体外診断用医薬品とはどういうものか?【第10回・最終回】

 測定対象という視点でみると、ここ数年で核酸領域が大きく取り上げられてきた。それまではタンパク質中心のバイオマーカー測定であったが、いよいよ測定対象の分子種は多様化してきた。核酸といっても、DNAやRNAだけはない、非構造領域の核酸、例えば、miRNAやセルフリーDNAなどが重要な測定対象になりつつある。同時に、薬剤の効能効果、副作用発現の有無や度合いを測定するコンパニオン診断薬の登場もこの流れを加速するものになるだろう。換言すれば、「いろいろな分子種を、高感度に、確実にかつ特異的に量り取る」ニーズはますます顕在化している。これで簡便迅速、かつ安価に測定できれば言うことはない。
 
 一方で、これ以上の高感度化が必要なタンパク質中心の測定項目が急速に増える兆候はない。分析装置の自動化レベルもここ20年で大きな進化はなく、進化の余地もあまりない。それよりも装置の小型化と低価格化のニーズの方が高いだろう。
 
 唯一、検査の世界で完全自動化が遅れている分野は細菌学的検査領域である。ここは現場において長きに渡って蓄積された培養という専門性がモノを言う世界であるが、同時に、この専門性が検査フローの全自動化の大きな足かせになっているように感じる。とはいえ、この独特な専門性の中から、やがては自動化の流れは確実に出来上がるだろう。その際には培養と非培養、液体培養と固相培養の壁は確実に低くかつ薄くなるだろう。ただし、この変化には応分の時間を要するとも考えられる。

 EIA法や化学発光法など標識物質ありきの測定系が圧倒的に幅を利かせている昨今であるが、非標識、高感度、ホモジニアス系、全自動あたりは、診断検査分野における究極の開発目標だろう。一方で多項目同時測定、遺伝子とタンパク質が同じ測定系(分析装置)で測定されるようなものが存在しても決しておかしくはない。「いろいろな分子種を、高感度に、確実にかつ特異的に量り取る」というニーズを満たすには、こちらの考えの方がしっくりくる。
 
 今後も「いつでもどこでも測定したい」ニーズが衰えることはないと予想されるが、今の状況では、測定物質ごとに装置を使い分ける必要性がある。恐らく、近い将来をみれば、特殊な検査領域において、異なる分子種測定はそれぞれの分子種測定に最適化された分析機器を利用したものが専門機関で測定されるだろう。つまり今の延長線上である。比較的馴染みのある測定対象の多項目測定は、小型装置のPOCT的な測定というような形になっていくのだろう。

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