体外診断用医薬品とはどういうものか?【第2回】

医薬同業だったかつての日本の医療
 明治時代以前の古くから日本では漢方医が「お医者様」として日本の医療を担っていた。お医者様の大事な役目は見立てと投薬であり、患者の方も、体調を見立ててもらうこと、そして「薬(生薬が基本)」をもらうことが、お医者様に行く目的であった。かつては医師が調剤と投薬をしていた。医師は「薬師(くすし)」であった。ちなみに「薬師如来(やくしにょらい)」はまさに薬の仏様である。ちなみに、日本では「内服薬」が主流であるが、これもこの時代からの名残である。
 さて、現代ではどうか。例えば、急な高熱と関節痛があるとすれば、患者は病院に行って、「それがただの風邪なのか、はたまたインフルエンザなのか、それとも全く別の原因なのか」の診断を受けに行く。
 昔と違うのは、ここで医師は感染源(例えば、インフルエンザ抗原)の検査をする(正確にはオーダーする)ことである。また、体温を測る行為は恐らくここ数十年変わることはない。もちろん、「何時頃からの発熱か、随伴症状は具体的にはどういうものか」など細かい問診や呼吸器の状況把握を行う。あまりに酷い咳があれば、肺炎を疑ってレントゲン間接撮影も行う。
 ここで、例えばインフルエンザ抗原の検査で陽性となり、他の状況から肺炎などを起こしていない場合で、もし発熱して間がない場合は抗ウイルス薬の処方を受けることになる。そして、薬局に処方箋を持参することになる。
 
検査する場所もさまざま
 日本で検査といえば、基本的に病院の中でやるものという認識がある。最近は薬局での検査も可能になっているが、まだこれは主流ではない。
 しかし、お国変われば検査も変わる。日本で検査といえば、院内検査であることはもとより、検査のイロハは尿検査、血液検査、レントゲンなどの画像(機器・画像)診断の3点セットである。
 私の以前の勤務先であった会社が30年ほど前に日本に持ち込んだPOCT検査はイムノクロマトグラフィーであるが、日本でこれを誰が測定するか、かなり議論になった。当時のイムノクロマトグラフィーは試薬の入れ替えのような操作があり、とても簡易な検査手法とは言えなかった。
 一方で、検査は「臨床検査室」の専権事項のようなもので、原則として今でも同じである。結果的にはイムノクロマトグラフィーの検査は検査室で行うということから日本のPOCTの歴史が始まった。その後、イムノクロマトグラフィーには大きな改良が加えられ、試薬の入れ替え操作はなくなり、検体採取→検体を数滴試薬カセット上の検体滴下孔に滴下→しばし待つ→結果提示という形に落ち着き、これは尿検査の術式にきわめて近くなった。現在ではイムノクロマトグラフィーはいわゆる簡易検査法としての不動の地位を獲得している。なお、現在では、医師自らの簡易検査も珍しくない。
 それでは他国ではどうか。英国では多くの検査が薬局で可能である。検査手法の多くがPOCT化されている。裏を返すと院内検査はさほど多くはない。また、フランスでは院外検査というシステムがある。街角に小規模な検査所があり、そこに検査の処方箋を持参すると、採血から実際の検査、そして結果提示までを院外の検査所で実施という流れである。そして検査結果を持って病院に行く。その他の国でも、多くの検査が薬局(もしくは自宅)で出来るようになっている。日本でも検査の院外化(検査試薬の一般医薬品化=OTC化)の議論が進んでいるが、他国のような動きではない。

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