GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第14回】

1.見える化と情報共有
 予防措置として、横展開するために「見える化」は重要である。しかし、それはただの報告会として終わってはならない。GMP委員会やマネジメントレビューにおいて、逸脱の報告をすることは、多くの製造所で行われている。これは、逸脱の「見える化」として、重要ではあるが、その実効性として、有効に働いているところは少ないのではないだろうか。GMP研修会等で、都道府県等当局は、査察における指摘事項等を公表している。FDAもウォーニングレターWarning Letterを公表している。それは、事例を公表することにより、同様の事例の発生を未然に防ごうとする予防措置であり、「見える化」の一環でもある。当局の監視指導としても重要な位置づけである。しかし、その実効性はどこまで有効に働いているか確認が必要である。逸脱事例を聞いて、いかに自分の製造所、自分の製造現場に起こり得ることとして、十分活かさなければならない。十分に活かしていない場合、報告会において、その事象のみを報告するだけで、その原因を明確にしていないためである。作業の手違いがあったと報告をしても、作業の手違いがなぜ起きたのかを明確にする必要があり、それを周知しないと、単なる報告で終わり、予防措置につながらない。ヒューマンエラーの原因を究明するには、どうして、その手違いが起きたのか調査をしなければならない。「謝罪文」を求めるのではなく、エラーをした真の原因を見極め、その点を情報共有することにより、予防措置となる。情報共有のための会議は多いが、報告を是正や予防につなげる会議にすることにより、実のある情報共有となる。
 「見える化」のために、製造所内に「目標:逸脱0」等を掲示するのも一つの方法である。しかし、最も重要なことは、ただ、横展開するのはなく、自分たちの問題として、その必要な対策を実施できるかである。逸脱件数等を掲示する場合、もし「0」が続いた時、逸脱を起こした作業者が責められる職場の雰囲気を作ってはならない。そもそも「逸脱0」はそう簡単になせるものではない。GMP三原則には、「人為的な誤りを最小限にする。」とある。この意味することは、CAPAの適切な管理により、再発や同様事例を未然に防止することである。エラーを起こした作業場には、何人かの作業者がいるであろう。また、同様な事例が起きる可能性の作業場も何か所かあるであろう。その作業者たちとの情報共有が重要である。しかし、情報共有は、作業者をさらし者にする場ではなく、責める場でも、咎める場でもない。情報共有は、是正措置や予防措置として活用できなければ意味がない。報告会や掲示物は有効に活用できる状況にしなければ、無駄になるだけでなく、却って、作業者を追い詰めるマイナスなものとなる。職場における「いじめ」には、くれぐれもしてはならない。
 逸脱管理やCAPA活動は、犯人捜しと言われる方もいるが、犯人探しにするかどうかは、マネージャーの姿勢にあると思う。逸脱等において、原因を究明していく過程は、犯人捜しとも重なる状況がある。実際に逸脱行為があった時、SOPの記載に問題があれば、その作成や承認した者、指図を出したなら指図者、設備に問題があれば、点検や校正の実施者、また、それらの記録を確認した照査者や承認者など多くの人が関わるであろう。GMPではその手順書や指図書、記録について照査など多くの人が関わり、最終的に承認者や製造記録においては出荷判定者も確認をする責任がある。それらに関わる人すべてが犯人である。一人を責めてはならない。そのシステムを修正、改善することが急務である。犯人探しとならない逸脱管理の徹底を図るようマネージャーは管理しなければならない。

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