医薬品開発における非臨床試験から一言【第66回】

2025/06/13 非臨床(GLP)

呼気中排泄の研究

呼気中排泄の研究

薬物動態試験で「呼気中排泄」を考える機会は少ないように思います。14C-標識体を用いた薬物動態試験を計画し、対象の化学構造が生理的な物質か、或いは構造が近い場合は、代謝を受けると呼気中排泄が関係してきます。化学構造がアミノ酸、糖質、脂質などに類似するような場合が該当します。

14C-標識体を用いた薬物動態試験での呼気中排泄とは何でしょうか。親化合物が代謝分解を受け、最終代謝物として14CO2を産生すると、この14CO2を定量測定します。例えば、14C-標識体をラットに投与し、代謝物として呼気中に排泄された14CO2を吸収剤で受けて放射線測定用シンチレーターで調整し、液シンで放射能を定量します。結果は投与量に対しての呼気中排泄率として計算し、「% of dose」で示します。

本稿では呼気中排泄試験を紐解いて行きます。第22話でも紹介しているので、そちらも参考にして下さい。投与方法には幾つかのパターンがあります。ラット呼気中排泄試験には、専用のガラス製代謝ケージを用いました。このケージでは飲料水と固形飼料の供給が可能です。

  • ラットに14C-標識体を単回経口投与あるいは単回静脈内投与では、投与後、直ちにガラスケージでの飼育と14CO2測定を始めます。
  • ラットに中心静脈栄養法で長期間の持続投与を行う場合は、予め、ラットの中心静脈に投与用カテーテルを留置します。カテーテルは背中のハーネスからガラスケージ外の投与ポンプに接続して、フリームーブの状態でガラスケージの外から持続投与します。例えば、最初の2時間程度を、14C-標識液とし、その後は非標識液の投与を継続します。最初に投与した14C-標識液の呼気・尿中排泄を観察します。
  • 2時間程度の14C-標識液を持続静脈内投後に呼気・尿中排泄を観察する試験では、投与中はラットをボールマンケージに固定して、このケージにビニール製の簡易フードを被せていました。投与終了後はガラスケージでの飼育に移します。

写真1
夏目製作所 ボールマンケージ2型
他にも幾つかの形式が販売されています。

ガラスケージはデシケータ型などが販売されていますが、例示は省略します。

そして、14C-標識体投与開始後からは、個体毎にモノエタノールアミンを封入した2本のガラス瓶を経由して、小型ポンプで換気を行います。14CO2はモノエタノールアミンにトラップされるので、所定時間毎に換気ポンプを止め、モノエタノールアミンの重量を計り、一部をサンプリングして液シンで14C-濃度を測定し、14CO2の総排泄量を分析します。

 

 

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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