ラボにおけるERESとCSV【第6回】

はじめに
「CSVの基礎」として以下の説明を行う。

● CSVの要件
● CSVの基本形
● DQとトレーサビリティマトリクス
● バックアップとリストア
● アーカイブとリトリーブ
 

1.CSVの要件

1)CSVとは
CSVとはComputerized System Validationの略であり、コンピュータ化システムバリデーションと呼ばれる。CSV対応とは、コンピュータ化されたシステムが「意図した通り動作する」ことを、手順を含んで検証し文書化する活動である。コンピュータ化システムをコンピュータ化された業務、あるいはコンピュータが組み込まれた機器や装置を用いて行う業務と考えるとよい。
 

2)CSV活動の期間
CSV活動の期間は、システムの開発・導入から廃棄までの全ライフサイクルが対象である。
 

3)CSVの検証対象
CSVの検証対象は以下の2である。

● コンピュータの機能
● システム運用に必要な手順
 

4)CSVの規則
医薬品の研究・開発・製造の規制下で使用されるコンピュータ化システムは、バリデートされている必要がある。しかし、そのバリデート方法は「規則」としては定められていない。医薬品GMP省令における「規則」は以下のとおりである。

● バリデーションとは、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう(2条)

● バリデーションを行うこと(13条)

● バリデーションの結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合においては、所要の措置を採るとともに当該措置の記録を作成し、これを保管すること(13条)
 

FDAおよびPIC/SのGMPにおけるバリデーションの「規則」も同様レベルの規定となっている。従って、FDAのウォーニングレターおよびEMA(欧州医薬品庁)のGMP不適合報告1)を見る限り、CSVの実施方法に関して「規則不適合」と指摘したものはない。CSVに関する査察指摘は「バリデートしていない」もしくは「バリデートするよう規定していない」のどちらかである。
 

5)CSVのガイドラインと参考書
では、コンピュータ化システムをどのようにバリデートすればよいのであろうか。CSVの実施方法は以下のものから学び取るのがよい。

● GAMP2)
ISPE(国際製薬技術協会)による世界的なCSVの参考書であり、和訳本もある。PIC/S査察官向けガイダンス(PI 011-3)3)は、50頁中にGAMPを52回参照している。
✓ GAMP 4:2001年12月発行(CSVを世界に普及させた)
✓ GAMP 5:2008年3月発行(リスクベースのCSVを提唱)

● 厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」4)
我が国の医薬品GMP/GQPにおけるCSVの標準的な実施方法を具体的に例示しており、CSVにおいて何を行えば良いか理解しやすい。ガイドライン中の記載は絶対的なものではなく、GAMPなど他の方法も容認している。規則ではなく、CSVの標準的な実施方法の例示であるとの認識が重要である。このガイドラインはGMP/GQP以外においても参考になる。

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