ラボにおけるERESとCSV【第6回】

2015/06/01 施設・設備・エンジニアリング

望月 清

はじめに
「CSVの基礎」として以下の説明を行う。

● CSVの要件
● CSVの基本形
● DQとトレーサビリティマトリクス
● バックアップとリストア
● アーカイブとリトリーブ
 

1.CSVの要件

1)CSVとは
CSVとはComputerized System Validationの略であり、コンピュータ化システムバリデーションと呼ばれる。CSV対応とは、コンピュータ化されたシステムが「意図した通り動作する」ことを、手順を含んで検証し文書化する活動である。コンピュータ化システムをコンピュータ化された業務、あるいはコンピュータが組み込まれた機器や装置を用いて行う業務と考えるとよい。
 

2)CSV活動の期間
CSV活動の期間は、システムの開発・導入から廃棄までの全ライフサイクルが対象である。
 

3)CSVの検証対象
CSVの検証対象は以下の2である。

● コンピュータの機能
● システム運用に必要な手順
 

4)CSVの規則
医薬品の研究・開発・製造の規制下で使用されるコンピュータ化システムは、バリデートされている必要がある。しかし、そのバリデート方法は「規則」としては定められていない。医薬品GMP省令における「規則」は以下のとおりである。

● バリデーションとは、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう(2条)

● バリデーションを行うこと(13条)

● バリデーションの結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合においては、所要の措置を採るとともに当該措置の記録を作成し、これを保管すること(13条)
 

FDAおよびPIC/SのGMPにおけるバリデーションの「規則」も同様レベルの規定となっている。従って、FDAのウォーニングレターおよびEMA(欧州医薬品庁)のGMP不適合報告1)を見る限り、CSVの実施方法に関して「規則不適合」と指摘したものはない。CSVに関する査察指摘は「バリデートしていない」もしくは「バリデートするよう規定していない」のどちらかである。
 

5)CSVのガイドラインと参考書
では、コンピュータ化システムをどのようにバリデートすればよいのであろうか。CSVの実施方法は以下のものから学び取るのがよい。

● GAMP2)
ISPE(国際製薬技術協会)による世界的なCSVの参考書であり、和訳本もある。PIC/S査察官向けガイダンス(PI 011-3)3)は、50頁中にGAMPを52回参照している。
✓ GAMP 4:2001年12月発行(CSVを世界に普及させた)
✓ GAMP 5:2008年3月発行(リスクベースのCSVを提唱)

● 厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」4)
我が国の医薬品GMP/GQPにおけるCSVの標準的な実施方法を具体的に例示しており、CSVにおいて何を行えば良いか理解しやすい。ガイドライン中の記載は絶対的なものではなく、GAMPなど他の方法も容認している。規則ではなく、CSVの標準的な実施方法の例示であるとの認識が重要である。このガイドラインはGMP/GQP以外においても参考になる。

5ページ中 1ページ目

執筆者について

望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

124件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年5月30日(金)10:00-16:30

バイオ医薬品の開発とCMC戦略

2025年7月2日(水)10:30-16:30~7月3日(木)10:30-16:30

門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます