ゼロベースからの化粧品の品質管理【第47回】
―化粧品工場における微生物汚染対策の具体例―
化粧品GMPに関して、実際の運用面から留意事項についてお話させて頂いています。
最近、小林製薬で発生した青カビ混入問題が注目されています。この問題を受けて、化粧品工場におけるカビ対策および微生物対策の重要性が再認識されています。そこで、今回は化粧品工場における微生物対策の施設および設備面での留意点についてご説明いたします。
小林製薬の事例では、サプリメント製造時の青カビによって生成された物質が健康被害を引き起こした事例で、紅麹菌の増殖過程で他の微生物がコンタミネーションを起したものです。微生物を扱っている工程での事故ですが、化粧品工場でも他人事では済まされない状況です。この事故を教訓に、多くの化粧品工場でも使用する設備や用具に対し、アルコールを噴霧したり、アルコールで拭き取ったりするなど、殺菌作業の徹底をトップ指示として出されたようです。また、作業時の殺菌作業のチェックも厳格に行われています。しかしながら、殺菌や消毒作業はあくまで対処療法であり、根本的な汚染原因の対策にはなりません。
先ずは、微生物汚染対策の基本的なアプローチとして「微生物を侵入させない」、「微生物を発生させない」、「微生物を拡散させない」、「微生物を殺す」という4つの手順に基づく対策が必要です。しかしながら、化粧品工場が完全な無菌環境を維持することは現実的に困難です。したがって、微生物をいかに除去し、殺菌し、さらに除菌するかが現実的な対策となります。
もちろん、化粧品の種類によっては微生物が増殖しない静菌状態を維持できる商品もあります。このような場合、微生物の生菌数や種類に過度に神経質になる必要はありません。ただし、現実的な対策を実施し、微生物管理を徹底することで、高品質な化粧品の製造が可能となります。これから、その具体的な展開について詳しく説明いたします。
1.微生物を侵入させないことの基本
施設の設計や設備の選定は、微生物対策において極めて重要です。外部からの微生物侵入を防ぐためには、施設の出入り口にエアシャワーや空気清浄機を設置し、適切な換気システムを整えることが必要です。また、作業者の服装や手指の衛生管理も徹底し、作業前には手洗いや消毒を義務付けることが基本となります。
エアシャワーは、多くの製造施設で導入されていますが、その効果を最大限に引き出すためには、エアシャワー通過後のエリアが外部と適切に区切られていることが重要です。例えば、ロールカーテンやフィルターのない一般的な換気扇が設置されている製造所では、エアシャワーの効果が十分に発揮されない場合があります。エアシャワーは作業者への意識付けやゾーニングの明確化には有効ですが、実質的な対策としては、手指消毒の徹底や原料容器の取り扱い、風向きを考慮したコンタミ防止策が優先されるべきです。エアシャワー設置という形から入ることも重要ですが、中身バルクを微生物汚染から守るという視点からリスクの高い要素から対策を講じることが重要です。
また、微生物の侵入を防ぐためには、汚染源リスクが高い箇所に対する対策が不可欠です。以下の事項は特に注意が必要であると考えます。
これらの事項は当たり前のこととしてあまり議論されませんが、多くの化粧品製造所で守られていないように感じています。
2.微生物を発生させない
微生物の発生を防ぐための基本的な対策は、施設内の水分活性を下げることです。微生物は湿度が高い環境で繁殖しやすいため、乾燥状態を保つことが重要です。しかし、静電気による異物対策や危険物対策のためには、施設内の湿度をある程度高める必要がある場合もあります。特に、シュリンクフィルムや樹脂チューブや樹脂容器での異物付着対策や粉体の発火や粉体爆発のリスクを管理するためには、湿度の調整が求められます。但し、この場合でも水分の管理を怠ると、カビの発生や微生物汚染のリスクが高まりますので注意が必要です。そこで、以下の具体的なポイントに注意して、乾燥状態を維持することが必要です。
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