【第3回】オランダ通訳だより

「これもひとつのオランダ紹介・前編」

台風7号の被害を受けた地域の方に、お見舞い申し上げます。

今回は前後編にわけて、オランダについて書いてみたいと思います。風車にチューリップ、木靴やチーズ、レンブラント、ゴッホ、フェルメールといった定番のトピックは他の媒体に譲りまして、前編では、オランダ人の英語とそれにまつわる話題をお届けします。

オランダは世界地図を見ても、欧州のどこにあるのかわからないくらい小さな国です。東はドイツ、南はベルギーと国境を接しており、西隣には、北海を挟んでグレートブリテン島(英国)が浮かんでいます。国土面積は約42,000平方キロ。九州よりやや大きく、山はありません。

そんな小国ですが、農産物・食料品輸出額ランキングでは、10年近くにわたって、米国に次ぐ世界第2位を誇ります。これは、主な輸出先が地続きの欧州諸国(主にドイツ)であることや、欧州最大のロッテルダム港を介する中継貿易、輸入原料を加工してまた輸出する、加工貿易が盛んであるためです。

一方、歴史を遡って17世紀初頭、1602年に世界初の株式会社(オランダ東インド会社)を設立した国でもあります。資本主義の礎を築いたといってもいいでしょう。ちなみに、伝統工芸品のデルフト焼も、この時代に誕生しました。東インド会社の香辛料貿易船が、中国の安価な景徳鎮をバラスト代わりに持ち帰ったところ、飛ぶように売れたため、じゃあ似たような陶器を作ろうか、となったのが始まりです。

オランダはこの時代、アムステルダムやロッテルダムを中心に、貿易や金融、保険業で隆盛を極めて「黄金時代」を迎えます。その流れが現代まで受け継がれているのですが、小国だけに、取引先の言語を話せないと商売になりません。外国語が意思疎通のツールとして古くから重視されていたことは、英語普及率が欧州トップであることと無関係ではないでしょう。英語を含めて3~4か国語を話す、理解できるというオランダ人は珍しくありません。


この国の外国語の義務教育がどうなっているかというと、英語が必修なのは日本でいう中学1年から4年間です。その他の主要外国語は、ドイツ語とフランス語ですが、大学進学しないコース(※)の中学生たちは、いずれか1つを第二外国語として2年間学びます。もし学校がスペイン語やアラビア語、トルコ語の授業も行っていれば、そこから1つ選ぶのでも構いません。アラビア語とトルコ語が含まれているのは、多数いる移民1世、2世の祖国の言語だからでしょう。

(※オランダの学校教育は、職業訓練を核とするため、中学で一旦進路を決めて、最初の数年で学力や希望に合わせて変更修正します。小学校から留年や飛び級があるので、年齢と学年は必ずしも合致しません)

一方、大学進学コースの中学生たちは、英語のほかに、外国語を2つ履修します。フランス語とドイツ語を選ぶか、他言語(スペイン語、ロシア語、イタリア語、アラビア語、トルコ語、中国語)も開講されている場合は、フランス語とドイツ語のいずれかを他言語に変更できます。近年ではドイツ語の人気が下がり気味で、ドイツ語が必須の業務で人材が不足しているという話も聞きます。

 

 

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