医療機器リスクマネジメント-国際規格の要求事項と実践対応-【第8回】

医療機器安全規格の分類
近年の医療機器国際規格では、安全に対して一律的な規定をするのではなく、製造業者に対してリスクマネジメントを要求することで、医療機器を安全に開発・設計・製造するという考えが基本になっている。医療機器に関する次のような国際規格に、リスクマネジメントによる安全規定が取り込まれている。

(1)  品質管理システム規格(QMS規格)
  QMS規格は、安全な医療機器を開発・設計・製造するための体制構築
  について規定している。医療機器のQMS規格であるISO 13485は、
  リスクマネジメントを実施できる体制構築を要求事項として規定し
  ている。
(2)  プロセス規格
  個々の医療機器を、開発・設計・製造するプロセスについて規定するこ
  とにより、医療機器の安全を確保することを目的としている。リスクマ
  ネジメント規格も、このプロセス規格の一つと考えてよい。後述するよ
  うに、ユーザビリティ、ソフトウェア、医療機器生物学的評価について
  規定したプロセス規格が発行されている。
(3)  製品安全規格
  完成した医療機器製品の安全性について規定する規格である。医用電気
  機器の安全性を規定したIEC 606061-1シリーズの規格群が代表的なも
  のである。その他に、体外診断機器、植込型医療機器に関する安全規格
  などがあり、いずれもリスクマネジメントを取り入れている。

 医療機器の安全に関する国際規格については、第1回の表1-1にまとめておいたので参照してほしい。今回は、これらの規格のリスクマネジメントに関する規定について説明する。


品質管理システム(QMS)規格のリスクマネジメント規定
 ISO 13485は、一般工業製品のQMS規格 ISO 9001を基にした医療機器の品質管理システム規格である。この規格の「製品実現」に関する要求事項では、次のようにリスクマネジメントの文書化を明記している。
「組織(医療機器製造業者)は、製品実現のために必要なプロセスを計画して構築する。品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合性をとる。組織は、製品実現におけるリスクマネジメントの一つ又は複数のプロセスを文書化する。リスクマネジメント活動における記録は維持する。」(ISO 13485:2016、7.1)

 これは、医療機器のQMSの中に、リスクマネジメントを実施できる体制の構築を要求している。リスクマネジメント規格ISO 14971でも、リスクマネジメントの実施体制を経営の責任で構築することを求めているが、上記のISO 13485の規定は、これに対応するものである。

 ISO 13485は、全ての医療機器の開発・設計・生産体制について規定している。したがって、製品安全規格が制定されている医用電気機器や体外診断機器の他、製品安全規格が制定されていない医療機器も含めて全ての医療機器の開発設計にリスクマネジメントの実施が求められる。

 

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