FDA査察に合格した中国ヘパリン原薬製造企業が、EUの査察に不合格

2016/04/28 品質システム

余 知暁

"2008年、ヘパリン(血液抗凝固剤)を投与された、透析患者350人にアレルギー症状が出て80人が死亡した事件が起き大騒ぎになった。調査した結果、原因は米バクスター社のヘパリン製品の製造に使われた、中国から輸入した原料に不純物であるヘパリンの類似物質OSCS(過硫酸化コンドロイチン硫酸)が混入していることだと判明した。

今般、中国のヘパリン原薬メーカーである、山東省にある東営天東製薬有限公司はEUの査察でクリティカル不適事項が見つかり、EUへの輸出は禁止され、CEP(Certificate of Suitability)も保留された。

2016年2月25日、Eudra GMDP Webサイトにて、この工場に対するNon-Compliance Reportが公表された。Non-compliance Reportによると、2015年12月9日に、ANSM(フランス国立医薬品・医療製品安全管理機構)は東営天東製薬有限公司のエノキサパリンナトリウム、ヘパリンナトリウムの製造ラインに対して査察を実施した結果、計10項目の不備事項が見られ、内2件はCriticalで、3件はMajorであった。不備事項の詳細は下記の通りである。
 
Critical不備事項:
① 承認されたサプライヤーから受け取った、反芻動物のDNAの存在を証明するために実施された粗ヘパリンのPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)分析結果を偽造した。再試験を実施した検体が、最初の試験に使用したものと同じバッチから採集された証拠は無かった。
② 粗ヘパリンのトレーサビリティーを確保する品質システムが非常に弱いものであった。
 
Major不備事項:
① OOSと逸脱処理に関わる基本的なGMP原則を間違えていた。
② 新しい粗ヘパリンのサプライヤーに対する評価が足りなかった。
③ 確認試験として、1 H NMRスペクトル(ヘパリンナトリウム)と13 C NMR (エノキサパリンナトリウム)の評価が不十分であった。
 
Non-Compliance Reportの原文について、下記リンクを参考頂きたい。
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=33894"

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執筆者について

余 知暁

経歴 株式会社シーエムプラス中国リエゾンオフィス所長、GMP Platform コンサルタント。
2005年瀋陽薬科大学を卒業、同年日系大手エンジニアリング会社に入社。GMP部門のバリデーションエンジニアとして、日本において新設医薬製剤工場設立におけるバリデーション業務、DQ/IQ/OQ要領書の作成に従事。2010年上海東富龍科技股分有限公司入社。凍結乾燥機のエンジニアリング業務での通訳及び日中間における各種契約事項の調整に携わる。2013年株式会社シーエムプラスに入社。 PMDAによる中国製薬企業原薬工場GMP調査での通訳経験を複数回有し、中国語、日本語、英語と三ヶ国語を扱う。
2018年には中国CFDA(現NMPA)が主催する『日本のGMP査察システムに関する検討会』にメンバーとして参加。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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