望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。

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2022/06/03 施設・設備・エンジニアリング

前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第90回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(60) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。 ■TTT社 2019/10/11 483 施設:製剤工場 ■Observation 1 B)QCラボにおけるOOS結果を、根本原因を明確にすることなく棄却している。例えば;    GCのテストにおいて、OOSとなったテスト結果を機器のエラーであるとの仮定に基づき棄却し、    テスト溶液を1日後に再測定して得られた合格結果を受け入れていた。    しかし、バイアル中の溶剤が蒸発し希釈溶媒が減少したために合格結果となったことを検討して    いなかった。さらに、フラスコに残っていたサンプル調製液により、OOS原因の仮定を調査  (つぶし込み)していなかった。不合格となったテスト結果を再測定により再確認するという    逸脱調査手順は不適切である。    OOS:Out Of Specification 規格外   ★解説 正当な理由なく初回の分析結果を棄却して、後で実施した分析結果を正式記録として採用していると指摘を受ける。この様な場合、再測定による良いとこ取りをしているとみなされ指摘される。483に記載された指摘への回答によっては、警告書(ウォーニングレター)という重い指摘となり、警告書に以下の様に記載されることがある   •  貴社は従前よりこのような良いとこ取りの再測定を行ってきたということであるが   •  既出荷品の品質判定に問題が無かったことを   •  参考品を分析し直すなどして確認しておらず   •  既出荷品の品質を保証出来ていない。 このような指摘を受けないためには、OOSとなった場合、FDAもしくはMHRA(英国医薬品庁)のOOS(Out of specification 規格外)処理のガイダンスに従うのがよい。 これらのガイダンスには以下の様に記載されている。   •  OOSテスト結果を調査し、原因を以下のどちらかに切り分ける     ✓ 測定における異常     ✓ 製造における異常   •  OOSテスト結果の調査は以下の様に行う     ✓ 調査内容はすべて記録する     ✓ OOSとなったテスト結果も調査記録に含める     ✓ ダイナミックデータの場合、OOSとなった電子記録       および原因調査テストの電子記録を削除してはいけない     ✓ 調査内容は試験責任者等がレビューし最終判断を行う     ✓ QAレビューを受ける   FDAは「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」(2006年10月)においてOOS処理のガイダンスを示している。このガイダンスにはその根拠法令(連邦食品・医薬品・化粧品法、cGMP)も記載されている。このガイダンスを参照し、法令違反とならないようなOOS処理手順とする必要がある。このガイダンスの要旨はファームテクジャパン2018年2月号における「FDA 483指摘140件に基づく データインテグリティ実務対応の留意点 その3」を参照されたい。 2018年3月にはMHRA(英国医薬品庁)よりOOS/OOT調査のガイダンスが公開された。 Out of Specification & Out of Trend Investigations https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/02/out-of-specification-guidance/ [https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/02/out-of-specification-guidance/] このガイダンスはFDAのOOS調査ガイダンスを補完するものと位置づけられており、フローチャートによる具体的なステップが示されている。   ★本Observation 1について 本Observation 1はFDAの「Inspection Classification Database」においてcGMP §211.192不適合と記載されている。 Inspection Classification Database https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/inspection-classification-database [https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/inspection-classification-database] §211.192  Production record review. All drug product production and control records, including those for packaging and labeling, shall be reviewed and approved by the quality control unit to determine compliance with all established, approved written procedures before a batch is released or distributed. Any unexplained discrepancy (including a percentage of theoretical yield exceeding the maximum or minimum percentages established in master production and control records) or the failure of a batch or any of its components to meet any of its specifications shall be thoroughly investigated, whether or not the batch has already been distributed. The investigation shall extend to other batches of the same drug product and other drug products that may have been associated with the specific failure or discrepancy. A written record of the investigation shall be made and shall include the conclusions and follow up.

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2022/05/06 施設・設備・エンジニアリング

国内におけるデータインテグリティ観察所見を引き続き解説する。

ラボにおけるERESとCSV【第89回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(59) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。 ■SSS社 2019/10/7 483 施設:中間体製造工場 ■Observation 1 機器のOQが完了したら機器使用記録(ログブック)を使うよう規定されている。しかるに製造した中間体を保存している冷蔵庫に機器使用記録が備え付けられていない。製品保存室に冷蔵庫が何台かありそれらは中間体保存の適格性評価を受けているが、どの冷蔵庫にも機器使用記録がない。 ★解説 FDAの査察において機器使用台帳(ログブック)は以下の点で指摘を受けやすい。   ▶ ログブックが備え付けられていない   ▶ 記入もれ   ▶ 同時記録性 機器使用台帳(ログブック)はFDAのcGMPにおいて以下のように規定されている。 §211.182 機器の清掃・使用ログ   ▶ 機器を異なる品目の製造や検査に使用している場合     機器を清掃、保守、使用するときには、各機器の使用記録(ログ)に使用日時、品目名、     ロット番号などを記載しなければならない。   ▶ 特定の品目に限定して機器を専有使用している場合     機器の使用履歴は製造記録により判るのでこの限りではない。 また、各機器の使用記録(ログ)は(定期的に)照査が必要であるとの解釈があり、照査していないとFDA査察において指摘されることがある。従って、あらかじめ定めた者が所定の頻度で使用記録を確認しその確認記録を残すことが実践規範となる。 機器使用記録の目的 トラブルや苦情の原因調査を行う場合、その機器をいつ誰が何に使用したかの履歴情報が必要になる。つまり、トラブルや苦情の原因調査およびその原因の波及範囲(対処すべき範囲)の調査に必要となる。これらの調査においては下記のcGMP要件を満たしていないと査察において指摘される。  §211.192 製造記録のレビュー   ▶ OOSとなった場合、十分な調査を行うこと   ▶ その調査は同じ品目の他バッチ、あるいはそのOOSが関連する品目にまで広げること   ▶ その調査は記録し、調査記録には結果とその後の対応を含めること  §211.22 (a) 品質部門の責任   ▶ エラーが十分に調査されたことを品質部門が保証すること 機器を誰がいつ何に使用したかの履歴が機器の電子記録に自動保存されている場合、機器使用記録を別途備え付ける必要はないとの意見がある。しかしそれは正しくない。機器を電子的に操作することなく機器の清掃や保守を行った場合、その履歴は機器の電子記録に残らない。従って、機器を誰がいつ何に使用したかの履歴が機器の電子記録に自動保存されている場合においても、電子的に機器操作することなく行う清掃や保守の作業を記録すべく機器使用記録を別途備え付ける必要がある。 「特定の品目に限定して機器を専有使用している場合、機器の使用履歴は製造記録により判るので機器使用記録を別途備え付ける必要はない」とのことであるが、その機器になされた清掃や保守など製造以外の全作業が時系列に把握できるようになっている必要がある。従ってこのような場合においても、機器使用記録は有益である。 機器使用台帳(ログブック)は紙に手書きするのが一般的であると思われる。その場合、紙記録のデータインテグリティ対応が必須となる。その出発点は記録用紙、つまりブランク用紙の管理である。ブランク用紙を適切に管理していないと、新たなブランク用紙に記載しなおし不都合なオリジナルデータを破棄することができてしまう。このようなことを防止するためにブランク用紙には以下の管理が求められる。   ✓ 権限者のみがブランク用紙を発行できること   ✓ GMP作業に係わる職員にブランク用紙の発行権限を与えないこと   ✓ 発行管理されたブランク用紙をコピーできないこと   ✓ 発行したブランク用紙数と使用したブランク用紙数の帳尻をあわせること     (ブランク用紙を破棄していないことを証明できること) 製造や試験において使用するブランク用紙をGMP従事者がコピーできると、不都合な記録や書き損じ記録を破棄し新たなブランク用紙に記録しなおすことができてしまい、そのような可能性が指摘される。MHRA(英国医薬品庁)、WHO、FDA、PIC/Sのいずれのデータインテグリティガイダンスにおいても、このような事を防ぐよう記載されている。その対策の一例を示す。   GMP作業を行わない部門が記録用紙を用意しGMP作業部門に送付する   送付する記録用紙の各頁に、頁番号、総頁数、送付者のサインを記入しておく   送付枚数は要求枚数より若干多目にしておく   GMP作業完了時に、送付した全記録用紙を送付部門が回収し、全数回収を確認する

