GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第5回】

1. 指差呼称
 駅で駅員の指差呼称の風景はよく見かける。財団法人鉄道相互技術研究所の調査によると、指差呼称を行うことにより、次のようにエラーが減ることが確認されている。
確認方法 誤りの確率
 
指差、呼称の どちらもしなかった場合   2.38%
指差確認のみをした場合          0.75%
呼称確認のみした場合           1.0%
指差呼称をした場合            0.38%
 
 厚生労働省でも、労働安全衛生や医療現場、社会福祉の現場で指差呼称を求めている。その設備の状態や作動の確認、計器の数値など、目視するだけでなく、声をだし、指差すことで、確認行為が、一層明確になることは事実であろう。しかし、医薬品製造の現場で指差の実施やポスター等の掲示物を見かけた印象があまりない。GMPは指差呼称を否定しているわけではないが、ダブルチェックから連想されることは、2人の作業者による確認と捉えているからだと思う。しかし、医薬品製造所が必ず複数名の作業者で製造や試験のすべての工程を実施することは不可能であろう。単独で行う作業の際に、いかに、確認するかを考えるべきである。自分自身を考えたとき、携帯や財布をどこにおいたか忘れてしまったり、出かける際の家の鍵をかけたか不安になったりすることがある。人間の記憶は、あいまいで、単なる行動としてはすぐに忘れてしまうものである。GMPとして考える時、計器で表示される工程管理値等は、すぐに記録をするので、指差呼称も不要と考えるかもしれない。しかし、いざ、多くの作業をする場面で、手順書を読みながら、すべてを記載し、作業をするのは、難しいのではないだろうか。GMPでは、手順書を読むこと、記録を作成することも重要であり、必要なものと位置付けられている。しかし、手順書や記録に注意がいき、かえってヒューマンエラーを招くことになっていないだろうか。多くの製造所で、製造記録に作業の開始時刻や終了時刻を記載している。その工程は、タイマーで時間をコントロールしているなら、そのタイマーが校正されていることを指差呼称で確認すれば、時間の担保が取れるはずである。開始時間の記載まで必要であるか。すべてを記録するのではなく、指差呼称を利用しながら、適正な製造管理や試験検査を行う環境が必要である。
 文書管理の上で、チェックとして、文書の作成者がチェックをしなければならないケースもある。しかし、私自身、原稿等を作成するとき、その直後にチェックをしてもなかなか見つけられないと感じる。頭の中で、文書を作成したままの思考となっていて、誤りや誤変換が見つけられないのである。人間は、自分自身の行動等をチェックする際、環境を変えるなど、見方を変えないと、そのままの思考となり、誤りを見つけられないのである。チェックを翌日にすることやパソコンの画面上ではなく、プリントアウトして、印刷物として確認することが必要である。記録そのものを指差呼称は、難しいかもしれないが、記入する際に指差呼称を行うことは可能かもしれない。エラー防止として、指差呼称の導入も検討すべきである。

参考文献:行先表示や種別表示を指差喚呼する列車の車掌(小田急電鉄)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Odakyu_Conductor.jpg

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