが大きい作業となります。これを定性定量曝露評価により、リスクの大きい作業工程に必要な封じ込め設備やアイソレーター・グローブボックスそして呼吸器(RPE)などリスク低減対策を実施する事が重要です。空気中へ曝露する原薬微粒子がオペレーターへの吸い込みリスクを低減出来るよう運用し、一人の作業者に8時間TWA(8時間加重平均)値で原薬のOEL以下で管理するのが原則です。但し、CMR(発がん性・変位原性・生殖毒性)物質の場合はOEL以下でも許容出来ません。
ところが生産業務には多くのリスクが関与しており、オペミスや事故により封じ込め設備のない検査包装工程そして物流現場作業場所で原薬が漏洩した場合の作業者への健康被害リスクは重大です。更にこの回収処理作業が適切に行われないことにより、健康被害リスクのみならず土壌汚染や地下水汚染そして、雨水系排水や下水道系排水を通して発生する工場や事業所外への環境汚染リスクも、最小限にまでリスク低減せねばなりません。これは国内法にも要求されており、重要な企業のビジネス継続の為に欠かせない要求事項です。
以下に分かり易く整理してみました。
1)CSR(企業の社会的責任)に関する要求事項
サプライチェーンを含む従業員の働く現場が健康被害リスクにさらされている事は、人権尊重・人権侵害として、企業のマネジメント責任を問われることからリスク低減を図らねばなりません。
2)HSE(健康安全環境)に関する要求事項
こちらもサプライチェーンを含む作業者の健康安全と環境への影響について、リスク低減を図らねばなりません。
上記の要求事項を検討する際、うっかり抜けることが問題になるのが漏洩事故時のリスク低減対策運用です。つまり、ハザードエリアでは必要な封じ込め設備や人的保護のための呼吸器などの運用をしていても、災害や事故の場合はその対象工程や工程外で発生するため、“抜け”が発生します。これを教育訓練し、専門家を養成する事が重要課題となります。
2. 国内製薬企業の現状
しかし、日本のいくつかの製薬企業はグローバルスタンダードの構築が出来ていない事で、これら原薬漏洩時漏洩処理の必要性を知らない・気がついていない上層部の方がまだおられるようです。
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