ラボにおけるERESとCSV【第41回】

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■P社 2016/11/11 483
施設:OTC製剤工場


Observation 1

1) クロマトグラフィシステムにユーザー権限とパスワードが設定されていない。たとえば、イオンクロマトグラフィにユーザー権限とパスワードが設定されておらず、全ての権限を有するシステム管理者アカウントにパスワードが設定されているだけである。
2) クロマトグラムのレビューと承認はプリントアウトに対し行われており、電子記録を参照していない。
 

★解説:

1) 項について
データインテグリティの基本であるセキュリティ設定がなされていないとの指摘である。
2) 項について
クロマトグラムはダイナミックデータであるので、電子記録を維持し、電子記録によりデータレビューしなければならない。

 


■Q社 2016/11/11 483
施設:原薬工場、製剤工場


Observation 1
製品試験の前にカラム調整が行われており、Empower 3のサンプル名欄に試し注入と記載されていた。これらのサンプルは標準溶液とのことであった。

 

≫ QCラボのHPLCにおける電子クロマトグラフィを調査したところ
  ▫試し注入は報告されたサンプル分析の前に実施されており
  ▫これらの試し注入は報告されていなかった
≫ カラムを調整するための試し注入は
  ▫バッチ記録において報告されておらず
  ▫QCのレビューも受けていなかった
≫ これらに関する手順書がなく
  ▫カラム調整に標準液を使用していることを保証できていない
≫ 実際のサンプル溶液によりカラム調整を行っていなかったことを
  ▫記録により保証できない


★解説:
HPLCテストに先立ち、プレコンディショニング、テストインジェクション、試し打ちなどとよばれる試験前調整分析が行われることがある。この試験前調整分析は必要な作業であるが、試験前調整分析を隠れ蓑にして良いとこ取りのテストをしているのではないかと疑われる場合がある。今回の指摘では、以下の理由により実際のサンプル溶液によりカラム調整をしたのではないかと疑われている。

≫ 試し打ちがバッチ記録に入っていない
≫ 試し打ちがQCレビューを受けていない
≫ 試し打ちの手順書がない


試験前調整分析における問題を防止すべくMHRA(英国機薬品庁)およびFDAは業界に対し以下の指針を示している。
  ▫試験前調整分析の手順を規定すること​
  ▫試験前調整分析データはすべて保存し報告すること​
  ▫試験前調整分析に製品サンプルは使用しないこと​​

この指針に従っていれば、指摘を受けなかったはずである。HPLCプレコンディショニングにおける試し打ち(試験前調整分析)に対するMHRAとFDAの指針を連載第15回(2016年3月)と第22回(2016年10月)において解説したので参照されたい。

 

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