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2022/04/08 施設・設備・エンジニアリング

前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第88回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(58) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。 ■ RRR社 2019/10/4 483 施設:原薬工場 ■Observation 4 OOS(Out Of Specification:規格外)となった場合の調査が適切に規定されていない。特に; ① 逸脱を起動することなく、何回も分析を無効化することを許している。 ② 無効な分析のラボ調査を着実で適切に記録するよう求めていない。 ★解説 データインテグリティを指摘した500件のFDA 483の内、約30%においてOOSや再テストに関する指摘があった。繰り返し測定を行い良い結果しか記録・報告していないのが露見すると、既出荷品の品質判定に疑いありということで指摘される。その483指摘に適切に対応しないとウォーニングレター(警告書)になりやすい。 データインテグリティを指摘された場合に行うべき対応項目を以下に紹介する。  A. 広範囲な調査    A-1    詳細な調査手順と調査手法    A-2    現職員および退職者との面談    A-3    不適合範囲の調査    A-4    広範囲な回顧的評価  B. 現時点におけるリスク評価  C. 経営戦略    C-1    詳細な是正処置計画    C-2    根本原因の説明    C-3     暫定処置    C-4    長期方策    C-5     状況報告 データインテグリティを指摘したウォーニングレターにはこれらを行うよう記載される。それらを483指摘対応で実施しておけばウォーニングレターにはならないはずである。上記項目の内容については、本連載の第29回 [https://www.gmp-platform.com/article_detail.html?id=1875]と第30回 [https://www.gmp-platform.com/article_detail.html?id=1986]において説明したのでそれらを参照されたい。 OOSになった場合の対応方法がFDAの下記ガイダンスに記載されているので参考にするとよい。   Guidance for Industry   Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production   CDER, 2006/10    業界向けガイダンス 医薬品製造における規格外テスト結果の調査    CDER(Center for Drug Evaluation  and Research:医薬品評価研究センター)     2006年10月 ラボにおいてはこのガイダンスに記載された「フェーズ1 ラボの調査」を参考にするとよい。 「フェーズ1 ラボの調査」の概要:  目的:OOSとなった原因を以下のどちらかに切り分ける    ✓ 測定における異常    ✓ 製造における異常  1)ラボデータの正確性を初期評価する    ✓ 可能であれば、テスト調製を廃棄するまえに初期評価する  2)予期せぬ結果の説明ができない場合    ✓ サンプル調製を維持    ✓ 上司に報告  3)上司は    ✓ 客観的かつ速やかに評価を行い、ラボエラーか製造の問題かを解明    ✓ 即座に評価することにより、最初の測定や調製に使用した実溶液、実テスト群、ガラス製品を再調査     できる  4)ラボデータの正確性評価を十分に記録し保管する フェーズ1における留意点   ▶ 測定データ(電子記録)は絶対に削除しない   ▶ 見たこと、行ったことは記録し、証拠とする     たとえば「上司に報告」と上述したが、その報告内容を適切に記録しておかないと「上司に報告した     こと」を査察官は認めてくれない。2017年のFDA国内査察においてそのような事例があった。 国内の某CROにおける下記の実務事例は説得性がある。   ▶ データレビューをパスするまで、サンプルや調整液を維持 ファームテクジャパン2018年2月号において、このFDAガイダンスを解説したので参考にされたい。 さらにMHRA(英国医薬品庁)の下記ガイダンスも参考になる。   Out of Specification Guidance, 2017/10   規格外ガイダンス 2017年10月       https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/ [https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/678256/MHRA_OOS_OOT_Oct17.pptx]       attachment_data/file/678256/MHRA_OOS_OOT_Oct17.pptx [https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/678256/MHRA_OOS_OOT_Oct17.pptx] このガイダンスは上記のFDAガイダンスを補完するものとして発出された。具体的な処理ステップがフローチャート記載されており判りやすい。また、明確なエラーとその処理の例が以下の様に紹介されており参考になる。   明確なエラーの例とその処理例:   ▶ 計算誤り     ✓ 分析者と上司がレビューし修正内容に日付とサイン   ▶ 電源ダウン     ✓ 分析者と上司が事象を記録し分析し直す   ▶ 機器異常     ✓ 分析者と上司が事象を記録し分析し直す   ▶ 操作ミス     (サンプル溶液をこぼした、サンプルを全量入れていなかったなど)     ✓ 分析者はただちに記録する   ▶ 機器パラメータ誤り     (波長の誤りなど)     ✓ 分析者と上司が事象を記録し分析し直す このMHRAガイダンスの発出背景はMHRA査察官の下記ブログに記載されている。 https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/02/out-of-specification-guidance/ [https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/02/out-of-specification-guidance/]

