医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第15回】

 感作性試験は、今のところすべて動物を用いる方法が医療機器の生物学的安全性評価には用いられています。以前もご紹介した、Local lymph node assay(LLNA)、モルモットを用いるMaximization test(GPMT)、そして、モルモットを用いるAdjuvant and Patch Test(A&P)です。
 一方で、薬用化粧品などの医薬部外品では、「医薬部外品・化粧品の安全性評価のための複数の皮膚感作性試験代替法を組合せた評価体系に関するガイダンス」(平成30年薬生薬審発0111第1号)において、動物を全く用いない方法が示されています。OECDガイダンスを元にした、3種の皮膚感作性試験代替法で、①感作性物質とタンパク質との結合性を評価するDPRA法(Direct Peptide Reactivity Assay; OECD TG 442C)、②感作性物質によるケラチノサイトのストレス応答を評価するケラチノサイト株レポーターアッセイ(ARE-Nrf2 luciferase test; OECD TG442D)、そして、③感作性物質による樹状細胞の活性化を評価するh-CLAT(human Cell Line Activation Test; OECD TG442E)の3方法を組み合わせて評価する方向性が示されています。将来的には、これらの方法が、どのくらい医療機器で行う抽出液に対して有効であるのか、偽陰性や偽陽性反応はないのか等を調査した後に適用することが検討されるものと思われます。

 まずはGPMT法をご説明します。この方法は、MagnussonとKligmanという先生方が、1960年代に作出したモルモットを用いる方法で、主に化粧品や外用医薬品の遅延型アレルギー試験法として、世界中で用いられてきました。アレルギー反応の特徴として、まだ生まれてから一度も接触したことがない場合、この反応は出現しません。どこかで何度か感作性物質に暴露し、それを自分の免疫系が憶えていて、次に接触した際に反応するという病態です。金属アレルギーを有する方は、最初からステンレス製の時計ベルトで発赤が生じた訳ではなく、使っているうちに、特に暑くて汗をかくようなときに、ベルトをはずすと赤くなっていたということを経験されたかと思います。そこで、動物試験でも、GPMT以前は、何度か皮膚に試験試料を塗布する方法が行われました。ただ、塗布する回数にも限度がありますので、どうしてもそれらの試験の感度は低くならざるを得ません。それを改良したのがGPMTで、ひとつは試験試料を皮内注射する点、もうひとつはアジュバントという免疫増強剤を投与するという操作を加えたことにより高感度試験法となりました。

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