再生医療等製品の品質保証についての雑感【第74回】

2025/06/13 再生医療

水谷 学

細胞製造性の特に留意すべき点についての雑感

第74回:細胞製造の品質マネジメントシステム (4) 
~ 「製造プロセスの設計」で最も重要なこと~

はじめに
 本項では、前回お話しした細胞製造性に基づき、実際に製造プロセス設計(上流工程)を行う場合において、特に留意すべき点についての雑感を述べさせていただきます。製造プロセスの設計の原則は、以前(第62回)にお話しをした、7原則の1つであるプロセスアプローチでの手順構築となりますが、本来1つのバイオプロセスを適切に制御するための製造工程の設計は、複数プロセスの複雑な組み合わせであると考えます。


● 部分工程を含むバイオプロセスの設計要求
 幹細胞を原料とする細胞加工製品の製造、例えば増幅工程では、バイオプロセス(主工程)に対して、培地交換や継代作業のような部分工程が必要になります。そのため、主工程は、下図のように、従来の医薬品製造で実施可能であった、細胞播種から回収までの理想的なプロセスに対して、実際には、部分工程のアウトプットを挟むような形で主工程が構成されると認識します。


図. 細胞加工製品の増幅プロセス設計における主工程と部分工程の関係イメージ

 バイオプロセスとは、培養条件下において生じるセルサイクルによる、「細胞イベント」のプロセスとなります。細胞イベントのプロセスで生じる内なる乱れは、当然ですが、初期状態(インプット)が均一でなければ結果のばらつきも大きくなります。実際のバイオプロセスでは、培養開始時および継代時において、播種/再播種が行われるので、複数の初期状態が生じます。これらの初期状態における製造環境(細胞濃度、接着率、分布など)の均一性を確保できることが、目的細胞の品質ばらつき制御に有効と考えます。

 

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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