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2022/03/11 施設・設備・エンジニアリング

前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第87回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(57) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見 (Observation) の概要を紹介する。 ■QQQ社 2019/09/26 483 その3 施設:製剤工場 ■Observation 2 2018年査察における指摘の繰り返しである。 A) MESやMHS(Material Handling System:物流管理システム)などの電子システムが不適切である。   これらのシステム中のオリジナルデータやメタデータは、データ修正において上書きされてしまう。   ITグループによると、修正後はデータもメタデータも維持されているが、修正前のデータと   メタデータは削除されるとのことであった。 B) QAがバッチ記録の電子記録や監査証跡をレビューしていない。   QAはMESにおいてシステム管理者の作業ログをレビューしておらず、権限のない作業が   なかったことを確証できていない。   ★解説 2018年査察における指摘の繰り返しとのことであるが、2017年査察の誤りであると思われる。2017/9/1付けの483を含めて以下に解説する。 ■Observation 2 A) MESやMHS(Material Handling System:物流管理システム)において、データ修正前のデータと   メタデータは上書きされ維持されていない。 本指摘はMESおよびMHSに適切な監査証跡機能が無かったための指摘であると考えられる。電子記録の真正性を保証するには、厚労省ERES指針に記載された下記要件が必要である。   • セキュリティ(権限設定)   • 監査証跡   • バックアップ   厚労省ERES指針:   医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について   (厚労省局長通知 薬食発第0401022号 2005/4/1) 真正性とは:   電子記録が完全、正確であり、かつ信頼できるとともに、作成、変更、削除の責任の所在が明確である   こと。 監査証跡とは:   人によるデータ変更やシステム操作の履歴であり、下記の明示が求められる。     ・変更者氏名 ・変更日時 ・元のデータ ・変更理由  監査証跡は以下の2つに分類すると考えやすい。   • データや設定の生成・変更・削除の履歴   • 重要操作の履歴  どのようなデータ・設定・操作を監査証跡の対象とするかは、装置・機器・システムなど製品毎あるいは  供給者毎に考え方が異なる。どのデータ・設定・操作に監査証跡が必要かは、ユーザーが決めるのである。  後述するPIC/S査察官むけデータインテグリティガイダンスにもその旨記載されている。 装置・機器・システムなどを導入する場合、以下の手順が必要である。  ① どのようなデータ・設定・操作に監査証跡が必要かのユーザー要件を設定する  ② 各社の製品比較評価において、監査証跡機能も評価項目とする  ③ 導入決定した製品の監査証跡機能を精査する  ④ ユーザー要件を満たせない監査証跡機能は手順対応とする    (監査証跡機能100点満点の製品を導入できるとは限らない) 既に導入済みの場合は、上記の①③④を実施することをお薦めする。すなわち:  ① どのようなデータ・設定・操作に監査証跡が必要かのユーザー要件を設定する    (データインテグリティURS策定)  ③ 導入した製品の監査証跡機能を精査する    (データインテグリティGAP分析)  ④ ユーザー要件を満たせない監査証跡機能に対し、設定変更や手順対応等による対応を実施する    (データインテグリティGAP是正) 本483には、どのようなデータに対し監査証跡の不備が指摘されたのか記載されていない。上記の①③④を実施しており、査察官にデータインテグリティ対応説明が出来たならこのような指摘は受けなかったものと推測する。たとえば、監査証跡は不要とユーザーが判断していたデータに対し査察官がそうとは知らずに監査証跡を求めたのかもしれない。上記①③④を実施していれば、監査証跡は不要であることを記録により説明でき査察官に納得してもらえたはずである。 2017/9/1付け483の関連部分を以下に紹介する。   • 2014/12~2016/12    MESのバリデーションとMBR(Master Batch Record)の準備がなされていた。   • 2017/1    MBRを実導入したが、導入したMBRをテストしていなかった。   • 2017/8/4    リリーステストは実施していないのに「リリーステストは不要でありそのロットはQC承認済みである」    とのエラー表示が「Quality Test」画面に表示された。 2018年査察(2017年査察の誤り)における指摘の繰り返しであるとのことであるが、MESに対する評価不足(バリデーション不足)が継続していると言いたかったのではないかと推測する。 この査察期間は2017/8/24~2017/9/1であったが、査察実施前の2017/8/4におけるエラー表示を査察官なぜが取り上げたか? 査察官は以下などの一覧から数件を抽出しその処理を確認する。これは、国内当局のコンピュータ査察でも同様である(参照:第30回GQP・GMP研究会 パネルディスカッション「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」2010/10/27開催 日薬連・品質委員会主催)。   • システムトラブル一覧   • 逸脱一覧   • アラーム履歴一覧   • エラー履歴一覧   • 変更一覧 これらの事象に対する処理を確認すると実際の運用が確認できるからである。CAPA(是正措置・予防措置)が期日内に完了していないという指摘は非常に多い。予防措置(再発防止策)が不十分という指摘も多い。2021/8/1施行の改正GMP省令において是正措置と予防措置が新たにGMP要件となったので留意されたい。 2017年査察において査察官は、MESのアラーム履歴もしくはエラー履歴を調査したのだと思われる。「リリーステストは不要でありそのロットはQC承認済みである」とのエラー表示により、査察官はバリデーション不足と判断したのであろう。2019年査察における監査証跡機能の不備は、2017年に指摘したバリデーション不足との指摘が解消されていないのが原因だと判断し、2018年査察(2017年査察の誤り)における指摘の繰り返しと記載したのだと推測する。 余談ではあるが、査察日数は以下のとおりである。   2017年査察    7日間   2019年査察    7日間 定期実施されるGMP査察は通常5日間であるが上記の両査察ともそれより長くなっている。おそらく新薬申請に伴うPAI(Pre-Approval Inspection 承認前査察)だと思われる。 PAIの目的はCPGM 7346.832に以下の様に記載されている。   目的1:量産準備はできているかを確認   目的2:承認申請書に適合しているかを確認   目的3:データインテグリティの監査        生データ、ハードコピー、電子記録を監査し、承認申請書のCMCセクションに記載されたデータが        信頼できるものであることを確認する。        安定性やバイオバッチデータなど全ての関連データがCMCセクションに提出されていることを確認        し、CDERの製品レビュアーが提出データが完全で正確であると信頼できるようにする。        (承認申請データのインテグリティを確認し、問題なければ承認審査を開始するということである) CPGM:Compliance Program Guidance Manual(FDAのGMP 査察官用マニュアル)  

