GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第16回】

1.指図書、手順書の誤記
 指図書や手順書の誤記を査察等で指摘されることも多い。誤記により作業等に間違いが生じ、品質に影響することが懸念されるからである。しかし、多くの製造所で詳細な指図や手順を作成し、悩まれているところも多いと思う。例えば、予備混合で手混合を5分間や10回と規定し、その時間や回数まで記録すると定めた場合、時間や回数が異なった場合、逸脱処理する必要があるか考えるべきである。もし11回行った場合、4分だった時、何か品質に影響するのか疑問に思う。本来、手順は検証やリスク分析を行ってから定めるべきである。手混合は人により、また、同一人物でもその時の体調により、強弱等に差が生じるであろう。その手混合により、含量均一性を担保するわけではないので、バリデーションを取る必要はない。その手混合と本混合を併せて検証するのか、バリデーションの実施の際に検討すべきである。手順書や指図書は、品質へ影響する恐れのあるパラメータを明確にし、定める必要がある。
 手順書や指図書に誤記があると、改訂や再発行しなくてはならないと考える施設も多い。手順書や指図書をきれいな状態で保つことはなく、文書は使い込まなくてはならない。実際の作業で使用していれば、手順に修正が必要なことは出るのが当たり前である。修正に対して、承認者や指図者がその修正を承認することで十分であり、その都度改訂する必要はない。その誤記により、作業のミス等が生じることもあろう。作業者は手順や指図に従ったので、逸脱ではないと主張するだろう。その命令をした上司が悪いのか、その間違いに気が付かず、または気づいてもそのまま作業した部下が悪いのか責任の擦り付け合いになってしまう恐れがある。基本的には、そのような体制を作った会社が悪く、そのようなことがないようマネージメントしなければならない。しかし、「その責任は、QAだ、QCだ、製造だ、製販品証だ、開発だ。」と責任転嫁していないか、各部署との間で業務が抜け落ちていないか確認が必要である。作業の際、手順書や指図書に間違いを発見した時にどのように対応すべきであるか。そのまま作業をしても、手順書や指図からの乖離ではないが、その結果、品質の逸脱を招くかもしれない。指図者等の確認を取り、修正及びその承認を得て、作業に取り掛かることが基本である。バリデーションの結果にも影響するなら、再バリデーションとなることも考え、リスク分析する必要も考えるべきである。逸脱処理をしなくても、その対応は記録に残すべきであり、手順書や指図書について、すべての職員が理解しなくてはならない。ただし、それは、文面上の理解ではなく、その作業において、ミス等があった時に招くリスクを認識しなくてはならない。そのリスクを意識していれば、手順書や指図書の誤記を未然に発見できるであろう。記録の作成においても、リスクを認識することにより、記録すべき項目を意識でき、無駄な記録もなくなり、記録の修正も解消することになる。マネージャーはその作業をする意義を伝えたうえで、指図をすれば、ヒューマンエラーは起こらないはずである。

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