WFI製造プロせすへの思い【第14回】

2017/07/24 施設・設備・エンジニアリング

布目 温

 WFIタンクは水位がHレベルに達すると供給が止まり、Mレベルに低下すると供給が始まります。蒸留器から供給されるWFIは、その都度継ぎ足されるのが、現在は一般的になっていますが、WFIは、一日単位でバッチ管理されていた時代がありました。
 医薬品品質を管理する手法として、1バッチ単位毎に品質検査を行って管理する方法と、連続した工程の流れの中で逸脱がないかを、連続的に管理する方法があります。今回はWFIを一日単位でバッチ管理していた頃の話をします。
 
1. WFIタンクが3基
 WFI施設を初めて見せてもらったとき、WFIタンクが3基並んでいたのを覚えています。「毎日順番に使う」と説明を受けました。3基あるタンクをA基、B基、C基とすると、A基は本日使用中、B基は明日に使用するため待機中、C基は明後日に使うため待機中と説明を受けました。
 待機中のWFIタンクは、WFIとしての試験結果待ちと説明を受けました。Pyrogen試験と微生物限度試験結果を確認した後に、B基とC基中で待機している蒸留水は、WFIとして認識され、使い始めることになるのです。
 この方式では、蒸留器はいったん稼働すると、WFIタンクが満杯になるまで停止せず、連続稼働します。ですから、Bタンク中に保持している蒸留水は、文字通り1バッチなのです。よって満杯のBタンクからサンプリングした試料は、この1バッチ蒸留水の水質を文字通り代表していることになります。
 WFIタンク3基によるバッチ管理のイメージを示します。



2. バッチ管理は汚染がない
 Bタンク内の蒸留水は汚染を受ける機会はなく、使用開始から24時間以内で使い切ります。残ったWFIは排出されますから、次のバッチに継ぎ足されることはありません。使い終わったBタンクは蒸気滅菌され、次の採水まで待機します。
 この3基のWFIタンクを順番に使い、それぞれのタンク内に保有するWFIを、1バッチとして、その水質が確認された後に使用する方法は、汚染が関与する機会はきわめて少なく、操作もシンプルな、原理的にもWFI安全性を説明し易い方式だったと思います。
 ここには、CSV(コンピュータシステム化バリデーション)が関与する機器は、ほぼ皆無であり、システム制御側からのトラブルや装置本体からの物理的な汚染リスクが極めて少ない信頼性の高い方式であったと思います。

2ページ中 1ページ目

執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

26件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年7月2日(水)10:30-16:30~7月3日(木)10:30-16:30

門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション

2025年8月21日(木)10:30-16:30

GMP教育訓練担当者(トレーナー)の育成

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます