GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第93回】

教育訓練

1.ネガティブ・ケイパビリティ
 教育訓練は、GMP管理として重要であり、当局の監査の際でも厳しくチェックされる。教育訓練として、手順書を読むだけでは、作業者がその品質リスクを除去できることまで理解したといえない。製造工程において、試験検査において、品質保証において、手順書に従って作業をしなければいけないと理解はしている。しかし、手順書の記載通りの作業を行うことで、どのような品質リスクを回避できるかを理解はできない。リスクマネジメントも含めその手順に従う必要性を理解しなければならない。

 ネガティブ・ケイパビリティとは、「事実や理由をせっかちに求めず、不可実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」とある。最近、膠原病などによる倦怠感、精神的なストレスや身体的ストレスが重なることによるうつ病などの脳機能障害、脳の機能低下による認知症などが問題となっている。疾患と判断まで至らず、若者も十分、業務できず、作業方法を誤り、非難を受けることはないだろうか。同一の教育訓練をうけても、手順を誤ったのは、教育訓練不足と十分な検証がされないケースもある。作業方法に生じた問題点をすぐに対応策が見いだせない時、人間関係で、相手の言動の真意が見いだせない時、作業者自身の個人的な悩みでその個人が悩んでいるときなどネガティブ・ケイパビリティの考え方が役立つはずである。不確実な問題に対して、その状況を許容することで冷静な判断ができる。教育訓練において、手順を押し付けるのではなく、リスク対応として、解決するべきである。

 作業者一人ひとりの能力を認識し、教育訓練を行わなければ、教育訓練として効果がない。しかし、作業者の能力とは手順書に対する読解力だけではない。その作業方法、設備の操作方法、作業現場の環境維持等を理解し、運用する能力も必要である。作業に関連する必要な知識、技能、技術は何か、そして、個々の作業者がどこまで知識、技能、技術を習得しているか確認しなければ、効果的な教育訓練とならない。教育訓練が不十分なものであれば、品質リスクを回避できない。品質リスクを回避できる能力を保持できる体制をつくるために、教育訓練を実施しなければならない。そのために、教育訓練は、その対象となる作業者一人ひとりの能力を把握し、それぞれの作業者に必要な知識、技能、技術を求め、そこに対応する教育訓練を計画しなければならない。同一の現場で働く者であっても、経験が異なり、習得した知識も異なる。個々の作業に合致する教育訓練が必要である。

 

 

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