奈良から発信する“品質”のコ・コ・ロ──くすりの歴史と現場のいま【第1回】

第1回 はじめに ― ワークショップが生まれた理由

〇薬のまち・奈良から、現場と向き合う品質強化の物語

こんにちは。奈良県で薬務行政を担当している橋本明日香です。
私はこれまで、県内の医薬品製造所を訪問し、監査や指導、相談対応などを行ってきました。現場の空気、作業の丁寧さ、関係者の真剣なまなざし――。薬づくりに携わる皆さんの想いに触れてきました。
そんな想いを背景に、令和7年度、奈良県では新たに「医薬品製造業者等品質保証体制強化事業」を立ち上げました。
すでに第1回のワークショップも開催され、県内の責任役員を対象に、法令遵守や組織体制の在り方をテーマに活発なディスカッションが行われました。
この事業は、単なる研修や講義ではなく、「気づく力」「考える力」を育てることを目的とした対話の場です。

この連載では、そうした取り組みがなぜ始まったのか、どのような背景があったのか、また“奈良のくすり”の歴史や、私たちが日々接している現場のエピソードを交えながら、行政と現場の“今”を綴っていきたいと思います。

第1回目の今回は、「なぜ、県がこのワークショップを始めたのか?」という根っこの部分をお話しします。

1.なぜ今、“品質”に向き合うのか
令和2年の年末、一社の後発医薬品企業による不適切な製造が発覚しました。
不適切といっても、単に記録の不備があったとか、設備が古かったといった話ではありません。
問題の本質は、「現場で問題に気づけない」、「気づいても是正できない」、「問題が放置されたまま拡大してしまう」――そんな“組織としての体制の弱さ”でした。

 

 

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