FDAの対応すべき医療機器規制について【第12回】

2020/10/09 医療機器

"QSRやQSIT、査察ガイドには出てこなくても、FDAに対応するために知っておくべき用語があります。その一つ、今回はRemediationについて解説します。このRemediationに近い表現が用いられているのは、以下に示したQSRの820.728(b)校正の中で、不都合な影響があったかどうかを評価する矯正処置というところです。矯正処置の原文はremedial actionで、是正処置のcorrective actionと異なり、是正処置よりさらに重要な、重たいと表現される活動が期待され、是正処置と区別するため筆者は「矯正処置」と呼んでいます。
【QSR】
Part 820.72検査、測定および試験設備(b)校正[4]
校正手順には、精度と確度のための具体的な指示と限度が含まれていなければならない。精度と確度の限度が満たされない場合、限度を再確立し、機器の品質に何らかの不都合な影響があったかどうかを評価する矯正処置(remedial action)の規定があること。これらの処置は文書化されなければならない。
では、どのようなことが「矯正処置」に求められているでしょうか。もし、校正不適合があった場合、その影響は既に販売された機器に及ぶ可能性があり、機器への影響のリスクが高い場合には、販売された機器をリコールする必要性を含め、不適合の影響を除去する対応を取ることになります。
このように、リコールの可能性を前提にしながら、過去に遡って不適合の影響を除去し、適正な状態にすることは、いわゆるCAPA活動の考え方とは違った意味を持っていると言えると思います。
このように、Remediationに近いPart 820.72(b)校正のremedial actionについて説明しましたが、考え方を理解いただけましたでしょうか。

では、Remediationは、どのような場合に必要になるでしょうか。典型的には、FDA査察において欠陥が発見され、フォーム483が発行された場合ということになります。その他の場合では、内部品質監査において、重大な欠陥が見つかった場合も、該当するかと思います。
いずれの場合も、それらの欠陥による影響が大きく、品質マネジメントシステムの完全性に影響があった場合、単に手順書を修正すればよいということになりません。何をしなければならないかというと、欠陥により何らかの不都合な影響があったかどうかを評価する必要があります。そしてその評価は、過去に遡って機器の品質に影響を及ぼすことがあったのかどうか、あるいは法的要求事項から逸脱するようなことが無かったかというような視点が求められます。既に販売された機器に影響が及ぶ可能性や機器への影響のリスクが高い場合には、それらをリコールすることも在り得る訳です。"

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執筆者について

細田 誠一

経歴 東京電機大学卒。オリンパス光学工業(株)、オリンパスメディカルシステムズ(株)、オリンパス(株)にて、医療用内視鏡システムの設計・開発、製造と工程管理、品質保証と多岐に亘る業務担当の経験を重ね、グループ子会社の工場品質部門にて品質システムの管理責任者、オリンパスメディカルシステムズ製造部門にてプロセスバリデーション推進、本社品質保証部門にてCAPA活動推進の責任者の任務を遂行しました。FDA査察/MDD 監査/QMS 適合性調査における実践対応の経験、および定期FDA査察においてNAI(No Action Identified)に導いた実績があります。定年退職後、現在はコンサルタント、セミナー講師、書籍等への執筆活動を進めております。
資格等
IRCA品質マネジメントシステム審査員補
(公財)日本医療機器センター QMS講習会検討委員
未来医学研究会会員
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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