WFI製造プロせすへの思い【第24回】

2018/05/18 施設・設備・エンジニアリング

布目 温

 欧州薬局方の改訂(2017年4月から有効)があり、WFIを製造する手段を選択する余地が生まれました。海外と取引のある製薬会社は、3極(欧・米・日)薬局方に適合することを原則としていましたから、WFI製造手段は蒸留法に限定されていました。
 また、この改訂に際しnon-distillation method に対しては、distillation methodと同等もしくはそれ以上の性能を求めるという条件を付加しております。
 これは日常よくなされることで、新規参入メンバーに対して、少なくとも従来メンバーと同等を求めるという考え方です。同等と限定されていますから、ここでdistillation methodによるWFI製造の同等性能を押さえること、筆者が感じている欧米と日本との間に存在するdistillation method and non-distillation methodに対する認識の違いを整理しておきましょう。
 
1.WFI製造手段へ求められるのは
 WFIは注射剤の大部分を占めます。輸液など大容量注射剤は、大量のWFIが体内へ注射されることになります。WFIはPyrogenが検出されないことが求められ、米国でGMP制定は、大容量注射剤へPyrogenが混入する事故が発端だったと聞きます。
 現在Pyrogenは、エンドトキシン試験によって検査を行いますから、WFI製造の最終手段に対しては、エンドトキシンが含まれないことが究極的に求められます。
 
2.精製水中のエンドトキシン調査から
 WFI装置への供給水である精製水やPurified waterには、エンドトキシンが含まれています。30年前の調査ですが、国内各地の精製水タンクから採取したサンプル中のエンドトキシン量は、10.0 EU/mLを越える値は見つかりませんでした。
 WFI製造の最終装置である蒸留器は、確実にエンドトキシン分離が求められることから、この確実というところを、数値で示せないかを考えました。
 調査当時エンドトキシン試験の定量下限値は、0.003 EU/mLでしたから、先の調査結果を踏まえ、10 EU/mLから0.003 EU/mL未満まで低減できること、除去率として99.97%以上を、WFI製造最終手段へ求める数値目標と決めました。

3.試作機を使ったチャレンジテスト
 新しい蒸留器の開発を模索していたとき、十分の一規模での試作機をつくり、実装置ではできないチャレンジテストを実施することにしました。このとき使ったテスト機の写真を示します。



テスト機


 このテスト結果を要約すると、エンドトキシン濃度7.0~9.6EU/mlの負荷に対して、蒸留水中には0.004~0.006EU/mLを検出するという結果を得ました。


チャレンジテスト結果まとめ表

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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