ゼロベースからの化粧品の品質管理【第9回】

2021/05/21 化粧品

 前回は、製造工場で重点的に取り組むべき事項で、品質保証面や原価面でも大きな影響がある逸脱管理についてお話させて頂きました。逸脱管理とは、文章化されない事項も含めて、ほぼ同じ、一定となっている作業手順、管理基準、試験基準から外れた状態となった時に、製品品質への影響リスクについて考え、対応する手順であることをお伝えしました。
 例えば、原料をこぼしてしまい、該当原料を再秤量して工程を進めた場合には、こぼしたミスの事項に着目して再発防止等を考える事項ではなく、生産工程が途中で止まった、撹拌時間が定められて時間、或いは、過去ほぼ一定の撹拌時間で行われた事項に着目して、管理する手順になります。こぼしてしまった事項は、トラブル防止を中心とした議論では当然議論されるべきです。しかし、GMPの議論では、そのバッチを生かし製品として市場に出荷するならば、従来とは違う事項が製品品質に影響するリスクについて評価することが軸足になります。また、良く見られるケースとしては、逸脱管理を適合外品の扱いと混同されて、試験結果で品質水準に適合しない場合の管理手順と捉えられている方がおられます。しかし、これも間違いです。逸脱、トラブル、失敗、ミスの違いについては、もう少し議論した方が良いのかもしれません。しかし、多くの先生方が既にお話されていますのでこの辺りで止めさせて頂きます。そして今回は、逸脱管理と同様、製造所では頻繁に起こる変更事項に関連する管理手順である、変更管理について、留意すべき事項と手順書への落とし込みについてお話しします。

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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