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2022/02/10 施設・設備・エンジニアリング

国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第86回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(56) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。 ■ QQQ社 2019/09/26  483 その2 施設:製剤工 ■Observation 1 B)    オリジナル電子生データが改変から保護されていない。 1. 製品のリリーステストに使用するHPLCを制御するEmpower3のプロジェクトフォルダーのアクセスを制限していない。Empower3に収集された電子生データを分析者はノートPCから翌年の1月までアクセスできてしまう。 2. 製品のリリーステストに使用しているEmpower3は電子署名機能を有しており、電子署名後は電子生データを改変から保護できる。しかし、電子生データが処理され承認された後にQCラボのスーパーバイザーはEmpower3中のサンプルセット(シーケンス)を電子署名していない。 QCラボのスーパーバイザーは以下の様に説明した。 * LIMSにおいてユニークな識別番号が生成され、その識別番号がLIMSからEmpower3に設定される。 * テスト結果はEmpower3外において電子記録によりスーパーバイザーが承認する。 * その承認によりテスト結果電子記録はLIMSにおいてロックされる。 * しかし、LIMS中のテスト結果電子記録をスーパーバイザーが電子署名してもEmpower3中のサンプルセットがロックされるわけではなく、オリジナル電子生データの改変が保護されるわけでもない。 ★解説 LIMSに格納されるのはEmpower3の分析結果であり、分析機器のクロマトチャートやメタデータである監査証跡を含むオリジナルデータはLIMSには格納されないのが一般的である。ダイナミック・レコードの場合は電子記録が生データとなるので、オリジナル電子記録をダイナミック形式で維持しなければならない。電子記録生データは権限のない変更・削除から保護されねばならない。生データとなる電子記録を記録保存期間において変更・削除から保護していないと、GMP不適合となり指摘される。 本指摘をまとめると以下のようになる。 * Empower3の分析結果をLIMSに吸い上げている *  LIMSに吸い上げた分析結果はスーパーバイザーがLIMS上で承認する * LIMSにおいて承認した以降は、LIMSに吸い上げた分析結果は改変・削除から保護される *  LIMSに吸い上げられているのは分析結果だけであり、ダイナミック形式のオリジナルデータは吸い上げられていない * 監査証跡は生データの一部となるメタデータであるがLIMSに吸い上げられていない * Empower3のオリジナルデータはダイナミック形式であり、このダイナミック形式のオリジナルデータを生データとして維持しなければならない * 監査証跡は生データの一部であるメタデータでありEmpower3において維持しなければならない * LIMSにおいて分析結果を承認したところで、Empower3の電子生データが改変・削除から保護されるわけではなくGMP不適合となる 分析機器とLIMSにおける記録のレビューと変更・削除のロック(保護)は以下のように考えるとよい。 1. データレビューは分析機器において実施し分析の正当性を確認する 2. 分析の正当性確認は、分析機器の監査証跡を含む電子記録により以下の様な観点で行う * 良いとこ取りの繰り返し測定や分析を行っていないか * 再解析は再解析開始条件の規定を満たしているか * 再解析の内容は妥当か * 拡大した波形に報告すべき事象が隠れていないか など 3. データレビュー後は再解析・変更・削除を防止すべく分析機器上のデータにロックをかける 4. データレビューを完了した、つまり正当性が保証された分析結果だけをLIMSに吸い上げる 5. LIMSにおけるレビューは、試験指図に対する試験結果の正当性を確認するという観点で実施する(∵各分析の正当性は各分析機器におけるデータレビューで確認すみ) 6. LIMSにおけるレビューが完了したら、試験指図に対する試験結果を承認しLIMSデータを改変・削除から保護する  

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2022/01/14 施設・設備・エンジニアリング

国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第85回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(55) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。   ■ QQQ社 2019/09/26  483 その1 施設:製剤工場 ■Observation 1 A)    電子記録の帰属性を保証出来ていない。スーパーバイザー以下のQCラボ職員がpH計にパスワードが設定されていないゲストアカウントを共用してログインしている。このpH計は製品のリリーステストなどに使用されている。 ★解説 ダイナミック・レコードの機器は電子記録が生データとなるので、電子記録を維持しなければならない。生データとなる電子記録を記録保存期間において維持していないとGMP不適合になる。スタティック・レコードの機器である場合は、機器からのプリントアウトや手書きの記録を生データとすることができる。しかし、プリントアウトや手書き記録の場合、不都合なプリントアウトを破棄したり、不都合な手書き記録を破棄して新たな手書き記録を作成することができる。つまり、不都合なデータを隠蔽しなかったことを(良いとこ取りをしていないことを)プリントアウトや手書き記録だけで証明するのは容易ではない。従って、スタティック・レコードの機器であっても、電子記録を保存できるのであれば電子記録の維持が求められるようになってきた。監査証跡がなくても以下の条件であれば、良いとこ取りをしていないことを証明できるからである。  ①  総ての測定が電子記録に残る  ②  その電子記録は削除できない  ③  時刻調整の権限は現場にはない (この場合、電子記録のタイムスタンプは現場においてバックデートできないので、タイムスタンプの真正性を保証できる) 関連して、PIC/Sの査察官むけデータインテグリティガイダンス PI 041-1の7.7.2節を以下に紹介する。 7.7.2 静的記録がオリジナルデータのインテグリティを維持していることを正当化出来る場合、電子的方法で生成された生データを紙もしくはpdfフォーマットで維持することが考えられる。しかし、医薬品品質のあらゆる面に直接もしくは間接的に影響を与える全てのデータをメタデータを含んで、データ保存プロセスにおいて記録しなければならない。例えば、分析記録の場合、全てのデータには以下のものが含まれる。  -    生データ  -    メタデータ  -    関連する監査証跡と結果ファイル  -    各分析実行に特有なソフトウェアとシステムの構成設定  -    任意の生データセットの再構成に必要な全データの処理実行(分析法と監査証跡を含む) また、印刷された記録が正確な表示であったことを検証した内容を文書化しておく必要がある。この文書化をGMP/GDP適合記録とする必要があり、そのための管理は面倒であろう。 7.7.2節の解説 例えば、電子天秤の記録は静的記録であるので、電子天秤に生成された電子記録をプリントアウトして紙記録として維持していたとする。不都合なプリントアウトを気づかれずに破棄できる場合、良いとこ取りの繰り返し測定をしていなかったことをプリントアウトだけで証明するのは容易ではない。したがって、静的記録であっても電子記録により全ての測定を記録すれば、良いとこ取りの繰り返し測定をしていなかったことを証明できる。静的記録であっても電子記録により全ての測定記録を保存することをお薦めする。 ちなみに、FDA査察においては、静的記録を生成するpH計に対し以下のような指摘がある。  ◆  FDA 483:2019/1/15 インド  このpH計は総ての測定結果を電子的に保存できる  しかし、電子的に保存するように設定されていなかった  ◆  FDA 483:2019/9/13 日本  このpH計は測定結果を電子的に保存できる  しかし、電子的にレビューしていないしバックアップも取っていない  ◆  FDA 483:2019/9/26 日本 ←本指摘  pH計においてパワードなしのゲストアカウントを全員が共用している  そのため、電子記録の帰属性を保証できない  ◆  FDA 483:2020/9/8 米国  pH計の電子記録が維持されていない 本指摘の内容は「共有アカウントを使用しているため、電子記録の帰属性を保証出来ていない」という帰属性(ALCOA原則のA:Attributable)を指摘したものであるが、上記を反映し以下のように対応するのがよい。 静的記録を生成する機器であっても、測定結果を電子的に保存できるのであれば、電子的に保存すること。監査証跡がなくても以下の条件であれば、いいとこ取りの繰り返し測定をしていないことを証明できるからである。  ◆  総ての測定結果が電子記録に残る  ◆  その電子記録は削除できない  ◆  時刻調整の権限は現場にはない(時刻の真正性が保証されている) この場合、電子記録が生データとなるので、測定者情報を電子生データに残すべく個人アカウントでログインしなければならない。 データインテグリティに係わる機能の普及に伴い、データインテグリティ対応レベルに対する査察官の期待は高まる。例えば、FDAのPart 11は1997年に発出されその中で監査証跡が規定されたが、当時は監査証跡機能を持つ機器や装置は少なかったため、監査証跡に係わる査察指摘は皆無であった。その後、監査証跡機能が普及し始めるにともない、2005年ごろより監査証跡がFDA査察において指摘されはじめるようになった。一方、2019年には監査証跡機能つきの電子天秤が発売されるにいたった。監査証跡つきの電子天秤が今後普及するのに伴い、監査証跡機能のない電子天秤は査察指摘を受けるようになるかもしれない。データインテグリティに係わる機能の普及状況を適宜把握することをお薦めする。 上記においてPIC/Sの査察官むけデータインテグリティガイダンス PI 041-1の7.7.2節を紹介したが、このPIC/SガイダンスPI 041-1の取扱いについて以下に説明しておく。  

