【第6回】今、求められるQA部門の体制の構築について

2025/05/16 品質システム

前回に引き続きQA部門の存在について

5 QA部門体制の継続的な見直しについて
 ここまでQA部門としてコミュニケーションや進捗管理が出来る状態にすることや業務を行うために必要な知識・経験等を踏まえた内外の資源の利活用が重要であることを説明したが、これはいつ何時であっても必要なことであり、将来に亘り、置かれている環境等の変化を踏まえて適切な状態を維持し続けなければならない。

 例えばGMP省令などの法令は常にその時代に即したものへ変化(改正)する。
 そして今後さらなる品質問題などが発生した場合、QA部門として求められるものもさらに変わってくると考えられ、通常は要求事項が上乗せされる。
 そのため、今、適切な体制を構築したと思っていても、時間が経過する中で、その変化に対応できていない場合、うまく機能しなくなっている可能性は十分あり得る。

 組織内の環境や外部の関係者の環境も目まぐるしく変化していくだろう。
 原料等についても目で見ただけでは変わっていないかもしれないが、その原料等を製造している事業者の従業員も変われば用いている出発物質の品質なども変化し、その結果、原料等の品質についても変化している可能性は十分ある。
 もちろんその変化は良い方向のものもあれば、悪い方向へのものもある。

 そのため、常にいろいろなものが変化していると考えるのが妥当であり、それに対応できているのか、対応するためにはどうしていけば良いのか、という視点を持つことが重要と考える。
 内外の変化を捉え、常にその時世に合ったQA部門はどうあるべきか考え、必要に応じてQA部門の体制をも含めて見直していかなければならない。

 PDCAサイクルを回すということである。

 その時世に応じたQA体制を構築(plan)し、その体制によりQA業務を実施(do)し、実施したQA業務が想定していたものと比較し適切であったのかをレビュー(check)し、必要であれば体制を含めて見直す(Action)。

 ここで読者の方は、何かを思い出していただけるのではないだろうか。
 そう、医薬品品質システム(PQS)である。
 PQSについてはICH Q10においてその内容が示されているが、ISO9001のようにPDCAサイクルを組織として回して継続的に改善を図ることを求めている。
 改正GMP省令において求められている医薬品品質システムにおいてもPDCAを回していくこと、すなわち継続的な改善を求めている。

 GMP事例集2022(表8)では、マネジメントレビューへのインプットの例として、次の事項が含まれている。
…マネジメントレビューを確実に実施することも製造業者等の責務である。
インプットの例として以下が考えられる。
1.    製品品質の照査結果
(略)
2.医薬品品質システムの有効性評価 
・苦情管理、逸脱管理、CAPA並びに変更管理の状況
・外部委託作業の状況
・リスクアセスメントの状況
・品質保証に係る業務の適切性
3~5(略)

表8 GMP事例集2022 3の3-11(抜粋、マネジメントレビューとは)

 これらからもわかるとおりQA部門はPQSの有効性を担う中心であり、マネジメントレビューにおいてその業務の状況をcheckされる対象とされている。
 そのため、当該有効性、すなわちQA部門として適切に機能していなかった場合、アウトプットとしてQA部門の体制を含めた改善方針が打ち出されるべきものなのである。

 

 

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執筆者について

田中 良一

経歴

株式会社シーエムプラス シニアコンサルタント。
2006年 京都府へ入庁。2009年より健康福祉部薬務課にて医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品、体外診断用医薬品製造業・製造販売業許認可やGQP/GVP/GMP/QMS調査を担当。日本当局のPIC/S加盟によるQMSの立ち上げに携わる。2018年に厚生労働省へ入庁、医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課 GMP指導官に就任、GMP/QMS関連の法・省令改正に従事。2020年に京都府へ帰庁、京都府薬事支援センターを立ち上げる。2024年7月にシーエムプラス入社。
業界活動としては、PDA製薬学会関西勉強会、製剤機械技術学会GMP委員会・DI委員会、過去には医機連QMS委員会、厚生労働科学研究に参画。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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