ラボにおけるERESとCSV【第40回】
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■O社 2016/9/23 483
施設:原薬工場
Observation 1
予想外の不一致が発生した場合、ラボ調査を行わずに再テストしている。 純度検査において不明なピークが認められたが、分析者はその結果を無効化し新たなサンプルを別のHPLCにより再テストした。最初のテストで認められた不明ピークのラボ調査を実施していない。
★解説:
これは、OOS(Out Of Specification)の処理に関する指摘である。OOS処理に関する指摘はFDA査察において多発しており、データインテグリティ基本機能欠如の指摘に次ぐものである。指摘件数の詳細は、ファームテクジャパン2018年1月号における「FDA 483指摘140件に基づく データインテグリティ実務対応の留意点 その2」を参照されたい。
予想外の不一致(OOS)が発生した場合、その処理は以下の様に行い、良いとこ取りを疑われないようにする必要がある。
✓測定における異常
✓製造における異常
▪OOSテスト結果の調査は以下の様に行う
✓調査内容はすべて記録する
✓OOSとなったテスト結果も調査記録に含める
✓ダイナミック・データの場合、OOSとなった電子記録および
原因調査テストの電子記録を削除してはいけない
✓調査内容は試験責任者等がレビューし最終判断を行う
✓QAレビューを受ける
FDAは「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」においてOOS処理のガイダンスを示している。このガイダンスにはその根拠法令(連邦食品・医薬品・化粧品法、cGMP)も記載されている。このガイダンスを参照し、法令違反とならないようなOOS処理手順とする必要がある。このガイダンスの要旨はファームテクジャパン2018年2月号における「FDA 483指摘140件に基づく データインテグリティ実務対応の留意点 その3」を参照されたい。
Observation 2
エクセルスプレッドシートにより分析結果を計算している。そのスプレッドシートは電卓を使用してバリデートされているとのことであった。しかし、バリデーション記録には結果しか記載されておらず、バリデーションデータが記録されていない。
★解説:
スプレッドシートを電卓によりバリデートする場合、入力データのパターンを適切数用意しスプレッドシートによる結果と電卓を使用した場合の結果を比較する。入力データのパターンはスプレッドシートの内容を勘案して決める。したがって、各入力パターンに対するスプレッドシートのプリントアウトと電卓計算結果がバリデーション記録となる。本指摘においては、このようなバリデーション記録が残されておらず、「電卓により検算しスプレッドシートが正しいことを確認した」との結果しか残されていなかったのであろうと推測する。
なお、バリデートに用いた入力パターンを、そのスプレッドシートの別シートに記録しておくと、スプレッドシートの再バリデーションが容易になる。つまり、OSやエクセルなど基盤ソフトウェアがバージョンアップされた場合、別シートに記録された入力パターンによりスプレッドシートの演算が影響を受けていないことを手軽に検証できる。
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