医療機器リスクマネジメント-国際規格の要求事項と実践対応-【第1回】

2019/08/30 医療機器

中谷 敬

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はじめに
医療機器については、その有効性と安全性を確実なものするために多くの規制がある。リスクマネジメントは、その規制の根幹をなすものである。次のような理由で、現在では医療機器を開発・設計・生産するためにリスクマネジメントが必須となっている。
(1)  医療機器の開発・設計・製造する事業所は、品質管理システム
  (Quality Management System、以下QMSと略)を構築する必要がある。
  日本では、厚生労働省令でQMS体制の構築を求めている。QMS体制構築を規定
  した厚生労働省令(一般にQMS省令と呼ばれている)は、国際規格ISO 13485
  を基にしている。これらの規制・規格が求めているQMS体制では、リスクマネ
  ジメント実施が規定されている。
(2)  製造販売される医療機器製品は、「基本要件」と呼ばれる基準に合致する必要
  がある。医療機器の基本要件は、医療機器が安全に製造販売されるための条件
  を規定しており、この中ではリスクマネジメントが必須事項となっている。

日本を含め多くの国では、国際規格ISO 14971を基にした医療機器のリスクマネジメント実施が求められている。この小論では、国際規格に基づく医療機器のリスクマネジメントの概要について解説する。内容として、次のようなものを予定している。

・安全とリスクについての国際規格
・安全とリスクに対する国際規格の考え方
・リスクマネジメント実施体制とリスクマネジメントプロセス
・ハザード/危険状態の特定
・危害の重大性、発生確率の求め方とリスク評価
・リスク低減と残留リスク評価、リスクマネジメントのまとめ
・リスクマネジメントを取り入れた国際規格


安全とリスクについての国際規格
表1に、医療機器の安全とリスクに関する国際規格を示す。また、対応するJIS規格も示してある。WTOのTBT協定により、国際規格(IEC規格及びISO規格)が制定されている場合は、日本の国家規格であるJIS規格は、原則として国際規格を日本語訳して制定することになっている。医療機器に関するJIS規格は、ほとんどが対応国際規格の日本語訳である。
 


表1のトップに挙げた ISO 14971は、医療機器のリスクマネジメントに関する基本規格である。医療機器を開発、設計、生産、販売していくためには、この国際規格(及びその対応JIS規格)に基づいて、リスクマネジメントを実施する必要がある。

 

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執筆者について

中谷 敬

経歴 1974年、日本光電工業入社。医用センサ、生体情報計測機器の開発・設計に従事。
在職中、IEC/SC62D、ISO/TC121/SC3の日本国内委員会幹事として、医療機器国際規格の制定・改訂作業に参加。国際エキスパートとして日本コメントの作成・まとめを行い、国際会議に参加しての日本意見の反映に尽力した。
定年退職後は、コンサルタントとして独立。各種セミナー講師の他、首都圏の大学で客員教授、非常勤講師として医療機器技術、医療安全、国際規格について講義している。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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