小林化工のクラスI自主回収について、品質保証の観点から考察【第2回】

2020/12/25 品質システム

"12月21日に福井県とPMDAの査察が入るとのことです。この問題を「ヒューマンエラー」で結論づけないでいただきたいです。
GMPの3要素
1)ミスの防止
2)汚染防止
3)仕組みを作って品質保証実践と改善
 ミスの背景には様々な要素があります。人のミスで片付けずに、その背景を追究してその根本原因を改善しないと良くなりません。
m-SHELLモデル
1)ハード
2)ソフト
3)人(本人/周りの人)
4)環境
5)マネイジメント
 今回のケースはこれまでの情報から、この5つすべてに問題があったように思います。
人の注意だけではミスを防ぐことはできません。かつ今回は、記録の偽造の可能性もあります。詳細が調査され、それが公開されれば、他の製造業にも「わが身を正す」ことに役立てられることを願います。
 
その後の情報で気になった点をまとめました。
・習慣性医薬品の管理の問題
 リルマザホン塩酸塩水和物は習慣性医薬品です。
https://www.pref.aichi.jp/iyaku/tebiki/k8.pdf (参照 2020-12-20)
(3) 向精神薬に指定されていない習慣性医薬品についても、向精神薬と同様の管理をしてください。
 習慣性医薬品が間違って使われること、または盗難を避けるために法的な規制がなくても施錠管理とアクセス制限が必須です。
どうなっていたのでしょうか?施錠管理&アクセス制限があれば防止できていたのではないでしょうか。

・不足した原料を継ぎ足す作業の工程のバリデーションの有無
 ロットの均質性を確認します。継ぎ足し後には均質にする工程はあったのでしょうか?またそのバリデーションは実施されていたのでしょうか?
今回は結果として、目的の原薬は継ぎ足しされていなかったことになります。それでも出荷試験は適合しています。かつ、継ぎ足ししていなかったため含量が低いとかの違いはなかったのでしょうか?またそれを検出するOOTはどうだったのでしょうか?多くの確認をしたい項目があります。

・品目の確認
 多くの製造所はドラムに貼布したバーコードで品名/ロットNo/使用期限が適切かを確認します。バーコード確認していない製造所も多く、そこでは品名については品名とそのコードNoを確認し記録します。品名だけでは類似のものと勘違いするリスクもあり、この2つの確認を行います。またロットNoと使用期限も記録します。製造指図記録の品名とコードNo,使用期限が適切だったかを記録のレビューで確認するのですが、その作業がSOPに規定されていたか、また記録があったかを確認をしたいところです。"

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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