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2021/12/10 施設・設備・エンジニアリング

国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第84回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(54) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。   ■ PPP社 2019/09/13  483 その5 施設:バイオ原薬工場 ■Observation 4 B)    pH計の管理番号がバッチ記録に記載されていない。また、pH計のプリントアウトにも管理番号が記録されていない。 ★解説 どのpH計をGMP業務に使用したか識別できないために指摘されている。データインテグリティ要件であるALCOA+の「A:Attributable(帰属性)」が満たされていない。バッチ記録に手動で記録した機器管理番号よりプリントアウトに印字された機器情報の方が信憑性が高いのはいうまでもない。従って、プリントアウトに機器の管理番号もしくは製造番号/シリアル番号を印字できるのであれば、印字できるように設定しておくべきである。 この483への回答例として下記が考えられる。 * プリントアウトに機器の製造番号が印字されるようpH計を設定した * バッチ記録にそのプリントアウトを添付し、どのpH計を使用したか識別できるようにした FDAはこの回答例で満足するかもしれないが、当該機器に関する上記の対応に加え、GMP全体に対し以下のような再発防止策を規定しておくべきである。 製造記録および試験記録において: 1. 使用した機器を特定できる情報を記録すること 2. プリントアウトを記録に添付する場合、機器を特定できる情報をプリントアウトできる機器においてはそのように設定しておくこと さて、2021/8/1より施行されている改正GMP省令に以下の記載がある。付記した逐条解説は改正GMP省令の運用課長通知からの抜粋である。 第八条 (手順書等) 第2項     手順書と記録について、その信頼性を継続的に確保するため、第二十条第二項各号に掲げる業務を文書により定めること。  (逐条解説)     医薬品製品標準書及びGMP省令第8条第1項の手順書並びに同令第2章に規定する記録について、継続的に信頼性(いわゆるデータ・インテグリ ティ)を確保するため、同令第 20 条第2項各号の業務の方法に関する事項を文書により定めることを要するものであること。この場合の継続的とは、それらの文書及び記録の作成時から保管期間が満了するまでの期間にわたって継続するとの趣旨であること。 第二十条 (文書および記録の管理) 第2項     手順書等及びこの章に規定する記録について、あらかじめ指定した者に次に掲げる業務を行わせなければならない。     一    手順書等並びに記録に欠落がないよう、継続的に管理     二    手順書等及び記録が正確な内容であるよう、継続的に管理     三    他の手順書等及び記録との不整合がないよう、継続的に管理     四    欠落、不正確、不整合に対する是正措置と予防措置     五    その他手順書等及び記録の信頼性を確保するために必要な業務     六    前各号の業務に係る記録を作成し、これを保管 (第2項の逐条解説)     手順書並びに記録の信頼性(いわゆるデータ・インテグリティ)の確保業務について規定。あらかじめ指定した者については、当該文書及び記録の種類、内容等に応じて、その信頼性確保に関して熟知している職員を責任者としてあらかじめ指定し、その職責及び権限を含め、文書に定めておくこと。医薬品の製造関連の文書及び記録の信頼性の確保については、PIC/Sガイダンス PI 041 “GOOD PRACTICE FOR DATA MANAGEMENT   AND   INTEGRITY   IN   REGULATED   GMP/GDP ENVIRONMENTS” 等が参考になる。     (注記:「PIC/Sガイダンス PI 041」とはPIC/Sの査察官むけDIガイダンス)   (第2項第四号の逐条解説)     欠落があった場合又は内容に不正確若しくは不整合な点が判明した場合には、その原因を究明し所要の是正措置及び予防措置をとること   改正GMP省令の観点からすると、本483指摘に対する上述した対応例は以下の様に位置づけられる。 1)    483回答例は、第二十条第2項第四号が求める「是正措置」である 2)    再発防止策例は、第二十条第2項第四号が求める「予防措置」である そして、これらは第八条第2項に従い文書化されねばならない。

