「マラソン」第15回
36 トライアスロン出場のために…
さて、トライアスロンに出ると決めたはいいものの、まずは道具からだ。
ロードバイクは持っている。
しかし、猛者たちが乗っているバイクは、どうも様子が違うようだ。
特徴的なのは、DHバー(※)と呼ばれる、前方へ突き出た2本の角のようなハンドル。

※ ロードバイクやトライアスロンバイクのハンドルに取り付ける、前方へ伸びた2本の棒状のパーツ
これに腕を乗せ、TTポジションとかいう前傾姿勢をとることで、空気抵抗を極限まで減らすらしい。
まさに「空気との闘い」、それが自転車競技のキモなのだと聞く。
トライアスロン用のTTバイクとやらは、他にも涙ぐましい工夫が随所に施されており、当然ながら、お値段も相当にお高い。
ロードバイクにDHバーを後付けすることも考えたが、どうせなら…と、私の物欲が囁きかける。
しかし、その値段を見て目が飛び出た。100万円を超える自転車もざらにあるのだ。
「ボーナス1回分でも全然買えないやん…」
と、途方に暮れながらネットの海を彷徨っていると、私の目に「30%オフ」という、まるで天からの啓示のような値札が飛び込んできた。
もはや感覚は麻痺していたのだろう。
この魔法の言葉に、私の理性はあっけなく崩壊した。
晴れてTTバイクを手に入れてしまったのである。
次は水泳用具だ。 最初のスイムは、全行程から見れば時間は短いが、ここで前に出られれば後が楽になる。
そのスイムで重要なのが「ウェットスーツ」。これがまた、なかなかの高級品なのだ。
オーダーメイドなんかにしようものなら、10万円があっという間に飛んでいく。
TTバイクで既に金銭感覚が崩壊している私だが、少しでも安く済ませようと、海外の通販サイトでポチることにした。
ただ、この安易な選択が、後にレース本番で私を大いに苦しめることになるとは、この時の私には知る由もなかったのである。
ついでに、水泳からランまで着替えなしでいけるという便利な「トライスーツ」も購入。
ランニングシューズは、幸いにも手持ちのもので事足りそうだ。
と、まあ、こんな具合だ。トライアスロンという競技が、私の財布にどれだけ厳しい試練を与えるスポーツか、お分かりいただけただろうか。
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