最新コスメ科学 解体新書【第18回】

2025/06/06 化粧品

前回にひきつづき「石けんの研究」について

細菌とコスメ④ ウイルスはどうやって失活させる?

 十年ほど界面活性剤で黄色ブドウ球菌をはじめとする細菌をやっつけるにはどうすればよいのか、考えてきましたが、ず~と気になっていたことがありました。それはウイルスです。細菌とウイルス、小さくて、病気や健康にも関係している、というところは似ていますが、生物学的には全くの別物なのです。細菌はたった1つの細胞でできている単細胞生物で、自らが分裂して遺伝的に同一な新しい細胞を作り出したり、代謝を行ったりしますが、ウイルスは非細胞性で自己増殖できず、宿主細胞を利用して増えていきます。大きさも数十~数百nmで、数十μmの細菌よりもはるかに小さく、これが生物なのかそうでないのか、については現在でもさかんに議論がされているのでした [1]。この、ほんの小さなウイルスがインフルエンザ・胃腸炎からエイズまで、さまざまな疾患の原因となっていることや、これらの病気から身体を守るためには、カチオン界面活性剤をはじめとする界面活性剤を利用してウイルスを除去・不活化することが有効であることは古くから知られていたのでした [2]。

 そして、2019年にSARSコロナウイルス2がヒトに感染することによって発症する気道感染症の一種である新型コロナウイルス感染症が発生し、世界中で感染が拡大しました。この時、一研究者として何かしなければと思い、これまで黄色ブドウ球菌を相手に行ってきた研究を展開しようかと考えたのですが、さすがにウイルスは手ごわく、私の研究室で持っている設備では対応できそうにないために、あきらめていたのでした。

 

 

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執筆者について

野々村 美宗

経歴

山形大学 学術研究院化学・バイオ工学分野 教授 博士(工学)
花王株式会社において化粧料および身体洗浄料の商品開発に従事した後、山形大学に赴任。2017年より現職。専門は物理化学、界面化学、化粧品学。これまでに生体表面における界面現象のダイナミクス、界面活性剤を用いたエマルション・可溶化物・泡製剤の開発、化粧料・食品の触覚/食感センシングについて研究してきた。著書に『教授にきいた・・・ コスメの科学』、『化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学』(ともにフレグランスジャーナル社) などがある。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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