WFI製造プロせすへの思い【第27回】Epilogue

 PC端末の検索画面を開くと、様々な情報が得られる時代になりました。装置を起動すると、「黒い箱」からきれいな水(=WFI)が得られます。PC端末の中を覗かないように「黒い箱」を開き、WFIが生まれる過程を覗くことは滅多にありません。
 不用意に「黒い箱」を開くと蒸気が噴き出す恐れもあり、外から眺めているのが賢明と考え勝ちでしょう。
 ただ、PC端末が突然起動できなくなるとハタと困るように、「黒い箱」からきれいな水が得られなくなると現場は大騒ぎになります。このまま運転を続けるか否かの決断を迫られる事態に遭遇します。
 30年ほど前の現場状況を振り返ると、「黒い箱」から出た水をサンプルボトルに取り、検査室へ運び、検査結果を確認しWFIと認識され次工程へ送られました。この状況については「第14回WFIバッチ管理」を参照してください。
 この頃に筆者は、「黒い箱」からきれいな水がいきなり出てくる筈はないと思い、WFIが「どう生まるのか」と「その性能」を知りたいと考えました。ここが「プロせす」へ拘ることになった原点であり、このシリーズテーマとなりました。
 
1. 「WFI製造プロせす」を分けて考える
 飲料に適する水をスタートにWFIが生まれる過程を3つに分けて考えますと、
 ① 飲料水から精製水を造る工程
 ② 精製水からWFIを造る工程
 ③ WFIの水質を維持する工程
となります。
 この3つの工程を経てWFIが生まれます。黒い箱からいきなりWFIが生まれると考えることなく、各工程を1つ1つ「あれやこれや」考え納得した上で次のステップへ進んでもらいたい思いがあります。
 
2. 精製水を造る工程
 飲料水に含まれる不純物を減らして精製水を造ります。精製水製造に使われる単位機器はイオン交換塔・RO・EDIであって、純水装置に使われる機器と同様です。現在はROとEDIを組み合わせた機器構成が主流です。
 RO : 逆浸透膜
 EDI : 電気再生式脱イオン装置
 
3. WFIを造る工程
 精製水中に残留する発熱性物質(Pyrogen)を確実に除去できる性能が、WFIを製造する単位機器に求められます。この性能は分画分子量6000と表示するUFが、蒸留器よりも勝れていると筆者は考えます。
この考えの根拠は、「第24回 いよいよWFI製造法の選択ができるが」「第25回 WFI製造過程を明らかに」「第26回 非蒸留法が普及する可能性を検討する」を参照してください。

4. WFIの水質を維持する工程
 WFIは飲料水よりも1000倍汚染されやすく、WFI製造装置を流出した途端に汚染に曝されます。これは “distillation method” であれ “non-distillation method” であれ同様です。
WFIに接する配管など機材は、異物溶出を押さえるため最高の品質を維持しつつ、念のために、定期的な滅菌が必要です。
 
おわりに
 WFIについて、あれや・これや考えを綴って二年が過ぎました。ここらが筆を置く潮時と思います。

 黒い箱の中身に興味を持たれる方は、書籍「製薬用水の実践知識とQ and A(前編)」(シーエムプラス2018年5月発刊)に詳しく書きましたからご一読ください。

2018/06/30 布目 温

   

本連載では、筆者のWFI製造プロせすへの思いを綴りました。
また、皆様からの疑問・質問がありましたら、本ページ下部にあるコメント欄(匿名での投稿で問題ありません)、もしくは筆者Facebookにご連絡ください。筆者より回答いたします。

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