ラボにおけるERESとCSV【第126回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(96)
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■ BBBBB社 2023/3/27
施設:バイオ医薬品製造(遺伝子組換)
本483はCBER(Center for Biologics Evaluation and Research:生物製品評価研究センター)による査察によるものである。バイオ医薬品に対するCBERによる国内査察は大変めずらしく、FDAのデータベースによると2017/6/15と本査察の2回だけである。
■ Observation 4
バックアップデータが正確で完全であり改変削除から保護されている保証がない。特に、HDDに保存されているバックアップデータを確認したところ、イメージのスキャンデータをバックアップHDDからリトリーブできなかった。また、削除から保護もされていなかった。さらに、
A) 2022/9/21逸脱報告
機器の故障によりデータが失われたが、2022/6/13~2022/9/2の期間におけるデータはバックアップされていなかった。
機器の故障によりデータが失われたが、2022/6/13~2022/9/2の期間におけるデータはバックアップされていなかった。
B) 2021/4/12逸脱報告
デジタル画像システムに付属するPCのハードディスク故障により保存データが失われた。原因はHDDの偶発的物理的損傷であった。当時このデジタル画像システムを調査したところ、PC画面にエラー表示され、PC中のHDD故障が確認された。バックアップは2020/3/22に取得した以降、2021/4/12まで取得していなかった。
デジタル画像システムに付属するPCのハードディスク故障により保存データが失われた。原因はHDDの偶発的物理的損傷であった。当時このデジタル画像システムを調査したところ、PC画面にエラー表示され、PC中のHDD故障が確認された。バックアップは2020/3/22に取得した以降、2021/4/12まで取得していなかった。
C) 2021/12/9逸脱報告
制御盤に組付けられた電子記録計に付属するメモリカード中のデータが部分的に失われた。2021/10/15~2021/11/24の期間にわたる961ファイルが失われた。
制御盤に組付けられた電子記録計に付属するメモリカード中のデータが部分的に失われた。2021/10/15~2021/11/24の期間にわたる961ファイルが失われた。
D) 2022/1/5逸脱報告
2021/12/20に調査を実施したところ、QCラボのインキュベータ温度データが失われていた。
2021/12/20に調査を実施したところ、QCラボのインキュベータ温度データが失われていた。
★解説:電子記録の維持について
電子記録が生データとなる場合、記録の保存期間をとおし電子記録の真正性と見読性を維持しなければならない。電子記録の真正性確保の要件は厚労省ERES指針に記載されているように以下の3点である。
・ セキュリティ
・ 監査証跡
・ バックアップ
★解説:生データの定義
PIC/S GMP 「第4章 文書化」に以下のように定義されている。
PIC/S GMP 「第4章 文書化」に以下のように定義されている。
少なくとも、品質判定に用いるすべてのデータを生データと規定すること
GMP事例集(2022年版)のGMP20-4には以下のように説明されている。
生データは、最終結果が正しく出されたことを検証することができるものであること。例えば、試験検査に係る生データとしては、次のものがあげられる。
1.測定機器からプリント機能により出力されるデータ
2.記録計から出力されるチャート又は読み取った値を記録したもの
3.測定機器に表示される値を書きとったもの
4.観察結果を書きとめたもの
5.チャートなどの波形データを電子的に記録したファイル
6.写真
7.上記のデータを使用し計算、換算等を行った際の経過を記録したもの等
なお、データインテグリティの観点から「生データ」は得られた時の状態で利用可能であるよう保存すること。
★解説:指摘の概要
本Observation 4は生データとなる電子記録に対し、セキュリティとバックアップについて指摘している。
セキュリティ:
・ 生データとなる電子記録が変更削除から保護されていない
バックアップ:
・ 下記に記載する「バックアップの基本要件」が満たされていない
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