最新コスメ科学 解体新書【第1回】

コスメサイエンスってなに?

 ある大手企業のエンジニアの方たちと、彼らが開発した材料やシステムを化粧品や美容の分野で使えないか、遠隔会議をしたことがありました。その材料、なかなか特徴的で面白かったこともあって、ちょっと高めのテンションで何十分か喋りまくったところ、代表の方が
 「化粧品に、そんなに科学とか技術が関係しているなんて知りませんでした・・・。」
と、すまなそうにおっしゃいました。どうやら、化粧品や美容ビジネスについて色々調べてはいたようなのですが、それまでに聞いた話は華やかなマーケッティングやパッケージに関することばかりで、その基礎に確固としたサイエンスがあるとは想像していなかったようなのです。

 「ああ、大丈夫です、それ、仕方がないですよ。」
別に、その方をフォローしようと思ったわけではなくて、本当にそう感じました。確かに、化粧品のパッケージには「〇〇成分配合」とか「うるおい」「保湿」「つややか」みたいな効果効能に関するキーワードが踊っているだけで、なぜそんなことができるのかはあまり書かれていませんし、いわゆる学術雑誌に化粧品に関する論文が出ることも少なかったりします。その方も、ネット検索や文献検索をされたようなのですが、がっつりとした科学的なものを見出すことができずに、「ああ、化粧品は、イメージの良い天然素材を組み合わせてつくったアイテムに、適当なキャッチフレーズとパッケージをつけ、ネットを使って魅力的な世界観を組み合わせればいいのかな」、なんて思っていらっしゃったようなのです。

 しかし! 世界中で使われている化粧品の多くは、れっきとした科学的な知見に基づいて開発されています。医学の分野では、1990年代にEvidence-based medicineという概念が提唱され、共通のガイドラインに基づいて、勘・経験・信念ではなく、科学的な根拠を重視した治療が行われるようになりました1)。一方で、化粧品は「人体に対する作用が緩和なもの」と定義されており、医薬品のような効果効能を持たない代わりに、きわめて安全であることが求められてきましたが、研究の飛躍的な発展によって、エビデンスに基づく効果効能を有する機能性化粧品が開発されるようになったのです2)。その結果、いわゆるEvidence-based cosmeticsという概念が多くの化粧品の研究者の間で共有されるようになり、保湿、サンスクリーン、抗老化などのスキンケアに関する機能や安全性については、学会などが策定した客観的評価や、医薬品に準じた臨床評価に基づいて有用性が判定され、全成分表示によって情報が開示されることが望ましいものとされるようになっています。

 

 

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