医薬品品質保証こぼれ話【第34回】

後発医薬品の品質確保と業界再編

後発医薬品の品質や薬事対応に関する相次ぐ不祥事に対し、医師会から後発医薬品の品質や安全性に強い懸念が示されていることは周知のとおりですが、こういった状況の中、3月24日に開催された中医協総会において、厚生労働省の林経済課長は“医薬品業界の再編を真剣に考える時期に来ている”との見解を示しました。後発医薬品の使用率が80%に迫る状況下、その品質確保は極めて重要な課題であること、また、今回の小林化工・日医工の違法製造により、後発医薬品の有効性や安全性に対する、医療従事者や患者の中にある不安が払拭できないことをその理由としています。また、医師等、医療関係者から、すでに始まっている、患者の“後発医薬品離れ”が加速することなどへの懸念も示されています。

医薬品業界の再編に関しては、周知のとおり、20年以上も前から話題にあがり、2005年4月に山之内製薬㈱と藤沢薬品工業㈱が合併しアステラス製薬㈱が発足、同年9月に三共㈱と第一製薬㈱が経営統合して第一三共㈱が誕生したことは、当時、医薬品業界に大きなインパクトを与えました。また、これらの合併に先立ち、2002年に戦略的アライアンスを標榜し、中外製薬がロッシュグループの傘下に入るという形の経営統合も見られました。当時、日本の大手といわれる製薬企業は、欧米のメガファーマと比較すると企業規模が圧倒的に小さく、このことが日本の新薬開発力が欧米に劣る原因との考えから、行政の後押しもあり、業界再編が進みました。

その後、後発医薬品の使用推進の下、中堅の後発医薬品企業が関係する合併や買収が主流となる再編が進められ、今日に至っています。イスラエルのテバ社(Teva Pharmaceutical Industries Ltd.)が日本に進出し、大洋薬品工業㈱などの後発医薬品企業を子会社化し、最終的に、2016年10月に武田テバファーマ㈱として発足したことは、その代表事例であり、記憶にも新しいとこところです。これに類似する後発医薬品事業の立ち上げや強化に伴う合併や買収は枚挙に暇がありません。このほか、稀なケースとして、薬害(エイズ事件)に絡む再編として、㈱ミドリ十字の事例があげられます。㈱ミドリ十字は1998年に吉富製薬㈱に吸収合併され、その後、ウェルファイド㈱への商号変更を皮切りに、経営統合、企業名の変更などが繰り返され、2007年10月、現在の田辺三菱製薬㈱が発足しています。

このように、これまでの医薬品企業の再編は、新薬開発の促進や後発医薬品事業への進出などが主な目的でしたが、先般の小林化工・日医工の不祥事を契機に、今後、後発医薬品の品質確保や安定供給を目的とした再編が進むことが予測されます。このことは、今回、中医協総会において示された行政の見解を待たずとも、後発医薬品の使用が推進される状況下、ここ数年の後発医薬品製造にかかる品質問題による自主回収やデータ不正事案の発生状況、また、その改善が進まない現状を踏まえると自然の流れと言えるかも知れません。一方、80%近くまで使用率が向上した後発医薬品は先発医薬品企業にとっても魅力のあるビジネス領域であり、オーソライズドジェネリック※を武器に関係他社と連携するなど、積極的な参入が見られています。このような状況の下、今後、後発医薬品の品質と安定供給の確保を目的とした再編が推進されるとすれば、後発医薬品事業を保有する先発医薬品企業と後発医薬品大手が中心となり、これに、数多ある後発医薬品の受託製造所を巻き込む形で進められることになるでしょう。

※オーソライズドジェネリック:Authorized Generic(AG)。
有効成分と添加剤を含めた成分分量の構成と製造方法が先発医薬品と全く同一の後発医薬品。 

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