再生医療等製品の品質保証についての雑感【第3回】

はじめに
 細胞を成育させる再生医療等製品の製造では、製品品質の構築において、細胞以外の原料としての培養培地や添加因子(基質や成長因子等)はとても重要な構成要素です。本稿では細胞以外の原料と製品品質保証の相関について概要と雑感を述べさせていただきます。


● 培養培地の品質に対する考え方
 培地(培養培地)は、原料となる細胞の未分化能などの特性の維持や、特定の分化細胞への誘導や成熟の工程と品質を決定する上で非常に重要な原料と位置づけられます。そしてその要求は概ね厳格なものとなります。では、購入する培地や添加因子等(細胞以外の原料)はどれくらい詳細に受け入れ時の品質やトレサビリティなどの管理を求めるべきなのでしょうか。
 培地中の成分やその品質管理の重要性は製品(細胞)より求められる有効性により異なり、同様に、製造の再現性がもたらすリスクへの対応もケースバイケースとなります。例えば間葉系幹細胞を製品とする場合を考えると、製品の有効性が間葉系の細胞として広範に保有する特性(免疫寛容など)であれば最終製品の間葉系幹細胞固有の表面抗原がQC確認されることである程度の有効性を想定できます。一方で、有効性が特定の培地で選択的に培養された細胞の品質特性に依存するならば、その特性が解明されていない限り培地の変更を行うことは有効性の想定が難しくなる可能性が生じます。特に、再生医療等製品は後者のように、機能発現や作用持続性等の期待される効果の評価手段が乏しいことが想定されるため、効力や性能を裏付ける手段として「条件及び期限付承認」のように、有効性が推定されかつ安全性が確認されれば特別に早期に承認できる枠組みが準備されています。そのため一度決めた培地やその添加因子を変更することは、現在の科学技術で最終製品の同定が困難な再生医療等製品の製造工程は、特に臨床開始後において、容易に実施できないと考えます。結果として、再生医療等製品の製品設計時においては、予め製品のライフサイクルを考慮した調達管理を想定して培地の成分や入手する培地メーカー、製造管理および品質管理の適格性などを選定しておくことが求められると考えます。
 細胞は極めて微少な環境の変化でも培養期間に応じて異なる変化が生じる可能性があると考えられています。そのため、培地等の品質確保においては、培地中に含まれる各成分の製造方法を含めて変更管理を念入りに行うことが好ましいと考えます。例えば、とある培地成分が同定可能な化学物質であったとしても、製造方法や精製方法などの手順が異なることにより副生成物など微量の不純物が異なる可能性が否定できません。細胞は微量の混入物質により安定性を変化させる可能性を否定できないため、同一の成分の培地でもメーカーが異なることで同じ細胞が得られていることが説明できないリスクがあります。これらが本当に同じ製品を製造できないリスクであるか否かが判断できない場合、品質保証としてはそのリスクな受容できないと考えるしかないのが現状です。同様のことは接着細胞に使用する培養容器でも考えられます。

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