エッセイ:エイジング話【2025年8月】
USP製薬用水委員会Chairmanからの批判に答え
~TOCと分解性~
USP(米国薬局方)製薬用水委員会元議長が来日した折に、「3極薬局方調和上の障害物質」としてJP(日本薬局方)が、一般試験法<2.59>有機体炭素に90%以上の回収率を求めるSDBS (ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)に対し異を唱える講演内容が、PHARM TECH JAPAN誌に掲載されました。(2010年1月号)
どう考えてみても講演内容は的外れであると思い、PHARM TECH JAPAN誌上で反論記事「製薬用水TOC測定における国際調和問題への意見」を掲載したい旨を伝え、快諾され掲載されました。(2010年4月号)
本件は続いて、「日本薬局方の有機体炭素(TOC)試験法に対するBevilacqua氏(USP製薬用水委員会Chairman)の批判に答えて」と題し、JP製薬用水委員会座長小嶋茂雄氏が、PHARM TECH JAPAN誌上に執筆され(2010年10月号)一件落着となりました。
しかしながら、<2.59>有機体炭素 試験に適さないTOC測定装置が国内で使われる現状が続きます。そもそも、有機体炭素と総称される物質を一括りに測定する取り組みへは困難が伴います。
この理由は3つ在り、①化学種として多い、②構造が多岐に渡る、③構成する元素が多いことです。ここは、例えばCaを測定するのと異なります。分析化学は標準物質を定め、これにより検量線を作成した範囲内で定量するのが一般的です。
ところが、有機体炭素はこの3つの理由から、標準物質を限定するのが困難なのです。と言うか決められない現実が有ります。
ここはTOC試験法をJPへ収載(しゅうさい)する時に議論となり、その結論として一般試験法に名称は、頭に「総」を付けずに唯の有機体炭素となったことを制定委員会の方から訊きました。
また、Total organic carbonを測定する際には測定対象(=検体)中に含まれる個々の有機体炭素を分解する度合は大事なファクターです。
そもそも、検査は何某かの反応生成物を検出することを行います。有機体炭素は燃焼により二酸化炭素へ形態を変えます。二酸化炭素量を測定すれば、Total organic carbon を定量出来ると考えたのでしょう。
つまり、有機体炭素を分解すると二酸化炭素が生成する現象を利用し、有機体炭素を検出する方式です。ここで分解度合は各有機体炭素の化学構造に依ります。
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