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2021/11/12 施設・設備・エンジニアリング

国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第83回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(53) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。   ■ PPP社 2019/09/13  483 その4 施設:バイオ原薬工場 ■Observation 1 D) 品質部門はオリジナル電子生データとオリジナル電子監査証跡をレビューしていない。電子生データをレビューし全てのデータが報告され、いかなるデータも隠されておらず全てのデータが正確であることを保証することなく、製品のリリース承認を行っている。 ★解説 指摘1: 品質部門(Quality Unit)はオリジナル電子生データとオリジナル電子監査証跡をレビューしていない。 ⇒ Observation 1 C)において「HPLCに使用されているCDS」と記載されているので、このObservation 1 D)の対象機器はHPLCであろうと推察して解説する。また、品質部門(Quality Unit)との記載は、QCとQAを分けずに記載しているものと判断し、本解説においてはQCとQAに分けて説明する。 QCラボにおけるデータインテグリティ対応として以下のレビューが重要である。 * 試験ごとのデータレビュー * QAによる監査証跡レビュー HPLCはダイナミック・レコードであるので、そのデータレビューは監査証跡を含む電子記録により行う必要がある。ダイナミック・レコードの機器をプリントアウトによりデータレビューしていると指摘される。 * HPLCはダイナミック・レコードの機器とみなされ、ダイナミック・レコードの機器においては * 生データは電子記録であり * 電子記録を生データとして維持しなければならず * 維持する電子記録は、ダイナミック・レコード形式のオリジナル・レコードでなければならない * データレビューは、生データである電子記録に対して行わなければならない *  従って * HPLCにおいては、メタデータである監査証跡を含む電子生データに対してデータレビューを行うべきである * HPLCにおいて、機器からのプリントアウトに対してデータレビューを行っているのは不適切である このデータレビューは分析者以外のQC職員が試験ごとの日常データレビューとして実施するのが一般的である。この試験ごとの日常データレビューは以下のように実施する。 1. 試験ごとのデータレビュー * ダイナミック・レコードは電子記録をレビューすること たとえば * 良いとこ取りをしていないことを監査証跡により確認 * 波形や画像の拡大によるデータ精査 * 自動および手動の解析内容を精査 * 監査証跡と電子記録により下記観点でレビューすること * 権限なくデータやパラメータが変更・削除されていないか * 使用したパラメータは正しいか * 不都合な事象を隠蔽していないか * 正当な理由なく繰り返し測定していないか (繰り返し測定の妥当性を記録により確認) *  試し打ち(テストインジェクション)は妥当か * 正当な理由なく手動解析/再解析をしていないか * 手動解析/再解析の開始条件は規定を満たしているか * 手動解析/再解析の内容は妥当か * シングル・インジェクションは妥当か など * 監査証跡をレビューした記録を残すこと * どの監査証跡をいつ、誰が確認したかが自動記録されないことがほとんどである * 確認した監査証跡をハードコピーやPDFでデーターレビュー記録に添付することが考えられるが、そこまで実施しなくても査察指摘は受けないと思う * 「規定に従い監査証跡を確認した」との一筆を残すことをお薦めする 上記のデータレビュー観点をSOPに規定するのみならず、データレビューチェックシート等に記載しておくと確実なデータレビューを保証でき、査察官も安心する。

