GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第58回】

教育訓練

1.知床観光船事故  
 知床観光船事故で尊い命が失われ、まだ、行方不明の方々の捜索が続いている。今後、原因究明と対策が行われることになろう。天候の悪化が予報される中、出港の判断をした社長や船長の責任は重大である。天候の状況で引き返すことを条件に乗客に納得してもらうために出港したと社長の発言もあった。乗客にとって、その危険性の認識はできず、社長の発言は無責任極まりないと言わざるを得ない。船長も免許は持っていたが、知床での経験は浅く、知床の海の天候を判断することは難しかったのではないかとの地元の方の意見もある。このような観光船の運航会社に対する当局の検査についても問題視されている。携帯電話を連絡の手段として届出されていたが、問題の海域は、携帯電話の電波が届かないエリアであったことや会社との無線が故障していたことが見過ごされていた点である。
 船長の知床海域における経験不足は、船長の責任だけでなく、会社としての安全管理面としての教育訓練等として問題視されなければならない。しかし、船長として任用された時にそのようなリスクがあることは船長自身が会社に申し出る必要がある。また、他の船の船長も他人ごとではなく、意見すべきであった。どの分野でもあることだが、他部署に関わることに口を出したがらないことは多い。つまりは他人ごとである。他で起きていること、起きる可能性があるなら、自分のこととして、会社に意見できる文化を育むことが必要である。
 社長は、全く品質システムとしての資源の配分ができていないことが明白である。無線機の故障に対する設備の修理などメンテナンスができていない。携帯電話では無線連絡が十分に行えないことを把握せず、当局へ届け出ていたことを認識していなかった。天候の悪化が予想される中での出港の判断。また、知床での経験が不十分である者を船長として任命した責任及び経験不足に対する教育訓練の未実施等、その責任は重い。過去に事故が起きていないことで安全を無視した安易な経営と目先の利益にとらわれた結果である。
 規制当局のチェック不足も原因の一つである。安全を担保することは難しい。かつて、私が保健所で食品衛生監視に携わっていたころ、先輩監視員からもし、自分の監視指導後に、その飲食店で食中毒が発生したら、自分の監視指導に不足があったからと後悔しないように仕事をするように教わった。当然、その店舗における管理が悪いことが原因である。しかしそのチェックをした食品衛生監視員として、その管理の不足を見抜き、食中毒を未然に防ぐことが食品衛生監視員としての任務である。規制当局の査察官、検査官、監視員は、その自覚をもって、任に当たらなければならない。規制当局である行政庁職員は、異動も多く、経験不足な面がある。しかし、規制当局職員の目が甘くなれば、業者もこのぐらいなら大丈夫とずさんな管理に陥りやすいものである。GMPの自己点検で、自らの業務の点検を自らが行わないことを原則としているのは、自らを厳しくチェックすることはそれなりの鍛錬が必要であるからである。
 船舶免許や医薬品製造管理者等、法令で規制しても、実際上、企業内でその任にあたる者に権限がないことも多い。社長がその点を認識して、その権限を十分与えなければ、その責務を全うすることはできない。経営者、現場責任者そして規制当局が互いを理解し、チェック体制を充実させなければ、どの業界においても、品質や安全に対する意識を向上させることはできない。

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