医薬品開発における非臨床試験から一言【第68回】

薬物動態研究のタイミング

創薬における薬物動態研究者の立場で、担当する試験の実施タイミングを考えてみます。探索的な試験を担当しているか、臨床移行を含めた承認申請のための試験を担当しているかで、研究の内容と試験のタイムラインが大きく異なります。本稿でも、これまで関連して幾度か論じており、この2つの前提(探索研究、臨床移行)条件を元に試験実施の指標を示します。

探索的な試験とは創薬候補化合物のスクリーニングと考え、インプットは候補化合物及び化合物情報の入手であり、アウトプットは薬物動態的に創薬候補として合格か不合格かあるいは継続研究かになる。試験はin vitroの代謝安定性、小動物を用いたin vivoでの血中濃度推移(PK)、さらに薬理作用と併せて薬物動態的な有効性判定など、判定基準は様々になる。「くすり」としての有効性が見えるか否かであり、十分な安全域を持っている必要がある。

承認申請のための試験に入るときには、探索的な試験の結果から、候補化合物の薬物動態の概略は(たぶん)見えており、併せて宿題事項も伝達されている。また、医薬品開発は、「ヒトのくすり」を創ることが基本であり臨床試験もグローバルで実施されることが多い。そのため、臨床試験を開始する上でデータパッケージに関する考え方及び医薬品開発を取り巻く環境に注意しておく必要がある。

2010年に通知されたICH M3(R2):「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」では、非臨床試験の実施時期が見直され、今日まで、その原則は変わっていない。ICH M3(R2)の第3項目「トキシコキネティクス及び薬物動態試験」では、動物及びヒトの薬物代謝及び血漿タンパク結合データに関するインビトロ試験成績、並びに反復投与毒性試験で使用した動物種における全身曝露データの評価は、通常、臨床試験の前に行われるべきである。と総括されている。ここに薬物動態試験の大枠が示された。

そして、毒性試験の動物種(例えばラット、カニクイザルなど)における薬物動態に関する情報(吸収、分布、代謝及び排泄)や薬物相互作用に関するin vitro試験は、第Ⅲ相試験前に入手しておくべきとされた。これらの情報提供により、ヒトと動物の代謝物の比較ができ、非臨床試験の追加を考えるために利用できる。

 

 

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