ラボにおけるERESとCSV【第66回】

2020/07/10 施設・設備・エンジニアリング

望月 清

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■ WW社 2018/7/20  483
施設:製剤工場


■Observation 1
正式分析の前のテスト分析において、実サンプルを使用することがが許されている。
★解説:
実サンプルを用いて機器調整のための試し打ちをしている。そのため試し打ちが良いとこ取りの隠れ蓑になっているのではないかと疑われている。試し打ちを行う場合は以下の様に行い、データレビューにおいてこれらの確認を行い記録を残すこと。
 ・   試し打ちのSOPに従い実施する
 ・   試し打ちの電子記録を維持する
 ・   データレビューにおいて試し打ちの正当性を電子記録により確認する
 ・   電子記録により正当性を確認したとの記録を残す
 ・   測定対象のサンプルにより試し打ちを行わない
 ・   測定対象のサンプルを使用しなかったことを証明できるように記録を残す
   ◆ 試し打ち用サンプルの調製記録を残す
   ◆ 測定対象のサンプルの受入量、使用量、残量の出納管理 など
連載第32回のB社の事例も参照されたい。また、連載第15回連載第22回において解説したHPLCプレコンディショニングにおける試し打ちに対するMHRA(英国医薬品庁)とFDAの指針も参照されたい。データインテグリティ指摘の約8%において試し打ちが指摘されている。

■Observation 2
バッチ記録用紙と分析テストデータシートはQAが発行し、帳尻会わせをしている。しかし、ベリフィケーションシート、機器使用ログ、洗浄記録など、GMPデータを記録する他の書類は、製造あるいはQCのマネージャが発行している。しかるに、QAはこれら書類の発行に対し監視も追跡もしておらず、文書管理のレビューもしていない。
★解説:
バッチ記録用紙と分析テストデータシートはQAが発行し、帳尻会わせをしているとのことである。しかし、それ以外のGMP記録に係わるブランク用紙の発行管理が現場まかせとなっているということで指摘されている。GMP記録に係わるすべてのブランク用紙には以下の管理が求められる。
 ・   権限者のみがブランク用紙を発行できること
 ・   現場の職員にブランク用紙の発行権限を与えないこと
 ・   発行管理されたブランク用紙をコピーできないこと
 ・   発行したブランク用紙数と使用したブランク用紙数の帳尻をあわせること
連載第40回 O社のObservation 3を参照されたい。

 

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執筆者について

望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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