【和訳】FDAリモート査察のガイドライン【第2回】

2021/05/28 品質システム

A. 施設の選択と通知
FDAは、リスクマネジメントの手法とツールを適用して、施設にリモートインタラクティブ評価への参加を要請するタイミングを決定します。場合によっては、査察を行う前に記録を要求したり、施設にリモートインタラクティブ評価への参加を要請したりすることがあります。これによって、出張するFDAスタッフの数を減らし、査察のために現地で費やす時間を減らすことで、コロナ禍における査察実施に伴うリスクを最小限に抑えることができます。申請者や施設からのFDAへのリモートインタラクティブ評価の依頼は受け付けません。このような決定は、申請者や施設が必ずしも知りえない多くの要因や情報に依存しており、依頼に基づくプログラムを確立することは全ての関係者にとって負担が大きすぎるからです。

特定の施設または医薬品についてリモートインタラクティブ評価が適切であると判断すると、施設および申請者(適切な場合)に電子メールか電話で通知します。FDAは、施設の登録・申請情報を使用して、施設の連絡先または米国の代理人を特定します。電子メールや電話での連絡には、テレビ会議、ライブストリーミング(動画中継)、データや文書の画面共有が可能かどうかなど、リモートインタラクティブ評価に参加する施設の意思と能力の確認を依頼する内容が含まれます。依頼には、評価を受ける施設の名前と住所、リモートインタラクティブ評価を使用する理由、および既知の場合はFDA参加者の名前が記載されます。

施設がリモート評価を受けることに同意した後、FDAは、連絡先を確認し、計画を円滑に進め、施設が記録を転送して、FDAスタッフとリモートでのやり取りを行う能力があるかどうかを判断するために、施設に連絡を取ります。

FDAは、リモートインタラクティブ評価のFDA主任担当官を特定します。また、FDAは施設と協力して、リモートインタラクティブ評価のための活動を計画・調整するために必要な情報を入手します。施設は、これらの要求に応える必要があります。要求を満たす上で何らかの問題があれば、できるだけ早くFDAに知らせることが望まれます。

施設がリモートインタラクティブ評価の実施要請に従わないと、FDAは規制上の判断(例えば、保留中の申請の裏付けとして使用される臨床試験の妥当性や、申請書に記載されている医薬品製造業務の妥当性などに関する判断)をタイムリーに行うことができなくなる可能性があります。

1. 承認前およびライセンス許与前査察に関する具体的な考慮事項
PAIやPLIを実施できない場合、または計画された査察を補完することが有用であると判断した場合、FDAは、査察以外の手段の使用を検討し、PAIやPLIの実施が必要である理由となる特定のリスクに対処するための最も適切な方法を選択します。
FDAは、以下の場合に、申請内容の裏付けのためにリモートインタラクティブ評価を要求することがあります。
(1)施設とのリモートでのやり取りにより、申請審査中に特定されたリスクを評価することができると判断する場合
(2)データインテグリティ上の問題その他、査察が必要であるとFDAが判断するような問題がない場合

通常、FDAは、リモートインタラクティブ評価を開始する前に、FD&C法セクション704 (a)(4)に基づき、記録およびその他の情報を要求します。

2. 承認後査察に関する具体的な考慮事項
PoAIを実施できない場合、または計画された査察を補完するのに有用であると判断した場合、FDAは、PoAIの必要性の理由となる特定のリスクに対処するために、査察以外の手段を使用することを検討します。リモートインタラクティブ評価を要求することが、査察の実施に代わる適切な手段であると判断する場合があります。
FDAは、以下の場合に、PoAIのためのリモートインタラクティブ評価を要請することができます。
(1)施設の査察履歴が妥当なものであり、査察が必要であるとFDAが判断するデータインテグリティその他の懸念事項がない場合
(2)PoAIの実施根拠となる申請に関する具体的な検討事項やcGMP上の製造リスクの評価が、リモートインタラクティブ評価によって十分に可能な場合

3. サーベイランス査察に関する具体的な考慮事項
リモートインタラクティブ評価の対象となる国内外の施設の優先順位付けは、FDAが現在サーベイランス査察について行っているのと同じく、リスクに基づいて行われます。

リモートインタラクティブ評価は、FD&C法セクション510(h)(3)の査察には該当しません。しかし、FDAは、リモートインタラクティブ評価によって収集した情報を用いて、将来の査察の範囲、深さ、およびタイミングを決定します。

4. フォローアップ査察およびコンプライアンス査察に関する具体的な考慮事項
フォローアップ査察やコンプライアンス査察では、取り上げられた特定の問題(医薬品の品質管理、施設、または製造上の問題など)に関連する業務、記録、およびその他の情報を調査します。FDAは、旅行制限のために査察が実施できない場合や、計画された査察を補完する場合などにおいて、リモートインタラクティブ評価が適切かどうかを判断します。リモートインタラクティブ評価を使用するかどうかは、施設の性質、および査察履歴やデータインテグリティに関する懸念事項など、査察が必要となった理由によって決まります。

警告状の発行、規制当局との会議の開催、または強制措置(押収や差止命令など)の後、FDAは通常、是正措置が実施されたことを確認するために査察を行います。
欠陥報告(フィールドアラートレポートや生物学的製品の逸脱報告など)を評価するために、FDAは、リモートインタラクティブ評価を要請したり、FD&C法セクション704 (a)(4)に基づく要請を行ったりすることがあります。

5. バイオ研究モニタリング査察に関する具体的な考慮事項
BIMO査察対象施設の選定はリスクに基づいて行われます。査察の履歴や最終査察からの経過時間などの一部の施設選定要因はBIMOプログラムに共通していますが、その他の要因は各BIMOプログラムに固有のものです。

FDAは、査察が必要とFDAが判断するようなデータインテグリティやその他の懸念事項がなく、評価対象の情報にリモートでアクセスできる場合には、リスクに基づく既存の施設選定方法に従って、BIMO施設をリモートインタラクティブ評価の対象とします。一般的に、リモートインタラクティブ評価から得られた情報は、データの信頼性や被験者保護を含む施設の行為を評価し、申請に対するFDAの意思決定においてBIMO研究の妥当性を判断するために使用されます。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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