体外診断用医薬品とはどういうものか?【第1回】

2015/07/06 医療機器

【第1回】体外診断用医薬品とはそもそもどういうものか?
【第2回】日本文化と検査診断の関係について
【第3回】ヘルスケアの世界における 体外診断用医薬品のポジションと特徴
【第4回】体外診断用医薬品の技術革新の歴史とエポック
【第5回】体外診断用医薬品に関する規制の歴史と今後の方向性
【第6回】医薬品と体外診断用医薬品の微妙な関係とその歴史
【第7回】医療機器と体外診断薬における切っても切れない間柄について
【第8回】診断市場における国内外市場の違いと特徴
【第9回】診断技術のトレンド(特に血液検査領域について)
【第10回・最終回】臨床検査の将来の姿

 


【第1回】体外診断用医薬品とはそもそもどういうものか?

 一般社会で体外診断用医薬品(以下、体外診断薬)と聞いてそれがすぐに頭に浮かぶものではないと聞く。例えば、検査薬という言葉があり、診断薬、試薬など様々な用語が飛び交うという不思議な状況である。ちなみに英語では、In Vitro DiagnosticsもしくはIVDと称せられる。

 1985年以前は、「体外診断用医薬品」という用語は、少なくとも日本には正式には存在しなかった。以前は検査薬、検査試薬、もしくは単に試薬と呼ばれていた。ただし一部のもの、例えば放射性同位元素によって標識をされた物質を用いた検査薬は、放射性医薬品という区分の「医薬品」であった。この中には体内に放射性同位元素標識の医薬品を投与して検査するための医薬品(放射性体内診断用医薬品)と体外で検査する医薬品(放射性体外診断用医薬品)の2つが存在していた。

 その後、旧薬事法下、旧厚生省薬務局長通知(昭和60年6月29日付、薬発第662号)にて、初めて「体外診断用医薬品」として定義付けられ、晴れて医薬品等の一部として取り扱われることとなった。この通知が発せられるきっかけについては別の項で体外診断薬の歴史として詳細に記す。

 この通知が出る以前は、一部の検査薬は医療用医薬品の一部としての承認取得を義務付けられていたが、この通知によって初めて「体外診断用医薬品」としての特殊性を考慮された「簡素で合理的な」承認審査プロセスが全面的に適用されることとなり、ほぼ現在までこの承認プロセスが踏襲されている。

 2005年には薬事法大改正があり、ここで初めて「法律レベルで」体外診断薬が規定された。現在は医薬品医療機器等法によって同様の定義付けがなされている。

 また、2005年の時点で、いわゆるリスク分類という概念が導入され、リスクの大きさによって、3つの区分に分類されている。このリスク分類により、承認プロセスに要求される資料が大きく異なる。この考え方は国際的な品質確保にかかる規範のハーモナイズの産物である。なお、体外診断薬にかかる薬事規制や品質マネジメントシステムについては別の項で詳細に記す。

 それでは「体外診断用医薬品」の定義は以下のとおりである。

 

専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう。(旧薬事法第2条第13項)
あくまで「医薬品」ではあるが、「人又は動物の身体に直接使用されることのない」ことが要件である。


 そして、人の検体を扱う体外診断薬に関して、具体的には、

体外診断用医薬品は、人に由来する試料を検体とし、(2)に示す検体中の物質等を検出又は測定することにより、(1)に示す疾病の診断に使用されることが目的とされているものであって、人の身体に直接使用されることのないもの。ただし、病原性の菌を特定する培地、抗菌性物質を含有する細菌感受性試験培地及びディスクはこれに含まれる。


 とされている。(動物向けにも体外診断薬は存在し、監督官庁は農林水産省となる。承認プロセスも人向けのそれとよく似てはいるが、動物向けの体外診断薬の承認プロセスの方が若干難易度は高い。)

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執筆者について

笹嶋 政昭

経歴 笹嶋グローバルコンサルティング 代表。
約30年間、ライフサイエンス業界一筋に、医療用医薬品の研究開発を皮切りにグローバル診断薬企業、化学企業、グローバル医療機器企業を中心に、近年では国産中堅企業にて活動。事業開発、研究開発、事業再構築を中心に、薬事申請やグローバル臨床開発なども経験。2014年6月より現職。
ライフサイエンス事業全般(医療機器、体外診断薬、創薬支援、細胞培養、再生医療、材料科学、ナノ技術、各種の計測技術、生物材料の物質生産等)における研究開発、事業開発、マーケティングを専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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