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2021/10/15 施設・設備・エンジニアリング

国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第82回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(52) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。   ■ PPP社 2019/09/13  483 その3 施設:バイオ原薬工場 ■Observation 1 C) HPLCに使用されているCDS(クロマトデータシステム)の管理が以下の点で不適切である。 1. 上司に管理者権限が与えられており、一時保管されたデータを削除できる。一時保管されたデータを削除することにより規格外のデータを削除出来る。 2. 分析者にシングルインジェクションの権限が与えられている。 ★解説 指摘1: CDS(クロマトデータシステム)のシステム管理者権限が上司に与えられており、規格外となったデータを上司が削除できる。 ⇒ システム管理者権限を持っていると、データの変更・削除、監査証跡機能のオン/オフ、監査証跡データの削除、アカウント権限の設定変更、時刻の調整などが出来る。つまり、システム管理者権限をもっていると、データの改ざんや不都合なデータの隠蔽ができてしまう。本指摘では、分析者の上司がこの様なシステム管理者権限をもっているため、組織ぐるみでの不祥事が出来てしまうことが問題となっている。分析業務に係わる職員がシステム管理者権限を持っていると指摘される。システム管理者業務は分析業務の実施に係わらないIT、技術、工務、保全、エンジニアリング、QAなどの部門が担当しなければならない。 分析結果を承認するQAがシステム管理者権限を持っていると問題視する査察官がいるかもしれない。そのような査察官には以下のように説明し、査察官の見解を求めるのがよい。 1. 分析部門で照査・承認された分析データを含んで、試験記録をQAが最終承認するが、QAは分析業務そのものに関与していない。 2. QAは分析部門の一員ではなく、分析部門や製造部門から独立しており、彼らを監査する立場である。 3. QAを疑ったらGMPは成り立たなくなる。 ちなみに、FDAのcGMPに品質部門(QA)の責務が以下のとおり規定されている。 §211.22 Responsibilities of quality control unit. (a) There shall be a quality control unit that shall have the responsibility and authority to approve or reject all components, drug product containers, closures, in-process materials, packaging material, labeling, and drug products, and the authority to review production records to assure that no errors have occurred or, if errors have occurred, that they have been fully investigated. The quality control unit shall be responsible for approving or rejecting drug products manufactured, processed, packed, or held under contract by another company. §211.22 品質部門の責任 (a) 品質部門を設置し、すべての原料、医薬品容器、栓、中間製品、包装資材、表示材料および医薬品の適否判定をする責任と権限を持たせること。また、製造中に異常がなかったことを保証するために、あるいは異常があった場合はその原因が充分に調査されたことを保証するために、製造記録をレビューする権限を持たせること。契約に基づいて他社で製造、処理、包装、保管された医薬品の適否判定を行う責任を負わせること。 一方、組織が小さい場合などには電子記録の生成・レビュー・承認に係わるQCや製造の職員にシステム管理者権限を与えざるを得ない場合がある。そのような場合の対応方法がPIC/Sの査察官むけデータインテグリティガイダンス(PI 041-1  2021/7/1)の§9.5に記載されている。 その記載内容を以下に解説する。 * GMP業務とシステム管理業務の両方を行う個人に、異なる権限の2つのアカウントを付与し、アカウントを使い分けることにより対応する * たとえば * 測定時は測定者権限アカウント、システム管理を行う場合はシステム管理者権限アカウントでログインする * システム管理者権限アカウントには測定権限を与えない * 測定者権限アカウントにはシステム管理権限を与えない * システム管理者権限アカウントにより行われたすべての変更は可視化しておき、品質システムにおいて承認する(システム管理者権限アカウントの監査証跡を参照し、不適切な操作がなされていないことをQA等が確認し承認する) * ただし、この確認・承認は出荷判定までにすませておかないと指摘される場合がある。     詳細は連載第13回 [https://www.gmp-platform.com/article_detail.html?id=744]を参照されたい。  

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2021/09/17 施設・設備・エンジニアリング

国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

ラボにおけるERESとCSV【第81回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(51) 7.483における指摘(国内) 前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。 ■ PPP社 2019/09/13  483 その2 施設:バイオ原薬工場 ■Observation 1 B) バイオプロセス制御装置は温度の上下限アラーム機能を持っているが、アラームを設定していないため規格外の温度になったことをオペレータにアラーム発報していない。バッチ終了後に温度記録計のチャートを確認してはじめて規格外の温度になっていたことが判る。12月8日にバッチが終了し、約1週間の12月14日に製造の監督者(スーパーバイザー)が温度記録計のチャートを確認し、さらに12月27日に製造マネージャーがチャートを確認している。規格外温度になったことをオペレータに即時に知らせておらず、規格外温度をすぐに是正できていない。   ★解説 指摘1: バイオプロセス制御装置は温度の上下限アラーム機能を持っているが、アラームを設定していないため規格外の温度になったことをオペレータにアラーム発報していない。   ⇒ どのような温度制御を行っていたのか判らないが、バイオプロセスであるので昇温工程、定温工程、冷却工程などが組み合わされていたように思える。定温制御だけであれば、制御装置の単純な上下限アラーム機能によりプロセスの温度異常監視を行うことができる。しかし、昇温工程においては上下限アラーム値は固定値ではなく、昇温パターンにあわせダイナミックに変化させる必要があろうかと思う。また、温度変化率のアラームが必要な場合もある。昇温、定温、冷却などの工程が組み合わされている場合、温度アラームを自動発報するためには、ユーザーアプリケーションプログラムにより温度の上下限アラーム値をダイナミックに変化させることになる。この施設のバイオプロセス制御装置がどのようなものであるか判らないが、上下限アラーム値をダイナミックに変化させるようなユーザーアプリケーションプログラム機能を持ち合わせていなかったかもしれない。あるいは、そのようなユーザーアプリケーションプログラムの作成が難しかったため作成しなかったのかもしれない。 いずれにせよ、アラームをオペレータにリアルタイム発報する機能は有益ではあるがGMP規制要件でもDI要件でもない。重要なのは、承認書に記載されたCPPの管理ができているかどうかである。アラーム発報機能がなくても、チャートによりCPPの管理ができるのであればそれでよいということになる。あるいは極端かもしれないが、温度トレンドを目視で監視し続けてもよいはずである。製造プロセスの業務に詳しくない査察官は単純な上下限アラーム機能によりCPPであるプロセスの温度監視ができると信じているかもしれない。 従って、指摘の内容をよく確認し、査察官の心配事に関しどのように現状対応しているか説明しディスカッションするのがよい。どのようにCPPを管理しているかを査察官に判りやすく説明するのが重要である。

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