医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第8回】

 ほとんどの医療機器は複合材料から構成されています。また、有機ポリマーと呼ばれる合成樹脂が多々用いられていることは、今さら言うまでもありません。有機ポリマーはモノマーが重合したものですが、それだけで樹脂が構成されるわけではなく、重合促進剤や酸化防止剤、可塑剤など様々な添加剤や、色素などが加えられて実用的な樹脂となり、さらにそれを複数用いて、樹脂からなる接着剤で組み上げたりします。作業工程では、専用の装置で押し出されたり、金型に入れられたり、そして、滅菌されたりします。こうなりますと、一体いくつの原料化学物質が使用され、その不純物や反応生成物は何で、どの程度の量含まれるのかを把握することは、実質的には困難ではないかと思ってしまいます。また、医療機器メーカーの大部分は、そのような有機ポリマーを調達してきて利用しているケースが多く、もとの樹脂メーカーはその化学組成についてはまさにノウハウの核心であるため、トップシークレットとなっている例が多いと聞いております。
 医療機器の生物学的安全性試験にGLPが導入される際も、このことが議論されていました。医薬品や化学物質であれば何を試験対象とするかが明確で、それが試験期間中変化しないということを担保することが比較的容易です。対象物質はおおよそ純度が100%近いものが多く、化学構造も明らかであるため、分析しやすいからです。一方で医療機器の場合は、複合材料、複合化学物質の集合体であることから、何をもって変化していないとするかの定義が難しく、また、抽出したものについて試験するものも多いため、抽出されたものが何で、安定性はどうなのかということが不明となることから、GLPでは試験できないという声も多々ありました。

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