FDAの対応すべき医療機器規制について【第3回】

2019/12/13 医療機器

QSR [4]では、要求事項を満たすことを求める記載は多く出てきますが、品質を良くするとか品質向上を期待するような記載は一切ありません。日本的に良く言われる品質が良いという概念はもちろん米国に無い訳ではありませんが、FDAの期待によれば、要求事項を満たすことを保証することが第一となっています。
 この要求事項は、QSRにおいては法的要求事項、製品要求事項、品質要求事項、規定要求事項など種々の呼び方がされますが、いずれも医療機器の安全性・有効性を最終的に満足させるために求められるものです。ISO 9000:2015による定義では「明示されている,通常暗黙のうちに了解されている又は義務として要求されている,ニーズまたは期待」[11]とされていますが、ここで求められているのは明文化された機能、特性、仕様などの客観的なニーズまたは期待ということになると筆者は考えています。
 したがって、通常品質と言われている事項の範囲を明確に規定し、その範囲内であることを確実に保証することが必要となっている訳です。ですから、品質を良くするというよりは、規定された品質を確実に確保しなさい、そのために満たされるべき品質の特性などを明確にしなさいという意味に解釈できると思います。
 このFDAが求めるアプローチの方が大変かもしれません。というのは、暗黙に良い品質、品質向上を図れというのではなく、保証すべき品質とは何かとQSRでは問われており、その機能、特性、仕様などを明確にしなければ、それらを満足しているのかどうか保証することができません。このように、まず要求事項を明確にできていないと、その要求事項を満たすことを保証することができないということになります。

 ここで、こうした考え方の背景にある品質保証と品質管理の違い、考え方について、それぞれ定義を確認し、説明したいと思います。

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執筆者について

細田 誠一

経歴 東京電機大学卒。オリンパス光学工業(株)、オリンパスメディカルシステムズ(株)、オリンパス(株)にて、医療用内視鏡システムの設計・開発、製造と工程管理、品質保証と多岐に亘る業務担当の経験を重ね、グループ子会社の工場品質部門にて品質システムの管理責任者、オリンパスメディカルシステムズ製造部門にてプロセスバリデーション推進、本社品質保証部門にてCAPA活動推進の責任者の任務を遂行しました。FDA査察/MDD 監査/QMS 適合性調査における実践対応の経験、および定期FDA査察においてNAI(No Action Identified)に導いた実績があります。定年退職後、現在はコンサルタント、セミナー講師、書籍等への執筆活動を進めております。
資格等
IRCA品質マネジメントシステム審査員補
(公財)日本医療機器センター QMS講習会検討委員
未来医学研究会会員
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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