体外診断用医薬品とはどういうものか?【第8回】

2016/02/04 医療機器

 我が国は血液検査と画像診断が共に高度に普及している国であるが、諸外国と比較すると以下に掲げる特徴がある。
 
1. 市場規模の割に体外診断薬市場における参入企業が多い。
2. 検査市場における「外注検査」と大手検査センターの存在感が大きい。
3. 他国に比較して、多項目の血液検査と高価な画像検査が広く普及している。
4. 国民皆保険制度の下、画像診断も含めて検査点数は安く設定される傾向がある。
5. 国民皆保険をベースにした検査項目、つまり「誰でも検査する項目」が優先されている。言い換えると先進的な検査は保険外となり、 なかなか普及しない。
6. 多項目同時測定法が普及しない環境にある。
7. 検査は一部を除き、検査室でなされるものであり、いわゆる「医家向け」として取り扱われている。言い換えると、一般大衆が自分で検査をするということを前提にしてはいない。また、POCT検査の普及速度は緩慢である。
8. 麻薬検査がほぼ存在しない。

 特徴を挙げればキリがないほど、我が国の検査診断の市場は独特なものであるが、その理由は歴史的なもの、我が国の得意とする技術、保険制度に依るところが大きい。

 1番目の特徴であるが、体外診断薬市場における参入企業は、ピーク時には160社以上あったが、現在でも100社以上存在する。大手企業の多くは外国資本企業であり、国内企業は大手企業よりも伝統ある中小企業が多いことが特徴である。しかし、いわゆる先端技術を駆使したベンチャー企業は極めて少ない。米国では数少ない大手企業とおびただしい数のベンチャー企業で構成されているのとは対照的である。欧州は米国ほど極端ではないが、ベンチャー企業はかなりの数に上る。診断薬というものが先端技術のショーケース的な役割を持っているというのが多くの国では一般的な認識であるが、残念ながら我が国ではそういう話にはなっていない。中堅中小企業には自社製品で特徴ある製品群でニッチ市場をしっかりとおさえているところがある一方で、優秀な商社的存在の企業も多い。
 
 2番目の特徴は外注検査と検査センターの存在である。国内には世界でも有数の大きな検査センターが複数存在し、いわゆる「検査のトレンド」は検査センターによって作られると言っても過言ではない。また、我が国の場合は保険制度の特徴から、検査を外注することが医療機関にとって経済的に有利に働いていた時代が長く、その状況は今でもさほどの変化はない。ただし、検査の内製化(院内における検査)の有力な手段も出てきたことから、「なんでも外注」という流れは止まりつつある。

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執筆者について

笹嶋 政昭

経歴 笹嶋グローバルコンサルティング 代表。
約30年間、ライフサイエンス業界一筋に、医療用医薬品の研究開発を皮切りにグローバル診断薬企業、化学企業、グローバル医療機器企業を中心に、近年では国産中堅企業にて活動。事業開発、研究開発、事業再構築を中心に、薬事申請やグローバル臨床開発なども経験。2014年6月より現職。
ライフサイエンス事業全般(医療機器、体外診断薬、創薬支援、細胞培養、再生医療、材料科学、ナノ技術、各種の計測技術、生物材料の物質生産等)における研究開発、事業開発、マーケティングを専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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