医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第1回】

2020/01/24 医療機器

 2020年が始まってから幾分時が過ぎ、皆さまにおかれましては、本格的に今年の目標に向かって、そして、夢の実現に向けて活動されていることと存じます。

 今回から、医療機器の生物学的安全性試験に関するコラムを担当させていただきます。
「GMPプラットフォームで医療機器の生物学的安全性?」という印象をお持ちの方も多いかと存じます。実のところ私も当初お話をいただいた際は、ちょっと分野が異なるのではと思ったのですが、様々な情報を提供するのが使命とのお話を頂きましたので、私のようなものでもよろしければということでお引き受けした次第です。専門外の方に読んでいただいてもわかりやすいよう、できる限り平易な文を心がけて参りたいと思っております。

 さて、生物学的安全性というと何を想像されるでしょうか。医療機器の安全性として、製品としての安全性という観点では、まず機械的な安全性はもちろん考慮する必要があろうかと思います。輸液セットのチューブが点滴中にすぐにジョイントから外れては困りますし、人工関節が体内でポッキリ折れてはたいへんです。また、電気を利用する医療機器では、漏電があっては問題ですので、電気的安全性も考慮しないとならないでしょう。このように、本来の性能とは別に、製品の安全性は様々な角度で検討しなければならないのですが、医薬品とは少し異なる観点での安全性が医療機器には必要です。
 そして、生物学的安全性となりますと、ヒトの生命活動に悪影響を及ぼす可能性を確認することになりますので、こちらは医薬品でも十二分に検討される事項で、医薬部外品や食品においても、非常に重要な側面をもっています。医療機器はその形状等の制約で、医薬品や食品と比較すると、工夫が必要なことが多いのですが、いずれにしても生命活動への影響を検索することに変わりありません。

 ではどうやって生物学的安全性を評価するのかということになりますが、基本はその対象となるものやその原料を、人類が今まで一度も使ったことがないという前提で考えてみることだと思います。つまり、有史以来その材料や製品を人類が経験したことがない適用方法で、人体に暴露することになった場合、どうなるのかという観点で考えるということです。
 ちょっと大袈裟だよと思われる節もあろうかと思います。実際、私が若かった頃、医療機器の会社の方から幾度も苦言を受けた覚えがあります。「薬とは違って、医療機器には薬理作用のような強い生物作用はないだろう。塩ビやポリプロピレンでできたチューブやコネクタにそんなたいそうな試験をする必要はない。なぜ、君はそんな無駄な試験を提案するのだ。」など、ちょっと気が滅入るような強い口調で叱咤されたこともありました。当時は、生物学安全性に関する規制についてちょうど切り替え時期で、評価を要求される試験項目がそれまでとは大きく変わった時期ということもあったのかと思いますが、医療機器産業の皆さまにとっては、開発に大きなコストが必要となってしまうこともあり、ナーバスになっておられたのではないかと考えておりました(ただ、お叱りを受けたことを今でも覚えているくらいなので、結構自分にとっても堪えたのだと思います)。

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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