「打錠とは」【第4回(最終回)】
はじめに
打錠とは【第3回】は、打錠障害(キャッピング、スティッキング)とその対策および打錠シミュレータ(圧縮成形プロファイル)について解説した。錠剤の製造において、一般的には流動層造粒機や攪拌造粒機を用いて打錠用顆粒がつくられる。打錠用顆粒では、流動層造粒機で製した方が、攪拌造粒機で製したものよりも、錠剤の成形性が良いとされている。これは、打錠用顆粒に関して、圧縮においてある程度の空隙を有する顆粒の方が、成形性に優れていることに起因すると思われる。錠剤化するには、次の条件を満足しなければならない。
①打錠機において、供給装置の中で粉粒体が適切に流動し、臼への充填が容易なこと。②粉粒体が圧縮によって容易に塑性変形が起こり、また粒子同士が結合し、適当な機械的強度をもつ。③圧縮時に粉粒体が杵表面に付着せず、また圧縮後に臼から容易に放出すること。④結合した粉粒体を、投与した後には、消化管内で、崩壊・分散することである1)。
【第4回】では、打錠工程におけるトラブルとその対策および打錠工程のスケールアップとしての総圧縮時間(動圧縮時間、圧縮停滞時間)、そしてトラブル事例紹介について解説する。
1.打錠工程におけるトラブルとその対策
打錠用粉粒体を高速・高圧で一定量の重量・形状に圧縮する打錠プロセスは非常に特異な工程であり、しかも錠剤品質を最終的に決定する重要な工程である2)。
一般的に、錠剤の圧縮過程は、疎充填、細密充填、粒子破壊・塑性変形、そして粒子結合と進行するが、打錠速度が速い場合は、粉体の流動性、滑沢性にもよるが、圧縮中の粉体の移動が杵の動きに十分追随しないことから、杵先間隔の短い円周側は打錠圧が大きく、杵先間隔の長い中心部は硬度が低い錠剤が形成される。
このように、高速打錠の条件下では、錠剤内部において応力や密度に分布が生じ、内部構造は必ずしも均一なものとはならない。このことがキャッピング、スティッキングなどの打錠障害や硬度低下、崩壊不良など品質特性異常などを惹き起こす主な原因になっていると考えられる1)。
錠剤の品質の多くの部分は造粒プロセス、整粒プロセス、混合プロセスなど打錠プロセス以前の工程で造り込まれている。これらの先行するプロセスに不具合があると、最新の打錠システムをもってしても、医薬品として十分な品質を有する錠剤の製造に問題を認める、あるいは、打錠工程の適格性を高度に検証するバリデーションが不十分なレベルとならざるを得ないケースを少なからず経験する。すなわち、医薬品の製造においては全てのプロセスが適切に設計され、維持管理されなければならない。つまり、打錠プロセス単独では先行する製造プロセスの不具合を完全にリカバーすることに限界がある3)。
2.打錠工程における打錠条件の設定および運転時の留意点4)
打錠条件の設定時、そして運転時の留意点として、以下が挙げられる。
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