エチレンオキサイド滅菌の実践知識【第6回】

2015/01/05 製剤

4.エチレンオキサイド滅菌における滅菌保証
 先に述べましたように、滅菌工程はその有効性を後工程で検証することはできません。 さらにEO滅菌では、滅菌の有効性に影響を与えるファクターとして、EO濃度、温度、湿度、時間、圧力などがあり、それらを確実にある一定の範囲にコントロールすることはハードウエア的にも、ソフトウエア的にも非常に難しいことです。 パラメータの中で滅菌工程の有効性に特に大きく影響するのは製品温度とガス濃度ですが、これらは直接コントロールすることができません。 このようなEO滅菌で、確実に製品の無菌性を確保し、証明しなければなりません。 滅菌工程バリデーションは、まさにそのための手段であり、製品の無菌性は信頼あるバリデーションによって保証されることになります。

 製品温度とガス濃度をコントロールするには、ガスの組成、圧力、時間、ジャケットの温度などで間接的にコントロールしなければなりません。 さらにエチレンオキサイド分子は滅菌中に製品や包材に吸着されますし、水蒸気との反応も生じます。 そのためどうしてもある程度のバラツキが生じます。 工程コントロールでそのバラツキを最小限に抑えること、バラツキの中での最大値、最小値の状態でも無菌性の保証ができ、しかも製品/包装の完全性は確保されることが要求されます。 従ってEO滅菌は工程確立やプロセスのコントロールが極めて難しい滅菌方法といえます。
 

 製品の無菌性(10-6)を確保するためには、もともと対象製品に付着していた菌(バイオバーデン)のレベルをスタートラインとして、そこから10-6に至る工程を設定すればいいのですが、エチレンオキサイド滅菌では避けることができないバラツキが存在するため、通常はバイオロジカルインジケータ(BI)、もしくはBIを模擬製品などで包装したProcess Challenge Device(PCD)と呼ばれる当該滅菌工程に対して高い抵抗性を有するテストピースを用いることで、より安全側へのマージンを十分に確保する形で条件を設定します。

 前章で述べたように、製品や包材へのダメージが問題ない場合には、BIに存在する100万個の指標菌が安定して死滅する条件を決定した上で、その2倍の時間を通常の滅菌時間として設定します。 この場合、実製品は、10-6よりさらに高いレベルの無菌性が得られることになります。(図 7 参照)


 

図7 EO滅菌の滅菌保証

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