GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第4回】

1. 1から100までの数字の合計
 カール・フリードリヒ・ガウスの小学校での逸話1)で、1から100までの数字の合計を出す課題を即座に答えたことは、ご存知の方も多いだろう。
 
【問題】
  1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+……
       ……+91+92+93+94+95+96+97+98+99+100=
【答】5050

 ガウスが導いたのは、(1+100)×100÷2の計算式である。ここでこの数式を説明することは省略するが、答えを求める途中経過を現在のGMP記録は求めるのである。データインテグリティを確保するために、インプットデータをいかに処理してアウトプットが導き出されたか明確にし、記録することが必要である。
 もう1点、ガウスの逸話を例にしたのは、ヒューマンエラーを防止するためには、作業の効率化が必要であるからである。もし、1+2+3+……と順番に計算をすると99のステップの計算をすることとなる。間違いを生じる可能性が99ステップになってしまう。では、ガウスが行った計算では、3ステップの計算で済むわけで、計算間違いの可能性がその分低くなる。早く結果を導き出せるだけでなく、間違いも少なくなる点に注目してほしい。
 ヒューマンエラーは、単純な作業の繰り返しでも起こるが、複雑で長い時間が必要となるときにも生じる。複雑な作業では、作業者の理解が十分でなく、エラーが生じる。単純な作業でも、繰り返すことにより、ミスが起きる。その作業をいかに認識して、エラーを減らすかは、その現場の作業者が業務を理解し、いかに効率的に業務を進めることを常に考え、必要な改善を行うことが重要である。
 製造販売承認書における製造方法や試験方法について、詳細な記載を求められ、適合性調査では、その根拠たるデータの提示が必要となる。データインテグリティ確保のため、生データの管理も厳しく求められる。試験の生データは、昔(私がGMPを担当し始めた平成10年ごろ)は、担当者のノートに記載されていることが多く、そのノートもGMPの管理対象となっていないこともあった。最近は、薄層クロマトグラフィ(TLC)の結果として、写真等が求められるのは当たり前で、場合により、写真の改ざん防止対策も追及されることもある。写真の色やコントラストの編集も簡単できるソフトもあり、そのデータインテグリティが確保されていることを証明することも難しくなっている。昔の写真は色あせ等が起き、保存性の点で問題であったが、現在の写真データは、真正性の点で修正がないことを示す必要となる。以前、セロハン紙にTLCの結果を写し取ったものを生データとして管理している製造所もあったが、鉛筆で写し取ったものは、査察でNG判断とされるかもしれない。写真のように加工ができないし、そのスポットの濃さが試験者の技術で鮮やかに写し取られ、見やすく、コピー等を行い、修正できない対策をとれば、生データとしてもよいと思う。

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