ラボにおけるERESとCSV【第17回】

2016/05/19 施設・設備・エンジニアリング

望月 清

4. Original
 (原本性)

オリジナルデータには、最初に記録したデータ、およびGxP行為を再構築するのに必要とされるその後の全てのデータを含む。オリジナルデータのGxP要件には以下の様なものがある。
 ・オリジナルデータをレビューすること
 ・オリジナルデータ、あるいはオリジナルデータの内容と意味を保持していると保証された真性でかつ正確なコピーを維持すること
 ・オリジナル記録は完全、恒久であり、迅速に復元可能で記録の維持期間をとおして読めること
オリジナルデータとは、以下のようなものである。
 ・スタンドアロンのコンピュータ化ラボ機器中のオリジナル電子記録やメタデータ
(機器の例:UV/Vis、FT-IR、ECG、LC/MS/MS、haematology、chemistry analyzersなど)
 ・自動化製造システム中のオリジナル電子記録やメタデータ
(システムの例:フィルタ完全性自動テスター、SCADA、DCSなど)
 ・ネットワークデータベースシステム中のオリジナル電子記録やメタデータ
(システムの例:LIMS、ERP、MES、eCRF / EDC、毒性データベース、逸脱とCAPAデータベースなど)
 ・紙のノートに手書きされたサンプル調製情報
 ・天秤秤量値のプリント記録
 ・電子的な健康記録
 ・紙のバッチ記録

オリジナル記録のレビューに対する実践規範を表6に示す。

表6 実践規範(オリジナル記録のレビュー)
オリジナル記録のレビュー
紙記録の場合 電子記録の場合

 オリジナル紙記録のレビュー管理の例:
 
 ・文書化した手順、訓練、照査、監査、自己点検により、オリジナル紙記録の適切なレビューと承認を確実に職員に行わせる。オリジナル紙記録は、情報を即時記録するのに使用した紙を含む。
 ・データレビュー手順には、関連するメタデータのレビューを規定すること。例えば、紙記録中のオリジナル情報からの変更を評価するよう規定し、変更が適切に記録され証拠により正当化され、必要に応じ調査されていることを保証すること。変更の評価の例としては、取り消し線もしくはデータ修正に記載された変更の評価がある。
 ・データレビューしたことを記録しておくこと。紙記録の場合、レビューした紙記録に署名することによりデータレビューの記録とするのが一般的である。データ承認が別プロセスとして行われる場合、同様に署名すること。データレビューの手順書において照査と承認の署名の意味を明確にし、照査者と承認者の責務を職員に確実に理解させ、正当性、正確性、一貫性、および照査・承認対象の紙記録の規定への適合性を保証すること。
 ・データレビューにおいてエラーや欠落が発見された場合に取るべき処置を手順化しておくこと。この手順は、ALCOA原則に従ったオリジナル記録の可視性と修正の履歴情報を備え持ち、GxPに適合した方法によりデータの修正や補足説明ができること。
 

 オリジナル電子記録のレビュー管理の例:
 
 ・文書化した手順、訓練、照査、監査、点検により、オリジナル電子記録の適切なレビューと承認を確実に職員に行わせる。オリジナル電子記録は、人間が読むことのできる電子データの原記録を含む。
 ・データレビュー手順には、原電子データと関連するメタデータのレビューを規定すること。例えば、電子記録中のオリジナル情報からの変更を評価するよう規定し、変更が適切に記録され証拠により正当化され、必要に応じ調査されていることを保証すること。変更の評価の例としては、監査証跡、履歴ファイル、あるいはメタデータに記載された変更の評価がある。
 ・データレビューしたことを記録しておくこと。電子記録の場合、照査・承認された電子データセットに電子的に署名することによりデータレビューの記録とするのが一般的である。データレビューの手順書において照査と承認の署名の意味を明確にし、照査者と承認者の責務を職員に確実に理解させ、正当性、正確性、一貫性および照査・承認対象の電子データとメタデータインテグリティの規定への適合性を保証すること。
 ・データレビューにおいてエラーや欠落が発見された場合に取るべき処置を手順化しておくこと。この手順は、ALCOA原則に従ったオリジナル記録の可視性と修正の履歴情報を備え持ち、GxPに適合した方法によりデータの修正や補足説明ができること。
 

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執筆者について

望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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